
【詩】全然お手軽じゃない、恋は
フライドポテトの塩が、
きみの態度みたいに軽くて、
すこししょっぱくて、
舌の上でほどけていく夜。
レジの前で、世界は一瞬だけ
番号札みたいに単純になる、
「シアワセもここで受け取れますか」って
ほんとうは聞きたかった。
炭酸飲料の泡は、
言えなかった言葉の数だけ弾けて、
ストローの奥で、
わたしはいつも遅刻する。
ハンバーガーを包む紙を開くとき、
どうしてこんなに
未来みたいな音がするんだろう。
ぱりっと、少しだけ壊れる音。
きみは笑って、
ケチャップをつけすぎた指で
わたしの心臓に触れる、
それはぜんぜんロマンチックじゃないのに、
ただただ赤く、
ぜんぶがそこにある気がした。
テーブルの上、
冷めていくものばかりなのに、
恋だけが、なぜか
いまだに熱を残している。
持ち帰りにしますか、と聞かれて、
わたしは迷わず首を振る。
この瞬間はここで食べきらないと、
どこにも持ってはいけないから。
ポテトはやわらかくなっていく、
しなしなと、
きみとの距離みたいに、
すこしずつ、確実に。
それでも、
最後の一本を分けあうとき、
この世界はまた単純になって、
テーブルで向かい合うふたりには、
ただ、好き、だけが残る。
