
トカゲ城主、異世界でも縁側でお茶をだす 第二十二話
トカゲの縁側が消えた後
🏰異世界の城の中にて
その日、王様の執務室は騒がしかった。
王様「何!?トカゲの縁側が、消えただと!?」
王様の剣幕に、報告に来た人物が、
一歩後ずさる。
城主たちが城門へ来た日から、
密かに監視をつけていたのだ。
王様「本当に、どこにもいないのか?」
大臣「……そのように、聞いております」
その返答に、王様は頭を抱えた。
まだ、なにもわかっていない。
約束を、果たしていないのだ。
王様「……わかった、下がれ」
一人になった部屋の中、
王様が窓辺に寄る。
そこから、城門を見ることができた。
🦎🎀「お茶飲む?」
🦜🎀「お団子もどうぞ」
縁側に座らせてくれた時の、
二人の声がふと蘇る。
自分とは全く異なる価値観を持つ二人。
しかし、不思議と話している時間は
心地よかった。
王様「……戻った、のか?」
王様のその言葉は、
静かに部屋に吸い込まれていった。
一度ギュッと目をつぶると、
王様は何かを振り切るように机に戻る。
王様「約束は、果たさなければな」
そう言って、冒険者たちの帰還方法の調査を
再び始めるのであった。
⛰️とある山にて
ふわりと風が吹いた。
それは、いつもとは少し違う香りがした。
山の主「……帰ったか」
山の主が、森のある方向を見て、
そうつぶやく。
近くにいた若木が、振り向いた。
若木「誰が帰ったんですか?」
その手には、お土産のお団子が握られている。
山の主は、その様子を楽しげに見ながら、
口を開いた。
山の主「縁側の者たちだ」
若木「え……?」
若木の動きがピタリと止まる。
彼もなにか思うことがあるのだろう。
そう思った山の主が、
ぽんぽんと背中を撫でる。
そして、空を見上げて言葉をこぼす。
山の主「核を見失わなかった者たち、か」
風がふわりと吹いて、
山の主の言葉をさらっていった。
その横で、若木がポツリと言った。
若木「……お団子」
山の主が振り返ると、
若木は手に持ったお団子をちびちびと
食べていた。
若木「もう、食べられないんですね」
山の主「さあ、どうだろうな」
山の主と若木は、
静かな風のなかにしばらく佇んでいた。
🌲とある森にて
カサリと足音がした。
🦎🎀「森の主さん!」
🦜🎀「お団子あるよ」
泉のほとりに来た森の主の耳に、
そんな声が聞こえた気がした。
実際は、誰もいない。
ただ、泉の水が鏡のように静かに
木々を映しているだけだ。
森の主「……帰ったか、小さき者たちよ」
さわさわと、森の木々が葉を揺らす。
森の主「……静かだな」
大木「寂しくなっちゃったわねぇ〜」
いつの間にか、大木がそばに来て言った。
森の主はその言葉には答えず、
ただ尻尾を一振りする。
トカゲの縁側が消えた日から、
幾度もこの泉のほとりにやってきた。
しかし、再び、あの賑やかな二人に
出会うことはできなかった。
森の主「達者でな」
森の主はそう言って、泉に背を向ける。
そして、尻尾を一振りして、
森の奥へと歩きだした。
その背中を追いかけるように、
ふわりと優しい風が吹く。
🦎🎀「またね」
その風に乗って、
城主の声が聞こえた気がした。
立ち止まった森の主が泉を振り返り、
微笑むように目を細める。
森の主「ああ、……またな」
森の奥へと歩く森の主の背中は、
先ほどよりも、どこか楽しげだった。
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