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終章とあとがき — 連載小説『査定』読後記事

    最後に残るのは、数字だけだった。

    二百五十万円、十八万七千円、七十万円、十日、八百四十二、十二名、一名。

    数字の横に、兄は名前を書いた。


    終章 査定

    | | |
    |---|---|
    | 仮差押が維持された期間 | 約3か月半 |
    | 仮差押の被保全債権 | 250万円 |
    | 実際に凍結された口座残高 | 18.7万円 |
    | 解決金として提示された金額 | 70万円 |
    | 和解拒絶から取下げまでの日数 | 10日 |
    | 柊書房の年間純利益 | 560万円 |
    | 奏人が支払った加盟会費総額 | 278.4万円 |
    | その間の遅延損害金 | 1,480円 |
    | 店舗継続率(GC発表) | 89.7% |
    | 累計閉店率(実態) | 52.6% |
    | 消えた店舗の数 | 842 |
    | 水上隆久の警察官在籍期間 | 3年 |
    | テンプレートメールのCC人数 | 12名 |
    | うち取締役 | 1名 |
    | 「当社」から「当時の代表者」へ主語が変わった文書 | 1通 |
    | 公正取引委員会への申告件数 | 7件 |
    | 資料確認の会に集まった人数 | 27名 |
    | 傍聴席にいた元内部者 | 1名 |
    | 水上の父の質屋が営業した年数 | 38年 |
    | 柊書房の在庫 | 3,847冊 |

     これらの数字は、すべてフィクションである。

     だが、数字が人を消すことは、フィクションではない。


    あとがき

     この原稿は段ボール箱に入っていた。

     揃えて、入れてあった。付箋もメモもなく。二百三十七枚のA4用紙が、ただ揃えて、入れてあった。

     箱を開けたのは、兄だった。

     兄は最初の一枚から読まなかった。最後の表を先に見た。二百五十万円、十八万七千円、七十万円、十日、八百四十二、十二名、一名。数字が縦に並んでいる。

     兄は鉛筆を取った。

     数字の横に、名前を書いた。

     宮田。
     田代。
     黒崎。
     奥村。
     奏人。

     それから、しばらく手を止めた。

     箱の中には、まだ誰の名前も書かれていない余白があった。兄はその余白を見ていた。

     やがて鉛筆を置き、原稿を一枚目に戻した。

     読み始める前に、兄は店の奥を見た。三千八百四十七冊の本が、棚の中で静かに並んでいた。

     査定額は、まだ決まっていなかった。



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    フィクションを書きます。『査定』全16夜

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