
くしゃみの飛距離に、君の成長を感じた
生後2ヶ月半の息子のくしゃみの勢いが増している。
生後まもないタイミングから、息子(ニックネームはこびさん)は、やたらくしゃみをする赤ちゃんだった。「こんなにくしゃみってするの?」と不安になって思わず助産師さんに聞いてしまったことが懐かしい。
それでも、当時のくしゃみは小さな顔をほんの一瞬クシャッと歪めて、か弱い力で何かを押し出そうとするささやかな営みに過ぎなかった。
🫧
メルボルンに来てから5ヶ月半が過ぎた。
日本にいるときは、毎日あれやこれやと予定を詰め込み、いろんなところを訪れ、慌ただしく過ごしていた。しかし、妊娠8ヶ月でこちらに引っ越してきて以降は、真夏(南半球なので季節が逆)に大きなお腹を抱えて精力的に動き回るのが難しかったし、何よりも知り合いの数も少なかった(ほぼいなかった)こともあり、非常にスローな毎日を送っていた。
とはいえ、出産直前まで(なぜか)日本との仕事は続けていたため、淡々とタスクをこなす必要はあった。産まれたらしばらく仕事できない!って思うと、やり残し?がないように、なぜか日本にいた時よりも仕事の濃度が濃かったように思う。
けれど、仕事→家事→寝る→起きる・・・を繰り返すだけのわたしの日常はあまりにも変わり映えのない毎日だった。そのせいか、わたしの中での時間経過の認識は、とても曖昧なものだった。
その時に、自分に時間の経過を教えてくれたのは、日に日に大きくなっていくお腹と、
シャンプーなどを詰め替える行為だった。
シャワーを浴びるたびに、ぼーっとシャンプーボトルの残り容量を眺めていた。
容器になみなみとシャンプーやボディーソープを詰め替えるのは、1ヶ月に1回あるかないかくらいの頻度だったけれど、詰め替えるタイミングがやってくると、なぜか嬉しかった。「ああ、時間が過ぎているんだなあ」と思えた。
けれど、そんなことでしか時間の経過を感じられない自分の置かれた状況が、ほんのちょっぴり寂しかった。
日本にいたときは、詰め替えるのをついつい忘れてしまい、ポンプを押すたびにシューシューという乾いた音をよく聞いていたのに。つい詰め替えのことが頭から飛んでしまうほど、何かに打ち込んでいたはずだったのに。
そうしているうちに無事に出産し、わたしの人生も日々の風景も全てがガラリと変わった。
気づいたらボディーソープのボトルが空っぽになりつつあって、夫がそれとないタイミングで補充してくれるようになった。
🤧
こびさんが生まれてから、80日ちょっとが経った。
こびさんの身体はむちむちに大きくなり、最近ようやく左手を見つけたようだ。
わたしの日常は、出産前ほど慌ただしいものには戻っていない。こびさんとの生活は忙しいけれど、やはり日々同じようなことの繰り返しをしているような感覚がある。
けれど、わたしはもう空き容器の補充で時間の経過を感じなくても済むようになった。
だって、こびさんのくしゃみの飛距離が確実に前より伸びているから。
前は抱っこしていてもちょっと空気の流れを感じるくらいだったあなたのくしゃみは、今はしっかり飛沫までママの顔に飛んでくるようになったよ。
あっという間だけれど、毎日何か変化しているこびさん。
よく笑うようになったし、たくさん声を出せるようになった。
この一つひとつの変化と成長を見逃したくない、と素直に思う。
ありがとう、こびさん。
ママはむしろ、時の流れを愛おしく思えるようになったよ。
まだ取り扱いも不慣れな小さな拳を握りしめて、身体を全力で震わせて、こびさんは今日も必死にくしゃみをしている。