
やさしい簿記 第1回:黒字なのに、なぜお金がないのか経営者が最初に知っておきたい「利益とキャッシュの違い」
「利益は出ているはずなのに、口座を見るとお金が足りない」
経営をしていると、こんな状況に出くわすことがあります。実は私自身も、何度もこの経験をしてきました。最初は「計算が合っていないのでは?」「どこかでお金が消えた?」と焦ったものです。
でも、これは決して珍しいことではありません。そして、簿記の基本を知ると「なぜそうなるのか」がすっきり理解できます。
今日はその「利益とお金のズレ」について、できるだけわかりやすくお伝えします。
そもそも「利益」と「お金」は別物です
会計の世界では、「利益が出た」と「お金が手元にある」は、まったく別の話です。
たとえば、100万円の仕事を受注して、請求書を送ったとします。この時点で帳簿上は「売上100万円」が立ちます。でも実際に口座にお金が入るのは、翌月末の振込日かもしれません。
帳簿では黒字でも、口座はほぼゼロ——これが「黒字なのにお金がない」状態の正体です。
【具体例:100万円の仕事を受注した場合】
帳簿上の利益 → +100万円(請求書を出した時点で計上)
実際の口座残高への影響 → ¥0(入金は翌月末)
「黒字なのにお金がない」が起きる3つの理由
主な原因は3つあります。どれか思い当たるものはありませんか?
① 売掛金の回収タイムラグ 請求書を出しても、実際に入金されるまでに時間がかかります。売上は立っているのに、お金は手元にない状態が続きます。取引先が多いほど、このズレは大きくなりがちです。
② 在庫や設備への投資 機械や在庫を購入するとお金は一気に出ていきますが、帳簿上の費用は少しずつしか計上されません(減価償却)。利益は残るのに、手元のお金はどんどん減っていきます。
③ 借入金の返済 ローンの返済は「費用」ではなく「お金の支出」として扱われます。利益の計算には含まれないため、稼いでいるつもりでも口座残高が減り続けるように見えます。
経営者が持つべき「2つの視点」
利益とキャッシュ(現金)の動きを、別々に把握することが大切です。
「今月は黒字だった」だけでなく、「では実際に手元にいくら残っているか?」を同時に確認する習慣を持ちましょう。この2つを意識するだけで、資金繰りの不安はぐっと減ります。
【この記事のまとめ】
「利益」と「お金(キャッシュ)」は別物
黒字でもお金がない状態は、経営者なら誰でも経験しうる
原因は「売掛金」「設備投資」「借入返済」の3つが主な要因
利益とキャッシュの両方を見る習慣が、経営を安定させる
【次回予告 — やさしい簿記 #002】
キャッシュフローを「見える化」する 経営者のためのお金の把握術
「利益とキャッシュは別物」とわかったところで、次の疑問は「では、どうやってキャッシュを把握すればいいのか?」ではないでしょうか。次回は、難しいツールを使わずに、今日からできるキャッシュフローの管理方法を実践的に解説します。次回もお楽しみに