
5分でわかるDreamforce 2026 |金融編:顧客がAIに相談する時代、銀行はどう関わる?
「金融についてAIに相談する米国人は、昨年の10人に1人から、現在は10人に5人へ。」
Dreamforce 2026のFinancial Services Keynoteでは、冒頭からこんな数字が紹介されました。講演では、1年で400%増加したと説明されています。さらに、Z世代の77%が金融上の意思決定にAIを使っているとも紹介されました。
これまで金融機関のAI活用というと、「銀行員やアドバイザーの生産性を上げる」「顧客対応コストを下げる」といった社内側のテーマが中心でした。
ところが今は、顧客自身がChatGPTやClaudeなどに相談し、金融機関と話す前に情報を集め始めています。
では、顧客がAIを最初の相談相手にする時代に、金融機関はどう関わるのでしょうか。
こんにちは、業務・経営の課題をITの力で解決するお手伝いをしています。酒井みゆうと申します。
Dreamforceは、顧客情報の管理や営業・サービス業務を支えるSalesforceのイベントです。このシリーズでは、各Keynoteの内容を、Salesforceに詳しくない方にも約5分で読めるように紹介します。
今回は「Financial Services Keynote: Your Pilot-to-Profit Playbook」から、金融機関がAIを実証実験で終わらせず、本番業務と事業価値につなげるために何が語られたのかを整理します。

1.顧客がClaudeで銀行を探す。金融機関はどう会話に入る?
最初のテーマは、「顧客がAIに金融相談をするとき、金融機関はどう安全にその会話へ参加するか」でした。
Salesforceは、金融ではAIの回答が「たぶん正しい」では不十分だと説明します。
KYC(本人確認)、口座開設、保険金請求などには業務ルールがあり、誰が何を実行したかを追える監査証跡も必要です。
そこで紹介されたのが、AIの柔軟な対話と、CRMに持たせた顧客情報・業務ルールを組み合わせる考え方です。
デモでは、架空の顧客JenniferがClaudeに「複数の口座を1つの銀行にまとめたい」と相談します。
Claudeが候補を探し、Cumulus Bankを提示。Jenniferが接続を許可すると、銀行側のAIエージェントが会話に参加します。
エージェントはJenniferのニーズを確認し、Salesforce側のプロセスに沿って提案を作成。最後は、適切な銀行担当者との面談予約まで進めました。
ポイントは、顧客がSalesforceの画面を開くのではなく、Claudeという普段使っているAIの中から銀行の業務につながっていたことです。
Salesforceはこれを「Headless」と説明し、CRMの機能を特定の画面に閉じ込めず、外部の接点から利用する方向性を示しました。

2.Rocket Proは、12のアイデアを2日で12個のPOCに
次に登壇したのは、住宅ローン大手Rocket MortgageのB2B融資部門、Rocket Proです。金融機関や独立系住宅ローンブローカー向けにサービスを提供しています。
同社では、営業担当者がデスクトップのSalesforce画面を開き、必要な情報を探しながら顧客対応することが課題でした。
そこでSalesforceと2日間のInnovation Daysを実施し、12のアイデアから12の動作するPOCを作成。その一つが、SlackからSalesforceを使う仕組みでした。
9月上旬のイベントでは、営業担当者がスマートフォンだけで、
名刺を撮影してSalesforceに見込み客を登録する
パートナーへの申込書を送る
といった処理をSlackから行ったと紹介されました。
一方で、同社はAIを入れる前に、約10年使ってきたSalesforce環境の技術的負債を整理しています。
「不安定な土台の上にAIを載せたくなかった」という説明は、派手なAIデモとは別の意味で印象的でした。
AIを追加する前に、既存システムやデータの土台を整える必要があるという、かなり現実的な話です。

3.複雑なオンボーディングを、AIが「分析→再設計→監視」
二つ目のデモでは、銀行の口座開設・オンボーディング業務が題材になりました。
Jenniferがメールに本人確認書類や住所証明を添付すると、AIエージェントが書類から情報を読み取り、調査、リスク確認、KYCなどの処理を進めていきます。
興味深かったのは、完成した業務だけでなく、「複雑な現行業務をどう作り直すか」までデモしていたことです。
ホワイトボードの業務フローや手順書のPDFを取り込み、AIに「どこがボトルネックか」と質問。
そこから改善案を作り、書類読み取り、ワークフロー、コンプライアンスチェックなどを組み込んだプロセスへ再構築します。
ただし、すべてをAIに任せるわけではありません。
リスクに関する例外処理や承認など、判断が必要な部分は人に残す設計でした。稼働後もKPIを監視し、悪化すれば再び分析・改善するという流れです。
講演では、顧客のオンボーディングや保険金請求で、複数日かかっていたプロセスを数分に短縮した例があると説明されました。

4.Bank of Americaは3.5万人に展開。AIを「仕事をする場所」に入れる
最後に具体的な大規模展開例として紹介されたのがBank of Americaです。
同行は約21万1,000人の従業員を抱え、SalesforceのCRMを8万5,000人が利用していると説明されました。
AI活用では、現場から出てきたある声を重視しています。
「新しい単独ツールを増やすのではなく、普段仕事をする場所にAIを組み込んでほしい」
その代表例が「Journey of a Meeting」です。
面談前には顧客情報を整理して準備を支援。面談後は内容を自動で要約してCRMへ登録し、フォローアップ事項も生成します。
この仕組みを、3万5,000人の銀行員・アドバイザーへ展開したと紹介されました。
Bank of Americaでは、AI施策を始める時点からROIを定義し、開発中・導入後も測定するとのことです。
Journey of a Meetingについては、担当者やアドバイザーの時間を「最大4時間」削減していると説明されました。

同行が強調していたのは、AIを個別の実験として増やすのではなく、全社で再利用できる能力として展開することでした。

まとめ
今回の金融Keynoteを通して繰り返し出てきたのは、「AIモデルを導入するだけでは、本番利用には進まない」という話でした。
顧客が使うAIと金融機関をつなぐには、CRMにある顧客情報や業務ルール、監査可能性が必要です。
社内でAIを動かすにも、複雑な業務プロセスの整理や、既存システムの土台づくりが欠かせません。
そして本番展開では、Bank of AmericaのようにROIを先に定義し、実際の仕事の中にAIを組み込むことが重視されていました。
個人的に印象に残ったのは、「AIに何を答えさせるか」より、「AIをどの業務につなぎ、どこは人に残すか」という議論が中心だったことです。
PoCから先へ進むときには、AIそのものだけでなく、業務・データ・ガバナンスの設計が大きな論点になるのだと感じました。

ご相談・情報交換について
生成AI・AIエージェントのPoCを実施したが、本番利用へ進めていない
CRMや社内データとAIをどうつなぐべきか整理したい
AI導入とあわせて、業務プロセスやデータ、ガバナンスも見直したい
といった課題があれば、ぜひ情報交換させてください。技術・業務の両面から、課題整理をご一緒できればと思います。
ご相談は、LinkedInのメッセージなどからお気軽にお声がけください。「まずは情報収集から」という段階でも歓迎です。

参考・出典
Salesforce+「Financial Services Keynote: Your Pilot-to-Profit Playbook」
Salesforce+でFinancial Services Keynoteを見る
Salesforce「Your Dreamforce ’26 Resource for Financial Services」
Financial Services Keynoteを含むDreamforce 2026の金融業界向け公式情報です。
Salesforce公式の金融業界向けDreamforce 2026情報
この記事の前提条件・留意点
本記事は、講演のトランスクリプトとメモをもとに要約・意訳しています。
「10人に1人から10人に5人」「Z世代の77%」などの数値は講演で紹介されたものです。
製品機能や今後の提供予定については講演時点の内容です。実際の提供状況、ライセンス、利用条件は最新のSalesforce公式情報をご確認ください。
本記事の意見・解釈は筆者個人のものであり、所属企業・関係企業の公式見解ではありません。
理解違いや事実関係の誤り、補足すべき点があれば、ぜひコメント等で教えてください。
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