【元看護師の怪奇考察カルテVol.1】水辺の怪奇
こんにちは、Mizukiです。
今日から新シリーズ【元看護師の怪奇考察カルテ】を始めさせていただきます。
このシリーズでは、私自身が体験した不思議な出来事や、昔から語られている怪奇、都市伝説などをひとつの「カルテ」として記録し、身体の反応や脳の仕組み、歴史、言い伝えなど、さまざまな角度から考察していきます。
説明できる怪奇もあるかもしれません。
でも……すべての怪奇が本当に説明できるのでしょうか……?
第1回目は、「水辺の怪奇」
これは、私自身が体験した出来事です。
それでは、最初のカルテを開いてみましょう。
🏥問診
医師:「次の方、どうぞ」
Mizuki:「よろしくお願いします」
医師:「今日はどうされました?」
Mizuki:「……15年くらい前のことなんですが。友人と、山奥の湖のほとりにあるホテルに泊まったんです」
医師:「旅行ですか?」
Mizuki:「はい。とても素敵なホテルでした。ただ……夜中に変なことがあって」
医師:「変なこと?」
Mizuki:「私たちの部屋、2階だったんです」
医師:「はい」
Mizuki:「その2階の窓を………誰かが、外から何度も叩いたんです」
医師:「…………木の枝では?」
Mizuki:「窓に届く枝はありませんでした。人が登れるようなバルコニーも、梯子もありません」
医師:「…………」
Mizuki:「それに後から、そのホテルについて調べてみたら……私と同じように、夜中に窓を叩かれたという人がいたんです」
医師:「……なるほど。では、もう少し詳しくお話を聞かせてください」
📋 怪奇考察カルテ Vol.1
「水辺の怪奇」
患者: Mizuki
場所: 山奥の湖畔に建つ西洋風ホテル・2階
時期: 15年ほど前の秋
時間帯: 深夜2時頃
現象: 窓を何度も叩くような音
分類: 水辺・聴覚系怪奇
備考: 実体験
【怪奇の記録】
今から15年ほど前のことです。
私は友人と湖のほとりに建つ、あるホテルに宿泊しました。そこは観光客が少なく、ひっそりとした場所。周りにはそのホテル1軒しかありません。
しかし、食事が美味しく、ゆったりと自然の中でくつろげるということで人気のホテルでした。
ホテルへ向かって車で走っていると、どんどん道は山の中へ……。舗装もされていないような道路に、友人と「え……この道であってるよね……」と不安が強くなってきたところで、やっとホテルが見えてきました。
湖はホテルの目の前。周りは木々で囲まれ、まさに大人の隠れ家という雰囲気です。
ホテルは西洋風の建物。古さはありましたが、湖とホテルのコントラストはまさに絵本に出てくるような、そんな素敵なホテルでした。
部屋は2階で、窓からは木のすきまから湖が見えます。夕食はフレンチ。美しい景色と美味しい料理に満たされ、友人と部屋に戻り「ここに決めてよかったねー!」と話していたのですが……。
他愛もない話で盛りあがり、気づけばすでに1時過ぎ。
「そろそろ寝ようか」
そう話し、電気を消してベッドに入りました。
しかしなかなか眠れません。旅行に来て気が立ってるのかな……そう思いながら、1時間くらいが経過したころです。
「ドンッ」
窓の外から音が聞こえました。
何の音だろう……?
気になりながらも、そのまま眠りにつこうと思ったのですが……
「ドン、ドン」
再び窓を叩く音がしました。風の音だろうか……?
友人を見ましたが、すでに寝息をたてています。
ちょっと窓を見てみようかな……。
そう思い立ち上がったところ……
「ドン、ドン、ドン、ドン……!」
風の音じゃない……誰かが窓を叩いてる!?
恐怖を感じベッドへ戻り、友人を起こしました。
「窓の外から誰か叩いてくる!!」
友人はすぐに目を覚まし、「え…ここ2階だよね。何、不審者…?フロントに連絡する?」
そう話し、電気をつけ、フロントへ連絡しようと思ったのですが……
その音はもう聞こえなくなりました……。
意を決して2人でカーテンを開け、窓の外を見たのですが、そこには誰もいませんでした。バルコニーもなかったので、登ってこられるような場所も、もちろん梯子のようなものもありません……。窓にぶつかるような木の枝などもありませんでした。
聞き間違いかもしれないし……そう思い、フロントへは連絡せず、そのまま翌日家へ帰りました……。
果たしてあの音は何だったのか……
後日、どうしてもあの音が気になって、ネットでそのホテルについて調べてみました。すると、都市伝説のような掲示板にその湖のことがこう書かれていました……。
「その湖は、自ら死を選び、身を投げることで有名な場所。人がいないので、誰にも見つからず決行できる。湖の底は泥だらけで木の根が絡まっているため、浮かんでこないこともある。そのほとりに建っているホテルに泊まると、夜、湖から出てきた人が助けを求め窓を叩くことがある……」
私の体験したことと同じでした。そしてその掲示板には「私もそのホテルで同じ体験しました!」という人のコメントも……。
私が聞いた「ドンドン」という音は、湖で亡くなった誰かの「助けて!」という訴えだったのでしょうか……。

🔍 アセスメント
窓から聞こえた音の理由。そして、なぜ水辺には「出る」と言われるのか?
①自然現象(窓に何かがぶつかった音だった)
可能性としてはこれが一番高いのかもしれません。ホテルの周りは木々に囲まれた湖のほとり。風で飛ばされた木の枝や夜間に飛ぶ鳥などが窓にぶつかり、「ドン」と聞こえた可能性です。梯子などを使わず2階まで登るのは難しい構造だったため、自然現象として捉えるのが一番自然かもしれません。
②水辺がもたらす体のアラート
水辺は夜になると気温が下がりやすく、慣れない場所や暗闇、不安などが重なることで、身体が緊張状態になっていた可能性もあります。人は警戒しているとき、普段なら気に留めない小さな音や影にも敏感になります。
③ 深夜2時という時間帯
深夜2時頃は、多くの人にとって本来なら睡眠中の時間帯です。眠気が強い状態や、寝入りばな・目覚めかけの状態では、音や周囲の状況を普段とは違って受け取ることがあります。
ただ、この時、私は寝てはいませんでした。立ち上がって窓の方へ行こうとしていたくらい意識もはっきりしていました。
そう考えると、これだけで説明するのは少し難しそうです。
④なぜ水辺には「出る」という話が多いのか?
昔から湖や川、海などの水辺には、さまざまな怪談や言い伝えが残されています。その背景には、水辺が昔から「命を支える場所」である一方、「命を奪う危険な場所」でもあったことが関係しているのかもしれません。
深い水、流れの速い川、足場の悪い岸辺。
「不用意に近づいてはいけない」という警告が、長い時間の中で怪談や伝承へ形を変えていった可能性も考えられます。
🩺 カルテ所見
医師:「さて……」
Mizuki:「結局、何だったと思います?」
医師:「自然現象として考えられる可能性はいくつかあります。風で飛ばされたもの。鳥などの動物。深夜という時間帯や、慣れない環境によって音に敏感になっていた可能性もある」
Mizuki:「やっぱり、そうですよね」
医師:「ただ……」
Mizuki:「?」
医師:「あなたは眠っていなかった。そして、窓に届く木も、バルコニーもなかった」
Mizuki:「はい」
医師:「さらに後から、その場所で同じような体験をしたという話を知った」
Mizuki:「…………」
医師:「ですから……(ペンを置く)今回のカルテは、“原因不明”としておきましょう」
Mizuki:「原因不明……」
医師:「無理に診断名をつける必要はありませんよ」
静かにカルテが閉じられる……。
――怪奇考察カルテ Vol.1「水辺の怪奇」
診察終了。
おわりに
第1回目の「水辺の怪奇」カルテ、いかがだったでしょうか。
水辺に怖い話が多いのは、危険な場所へ近づかせないために生まれた「警告」が、長い時間の中で怪談や都市伝説へ姿を変えたからなのかもしれません。
人間の身体や脳の仕組みから説明できることもあります。
ただ……あの日の窓を叩く「ドンドン」という音は力強く、自然の音とは思えませんでした。
それとも、ネットの掲示板に書かれていたように、湖から上がってきた誰かが、助けを求めて窓を叩いていたのか……。
その答えは今もわかりません。
「あれはただの教訓や都市伝説だ」と理由をつけて納得しようとしていること自体が、怖いものを信じたくないという無意識の防御反応なのかもしれませんね……。
📚 過去のカルテはこちら
この怪奇考察シリーズは、マガジンにまとめています。
これまで診察してきた怪奇も、ぜひ覗いてみてください……。
