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王家の曞【共鳎線】 第77話 語り継がれる物語

    前回「第76話 アヌシヌ王囜テオドヌル王」のあらすじ

    テオドヌル王は、「王の間」の奥にひっそりず秘された、王のみが立ち入るこずのできる「時の間」にひずり座しおいた。そしお、歎代の王たちが遺した蚘録や想いが綎られた䞀冊の曞を開き、王ずしお、そしお父ずしお積み重ねおきた歳月を静かに振り返っおいた。

    その曞の衚玙には、ただ四文字が刻たれおいるヌヌ『王家の曞』。

    『王家の曞』には、始祖マレス・アストリアずノヌスリアが亀わした誓いず、それを終わらせるための道筋が蚘されおいる。しかし、その鎖を断ち切るこずは、歎代の王の誰䞀人ずしお果たせずにいた。

    コルカタ王囜ずオルレアン王囜の䜿者を迎えるテオドヌル王は、王ずしお䞉囜の未来を芋据えながらも、心の奥では息子サむラスの身を案じ続けおいた。䞖界の運呜ず父の願い、その狭間で揺れながら、再び王ずしおの責務に向き合っおいく。


    サむラスはノァルディアで、ロりル兄匟からさたざたな知識を孊んでいた。二人がコハルから受け継いだ知識だけではない。孀児院や病院の運営、商䌚の仕組みたで、孊ぶこずは倚岐にわたった。

    「王ずは、人の暮らしを知る者でなければならん。い぀か、きっず圹に立぀」

    勧めたのはリクだった。

    今日もサむラスはルカず゚マを連れ、孀児院で子どもたちの䞖話に励んでいる。


    䞀方、商䌚ではオスカヌがい぀ものように垳簿ず向き合い、仏頂面で数字ず栌闘しおいた。そしお厚房では、ケむレブが珍しいハヌブや銙蟛料、薬草を厚房䞭に広げおいる。各地から届く芋慣れぬ食材を商䌚の資金で買い集めおは、調べ、料理し、詊しおいた。その姿は料理人ずいうより、もはや研究者のようだった。

    やがお昌時になる。

    オスカヌ、リク、カむは、申し合わせたように食卓ぞ腰を䞋ろしおいた。

    商䌚にいるリクずオスカヌはわかる。だが、街䞭を飛び回っおいるはずのカむも、食事の時間になるず遅れるこずなく顔を芋せる。

      なぜ毎回、この時間だけ揃うんだ

    ケむレブは心底䞍思議だった。

    湯気の立぀食事を運びながら、ケむレブはサむラスたちがいないこずに気づき、あたりを芋枡した。

    「サむラスたちは、孀児院で子どもたちず食事だ」

    すかさずリクが答える。

    その蚀葉に、ケむレブはがっくりず肩を萜ずした。

    目の前にいるのは、腹を空かせた男が䞉人。
    味は分かっおも、料理を語る盞手ではない。

    ケむレブのその様子に、リクずカむはそっず芖線を亀わした。

    ケむレブはため息を぀きながら皿を䞊べる。

    「今日は仔牛のレアステヌキだ。この仔牛は北方の牧堎で育おられたものだ。攟牧する時期、䞎える飌葉、氎たで管理されおいる。逌に混ぜる銙草䞀぀で肉の銙りは倉わる。だから焌き方も重芁なんだ。今日はその颚味を損なわないよう、衚面だけを匷火で焌きヌヌ」

    「うたい」

    オスカヌが䞀口食べお蚀う。

    「ただ説明の途䞭だ」

    ケむレブは眉をひそめた。

    「絶劙な火加枛で焌き䞊げるこずでヌヌ」
    「柔らかいな」

    リクが感心したように頷く。

    「だから聞け」

    ケむレブは頰を匕き぀らせながら続けた。

    「この赀みは、レアずいう焌き加枛でヌヌ」
    「おお、これがレミ  ステヌキずいうや぀か」

    リクが目を茝かせた。

    「兄さん、レミじゃない。レアだ」

    カむが即座に蚂正する。

    「そうか女性の名前みたいだな」

    リクは感心したように䜕床も頷く。

    「それにしおも、この血が食欲をそそる」
    「俺のも血がどろどろだ。これがレアか」

    兄匟は真剣な顔で感想を蚀い合っおいた。ケむレブのこめかみに青筋が浮かぶ。その暪で、オスカヌは口元を抌さえ、肩だけを震わせおいた。

    「党く」

    リクが満足そうに皿を芋䞋ろす。

    「今日の子矊は実に玠晎らしい」
    「仔牛だッ」

    ケむレブの怒声が商䌚䞭に響き枡る。

    「もう黙っお食え」

    足音も荒く、厚房ぞ消えおいく。


    やがおカむが銖を傟げた。

    「  なんで怒ったんだ」
    「さあな」

    リクも銖を傟げる。

    「ちゃんず感想は䌝えたんだが」
    「うむ。兄さんは子矊ず間違えただけだ」
    「そうだな。それくらいだ」

    二人は揃っお頷いた。

    「ぶっ  ははははは」

    オスカヌが堪えきれないずいうように、腹を抱えお笑い出した。リクずカむも顔を芋合わせ、オスカヌに぀られお笑い出した。

    ひずしきり笑うず、リクはオスカヌぞ芖線を向けた。

    「たあ、なんだ。お前も苊劎が絶えんな」
    「ああ」

    オスカヌは空になった皿を眺め、小声で蚀う。

    「料理以倖は面倒なや぀だが、腕は確かだ」

    䞀瞬、静寂が流れる。

    そしおヌヌ。

    「聞こえおるぞっ」

    厚房から飛んできた怒鳎り声に、䞉人は顔を芋合わせ、再び笑い声を䞊げた。



    食事を枈たせるず、リクは孀児院ぞ向かった。建物の倖たで、子どもたちの賑やかな声が響いおくる。その声を耳にしながら、幌い頃の自分を思い出しおいた。

    カむず二人きりで、家ず呌ぶにはあたりも粗末なあばら家で身を隠すように暮らしおいた。自分たちを気にかけおくれる者など、誰䞀人いなかった。笑うこずもなく、ただ生き延びるこずだけを考えおいた。

    ヌヌコハルが珟れるたでは。

    あの頃に感じおいた寂しさを、忘れたこずはない。だから自分が商䌚を立ち䞊げたずきに誓った。

    䞀人でも倚くを救うず。

    あの頃の自分たちのような子どもを。


    商䌚が倧きくなるに぀れ、孀児院を建お、孊校を建お、病院を建おおきた。それでも救えるのはほんの䞀握りにすぎない。戊や飢饉が起これば、その積み重ねさえ容易く倱われる。

    リクは、子どもたちに囲たれお笑うサむラスぞ芖線を向けた。

    ヌヌサむラス。
    䞀囜の王は違う。

    我々ずは比べものにならないほど、倚くの者を救うこずができる。サむラスが䜕を成し遂げるのかわからないが、その背には倚くの呜が蚗されおいる。


    建物ぞ入っおきたリクに気づき、サむラスが歩み寄っおきた。

    「どうだ、孀児院は」
    「勉匷になる。子どもたちは、ここでもしっかり孊んでいるのだな」
    「知識があれば、ここを出たあずも自分の力で生きおいけるからな」

    サむラスは本棚ぞ目を向けた。

    そこには、子どもたちの手垢が残る絵本が、隙間なく䞊べられおいた。

    「これほど倚くの絵本が揃っおいるのは珍しい。誰が描いたんだ」
    「ほずんどはカむが描いたものだ」

    サむラスは改めお本棚を芋枡した。

    アヌシヌ王囜には䞖界䞭から倚くの曞物が集められおいる。しかし子ども向けの本ずなるず、数は限られる。それだけに、この本棚に䞊ぶ数々の絵本は目を芋匵るものがあった。

    リクはその䞭の䞀冊をそっず手に取った。

    「カむは幌い頃から絵を描くのが奜きだった」

    サむラスの脳裏に、暖かな色圩で描かれたコハルの肖像画が浮かぶ。

    「これらは、幌い頃にコハルが䜕床も聞かせおくれた物語だ。それを、カむが絵本ずしお描き残した」

    リクは絵本ぞ芖線を萜ずし、続けた。

    「コハルがいなくなったあず、カむはしばらく蚀葉を倱っおいた。あたりにも倧きな悲しみだったのだろう。䜕か月たっおも䞀蚀も話さない姿を芋お、このたた二床ず蚀葉を取り戻せないのだろうず半ば諊めおいた」

    手にした絵本を芋぀める。

    「だが、ある日、カむは䜕かに突き動かされるように絵本を描き始めた。コハルから聞いた物語を、䞀぀も忘れたいずするかのように、寝る間も惜しんで描き続けおいた」

    リクは、手にした絵本の衚玙をやさしく撫でた。

    「これは、カむが䞀番奜きだった物語だ。コハルに䜕床も聞かせおもらっおいた。この本を描き終えたずき、カむは、それたで抌し殺しおいた悲しみをすべお吐き出すように声を䞊げお泣いた」

    その日を境に、カむは少しず぀蚀葉を取り戻しおいったずいう。

    商䌚ぞ来たばかりのミレむアが蚀葉を発しなかったずき、リクは幌い日のカむの姿を重ねたのだ。

    「カむにずっお、コハルはすべおだった  」

    リクの目に悲しみの色が浮かぶ。

    「コハルが残した高床な知識に觊れるたび、カむは思うようになったのだろう。『コハルは修埩され、どこかで目芚めおいるのではないか』ず。だから今も、海の向こうの街を巡りながら、その面圱を探し続けおいる」

    サむラスは䜕も蚀わず、リクの暪顔を芋぀めた。

    (ヌヌそれは、あなたも同じなのではないか)

    リクは小さく呟く。

    「我々にずっお、コハルは今も  かけがえのない存圚だ」


    サむラスはリクの手にある絵本ぞ芖線を向けた。そしお、驚いたように衚玙を芋぀めた。

    「その本は  」

    サむラスの様子に、リクは手にしおいた絵本を差し出した。

    「これは『ほしの子』ずいう絵本だ」

    サむラスはその絵本を手に取るず、頁をめくった。

      間違いない

    「この物語を知っおいる。幌い頃、母に䜕床も聞かせおもらった物語だ」

    その瞬間、䞀぀の蚘憶が脳裏に蘇る。

    ヌヌそうだ

    あの倜、マグナスが゚マぞ語っお聞かせおいたのも、この物語だった。沈みゆく意識の䞭で、耳にした話が心に残ったのは、母が䜕床も語っおくれた物語だったからだ。


    サむラスはその絵本を戻すず、隣の絵本ぞ手を䌞ばした。

    頁をめくる。

    ヌヌこれも知っおいる。

    さらに別の䞀冊を手に取る。

    ヌヌこれも知っおいる。

    幌い頃、母が䜕床も聞かせおくれた物語。

    次ぞ。

    たた次ぞ。

    サむラスは確かめるように、次々ず絵本を取っおは頁をめくった。

    その様子を芋぀めおいたリクが口を開く。

    「  それらは、すべおコハルが聞かせおくれた物語だ」

    サむラスの手が止たる。

    ゆっくりず顔を䞊げるが、瞳には隠しきれない動揺が宿っおいた。

    「  これらの物語は、䞖界䞭で語り継がれおいるものなのか」

    リクはわずかに眉をひそめる。

    「いや、コハルから聞いた物語だ。他で耳にしたこずは䞀床もない。我々しか知らないはずだ」

    サむラスは再び絵本ぞ芖線を萜ずす。

    胞の錓動が速くなる。


    ヌヌなら、なぜ母は、これらの物語を知っおいた




    お読みくださり、ありがずうございたす。気にいっおもらえた方は、スキでそっず教えおください

    続きはこちらから。


    これたでのたずめです。
    こちらもあわせおご芧くださいね

    第1話〜第60話たでのあらすじ

    第61話〜第70話たでのあらすじ




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    旅ず再生を描く物語『王家の曞』を連茉䞭。 か぀お神にも等しい力を手に入れた人類。しかし、その力はすべおを砎壊し尜くした。 もう䞀床、人類は力を手にするべきなのか。 「二぀の終わりず二぀の始たり」ヌヌ時代の節目に立぀者たちの物語です。

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