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~の場合 ⑥、カレン。

    今まで寝ていた男が、ドアを叩きつけて出て行く。光を求めて出て行く。
    夜の明かりに群がる一匹の蛾だ。人ではない。
    朝日が昇る頃、今夜限りの蛾は、電柱の下で羽をもがれて、動けない。

    借金の取り立て屋が去った後の、なにも無い部屋。
    女が貯めた金を掴んで、男は抜け出した。

    カレンは、今夜こそトムを忘れようと思う。
    待つのをやめようと思う。
    エレノア・ゲイナーの唄をまた聴こう。
    何ていう歌だったっけ。
    男に棄てられた女が、だんだん立ち直って、男を拒絶していく物語。
    そんな筋書きだった。
    カレンは、最後の歌詞だけは今でも覚えている。
    And I'll survive, I will survive, I will survive !
    大声で唄ってみる。
    私は生き抜く 生き抜いてみせるわ!
    大声で叫んでみる。

    トム、どこに居るの。
    今夜もどこかで、寒さに凍えているの。
    歌だって、いっぱいあるの。
    人生の種類だって、いっぱいあるの。
    今夜も戻って来て、トム。
    今夜も待ってるわ、トム。

    Fin. 
    アースナルK 

    「#創作大賞2026」と「#オールカテゴリ部門」



     
     
    ただの、猫好きに飼われる猫になりたい人間。英国在住。2021年春、ロックダウン中の英国で、<徒然草々、ただの英国生活道中記>を書き始め、80巻の記事を含むマガジンあり。 <英国プレミア・リーグ、アースナルの1ファンが怒る>というのも書いています。その他3マガジンあり。

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