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SW×研究ノート 第9話「新たにわかった」を、文章にするということ


    ——第9章「研究論文を書いてみよう」を読んで
    このシリーズは、📖 「ソーシャルワーカーのための研究ガイドブック」(日本ソーシャルワーク学会 編・中央法規出版)を読みながら、学んだこと・気づいたこと・自分の研究への接続を記録する読書ノートです。

    はじめての方は #0「なぜ現場SWが研究を語るのか」 からどうぞ。

    「論文を書く」という言葉は、長い間どこか遠くにありました。

    ケアマネとして書いてきた記録や支援計画、実践報告——それらはすべて「文章を書く仕事」でした。でも「論文を書く」は、なぜか別のものに感じていました。

    第9章を読んで、その正体が少しわかった気がします。論文が実践記録と違うのは、「新たにわかった」ことを示さなければならないという点にあるのだと。


    この章で学んだこと


    ① 論文は「新たにわかった」を示すもの

    本章は明石芳彦(2018)の言葉から始まります。
    研究論文とは「学術的観点から見て未解決な課題を解明し、新たにわかった内容を示すこと」だと。

    実践報告と何が違うのか。
    実践報告は、起きたことを記録し共有します。
    でも論文は、その現象を学術的なフィルターを通して分析し、「それは理論的に何を意味しているのか」を問い、「今まで言われていなかったこと」を提示する必要があります。

    この区別は、頭では理解していたつもりでした。
    でも「起こった事象をただ示すだけではいけない」という言葉が、改めて刺さりました。
    事例を語ることと、事例から何かを明らかにすることは、同じではない。

    ② 「はじめに」には4つの仕事がある

    本章が示す序文(「はじめに」)の4要素が、非常に実践的でした。

    論文の冒頭には、
    ①問題の提起、
    ②解決をこの論文が提示するという主張、
    ③論議のサマリー、
    ④本文の構成案内
    ——この4つが入っていなければならない。

    たった1〜2ページの「はじめに」に、これだけの役割があるのだと知ると、なぜ書き始めで詰まるのかがわかります。
    問いが曖昧なまま書こうとするから、「はじめに」が書けないのです。
    「はじめに」を書くことは、問いを確定させる作業でもある。

    ③ 論文の「結論」で求められること

    本章が「結論飛躍型の論文」という言葉で指摘しているのが印象的でした。

    自説の主張だけを並べ、どこから導いているのかが見えない結論は、学術論文として不十分です。
    結論では、RQへの回答を実証データから丁寧に導き、「新たにわかったこと」を示したうえで、研究の限界と今後の課題も記す必要があります。

    さらに、「実践への示唆」——この研究が現場にどう貢献するかを述べることも求められる。
    これはソーシャルワーク研究ならではの問いだと感じました。
    研究は、支援の現場に返っていかなければ意味がない。

    私の研究テーマとの接続

    私は今、就労を継続してきた家族介護者へのナラティブ・インタビューを研究方法として選んでいます。

    第9章を読んで、「いずれ書くことになる論文の骨格」が少し見えてきました。

    序文では、就労介護者がなぜ支援につながりにくいのかという問題の提起をし、先行研究のレビューでその不備・空白を示す。
    本文では、インタビューデータを分析枠組みに基づいて読み解いた過程を記述する。そして結論では、「就労を継続してきた家族介護者が、どのように支援に接続していったのか」というRQへの回答を、新たな概念として提示する
    ——というイメージです。

    まだインタビューも始まっていない段階ですが、「論文の形」を意識することで、研究設計を見直す視点が生まれるということを、この章から学びました。どんなデータがあれば、どんな結論が書けるのか。
    逆算して設計することが、論文を書く準備でもある。

    また、査読についての記述も、リアリティをもって読めました。
    採択・修正・再査読・リジェクト
    ——その過程でコメントに誠実に向き合い、根拠をもって応答する。
    査読は評価される場ではなく、研究を磨く過程だという視点は、学会発表(第8章)の議論と重なります。


    実践者として気づいたこと

    ケアマネの仕事は、記録を書き続ける仕事でもありました。
    アセスメント、支援計画、モニタリング記録
    ——「書くことで、支援が形になる」という経験は、長年積み上げてきました。

    論文を書くことも、本質的には同じかもしれないと感じています。
    データを集め、分析し、考察する。
    そのプロセスを「書くこと」で初めて整理され、他者に伝わる形になる。
    書くことは、思考を完成させる行為だと、実践の中でも研究の中でも感じてきました。

    ただ、論文には「新たにわかった」という要件があります。
    実践記録は「あったこと」を書く。論文は「今まで知られていなかったことを示す」。その責任の重さが、「論文を書く」という行為を特別なものにしているのだと、この章を通じて実感しました。

    書き始めることへの怖さは、まだあります。
    でも本章のこの一文が、背中を押してくれました。「百里の道も一歩から。まず作法に則って研究論文を書いてみよう」。

    「研究論文とは『新たにわかった』ことを学術の言葉で示す営みである。書き始めることが、論文完成への唯一の道である」

    今日の一行まとめ

    次回予告

    #10 「両立支援研究へ——このシリーズを終えて」

    最終回は、この本を読み終えて見えてきたこと・変わったこと・これからやること。「就労を継続してきた家族介護者へのナラティブ・インタビュー研究」の現在地を整理します。

     参考文献
    ・
    日本ソーシャルワーク学会 編『ソーシャルワーカーのための研究ガイドブック』中央法規出版
    ・明石芳彦(2018)『社会科学系論文の書き方』ミネルヴァ書房
    ・川﨑ゆり子(2018)「編集後記」『社会福祉学』58(4), 146
    ・太郎丸博(2009-2010)「投稿論文の査読をめぐる不満とコンセンサスの不在」『ソシオロジ』54(3), 121-26

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    福祉現場での実践と、大学院での学びを往還しながら、「仕事と介護の両立支援」を研究しています。 ワークサポートケアマネジャー/主任介護支援専門員/社会福祉士 ご相談は、必要に応じて個別にご案内しています。