
医療はサービス業だけど、完全なサービス業ではない
今日はLINEニュースでこの記事を読んでの感想を。
ちょっとマジメになるので、パチンコや競馬は出てこないので悪しからず。
これまであんまりこういうことをしてこなかったので、キャラじゃないかもしれないけれど、ちょうど昨日一昨日と救急外来勤務だったし、本日の自分には刺さった。
まず、記事のざっくりした内容としては、
・夜間救急外来なのに、旅行前だから1週間分薬を出して、みたいないわゆるコンビニ受診は相変わらずある。
・現在は都心を中心に365日24時間みたいな、いわゆる「コンビニ病院」みたいなものが増えている。
・ただし、そういう所は医師を揃えるのも大変なので、変な医師も紛れている。患者に横柄だったり、飲酒をして診察を行った医師もいると。
・また、あくまで一期一会のことが多いので、診療が場当たり的な対応にしかならないことが多い。
・便秘といって精巣捻転が見逃されてしまったことがあった。
・患者側は、どう病院を探せば良いのか。Googleマップや病院ランキングを鵜呑みにしない方がいい。☆1か☆5で極端であるし、医療の質よりは受付の対応、待ち時間など診療内容とは関係なくその人の主観の事が多い。
非常にざっくり要約するとこんな感じだろうか。
書いているのは医師ということなので、概ね納得なのだが、ちょっと違うなと思う所もある。正解がある内容ではないので、これを読んだ感想文だ。
まず、コンビニ受診について。
これは、増えているのではなく減らない。ずっと多い。救急外来の「救急」の部分が何も守られていない。もちろん、本当に受診が必要な状態はあるし、心配でたまらなくて来てしまったというのはわかる。心配なことは、次回からはこれは救急外来じゃなくてもいいと教えてあげればいい。
そうじゃなくて、明日仕事で病院に行けないからという受診が本当に多い。体感8割はそうだろう。別に心配が強いわけじゃなく、今なら病院に行ける、明日なら行けないから夜中とか休日に来た。
だいたいそういうことを言うと、何が大丈夫で何がわからないか心配だからっていう理論が出てくる。
しかし、そんなことがないことも多い。先ほど言ったように、それならば1回ちゃんと危ないサインなどを伝えればわかるはずだ。子どものことだから心配です、が免罪符として使われているとしか思えないことが多いと感じている。
まず、医療はサービス業ではあると思うが、完全なるサービス業ではないとも思っている。患者の都合だけで何かをしていいものではないはずだ。来院したら診察をし、医学的に適切な対応を行う。これが基本だろう。ある程度の希望は聞けるが、行き過ぎな要求をされることも多い。小児科の検査についてはこれで1本書けるくらいなので割愛するが、医療費は税金だ。過剰に行うのではなく、適切な対応が望まれている。自費ならいい。何でもする。
別に医師が偉いと言いたいわけではない。上からな物言いだったり、バカにするように言ったり、そういう態度はいけない。あくまで丁寧な態度で必要な医療を提供する。これが在るべき姿ではないだろうか。
そしてコンビニ病院について。
私もそのような所で働いたことがある。記事にもあるが、時給がいいのだ。医師のスキマバイト的な感じで、暇ならば働く事ができる。
そういう所に、救急外来で来るような明日は来れないからはとてもマッチしている。
こちらとしても、救急外来として働いているわけではなく、営業時間内に来ているだけなので、何も思わない。ビジネスの目の付け所としてはとても良いと思う。実際にものすごい数を増やしているクリニックもあるしね。
ただし、そこに継続性を求めるのは厳しいだろう。私もこの子はしっかりと通院して喘息の治療をしたり、アトピーの治療をした方がいいなという子もたくさん診たが、1か月分薬を出してまた来てね以上のことができないのだ。
どんなにちゃんと話をして、通院の必要性を伝えたとしても、もうその人には会えない可能性が高い。ちゃんと来てるかどうかもわからない。
そうなると、時間かけてちゃんと伝えなきゃという気が薄くなる。
また、そういう所でそういう治療をしない方がいいとも思う。良くなっているのか悪くなっているのか、カルテを見ればわかるでしょって言われることもあるけれど、カルテだけじゃわからないことも多い。
いつから始めているかとか、いつまでの予定でやっているかとか、そんなカルテを書く時間はないし、書かなくても誰からも責められないのでやらない。
こうなってくると適切な治療を行うこと自体が難しい。
だから、花粉症に対する舌下免疫療法とか、最たる例だと思うしそういう所でやるべきじゃないと思うんだけど、積極的にやるんだよなぁ…お金になるから。
そう、お金になるからという所だが、私の行ったところは医学的妥当性よりは言われた検査は全部やるようにという方針だった。
その方が、いい病院だとされて、リピーターができる。体がどうこう、税金がどうこうはもう知ったこっちゃない。ビジネスモデルなのだ。自分の所が良ければいい。
あまり賛同できない考え方である。
だからこそ、便利さだけで医療機関を選ぶことには少し慎重になった方がいいと思う。
便利さも大切なのだが、ここで「かかりつけ医」についてももう一度考えてみてほしい。
「かかりつけ医」も制度化され、お金化されてきているので、登録すればいいというものではないのだが、それでも、ちゃんと寄り添って診察しているかどうか。不必要な治療を延々と続けていないか。困った時に、前回までの流れも含めて考えてくれるか。そういう視点は大事だと思う。
便利で、いつでも診てくれて、しかも継続的にしっかり診てくれる。
それが理想なのはわかっている。だが、現実的に今の日本ではそれは厳しい。便利さをとるのか、継続性をとるのか。もちろん両方あるに越したことはないが、どちらを重視するのかは考えてみてほしい。
ちなみに、本当に便利で、かつしっかりと診てくれる医療もできなくはない。
何か?
専属医を雇うことだ。
結局、お金があれば何でもできる。
もちろんそれは冗談だけど。
医師の質が…という所なのだが、まぁ私のようなヤバいやつがいることもあるというのは置いといて、乱暴だったり上からだったり横柄な態度を取ったりする医師は、どこの病院からも嫌われて辞めていくだろう。そういった365日クリニックはとりあえず休診にしないように、だいたい誰でも働ける。そういった意味では、ちょっと態度が悪い人に当たる可能性は上がるのかもしれない。飲酒はちょっともってのほかだが…まぁ、飲酒運転みたいに飲酒したら診察をしてはいけないという明文化された法律はない。医師法で医師の品位保持っていうのはあるからそこには入るかもしれないけれど。だからまぁ、そういう所でヤバい医師が多いということが問題なのではなく、毎回違う医師が担当する、ということが不利益になり得るという感じかな。
精巣捻転が見落とされたという話についてだが、そもそも精巣捻転は見つけるのが難しい病気だ。エコーができないと診断できない。まぁ、3回も浣腸して治らないんだからもう少しなんかやることあったんじゃないか…とは思うが、自分でも見逃しをする可能性は十分ある。これに関しては、こういう病院だから見逃したんだろうはちょっと違うと思う。大きい病院でも見逃す可能性はあるだろうし、ちょっと今回の記事の内容とはズレている気がする。訴えられるまでになったのはちょっと違和感があるから、なんかよっぽど態度が悪かったとかだったのかなぁ…
ただ、今回の記事でその確認がされていたのかどうか、私は詳しい診療録を見たわけではないのでわからない。そこを外から断定するつもりはない。
そのうえで、一般論として、男の子の腹痛では精巣捻転は頭の片隅に置いておいてほしい。小さい子は痛い場所をうまく言えないし、恥ずかしさもあって、最初から「タマが痛い」とは言わないことがある。下腹部が痛い、吐いた、歩き方がおかしい、股を気にしている、陰嚢が腫れている、左右差がある。こういう時は、便秘や胃腸炎だけでなく、精巣捻転も鑑別に入る。
もちろん、家庭で診断しろという話ではない。診断は医者の仕事だ。ただ、診察室で「お腹が痛いです」だけで終わるより、「股のあたりも気にしています」「歩き方が変です」「陰嚢が腫れている気がします」と言ってもらえると、こちらの頭の中で考える病気が一気に変わることがある。
医療は医者だけで完結するものではない。最初に持ってきてもらう情報で、診察の方向性がかなり変わることがある。だから、男の子の腹痛では、少しだけそういう場所の痛みも気にしてみてほしい。
レビューに関してはまさに記事の通り。
☆5か1で極端だし、結局院内がきれいとか、待ち時間が長いとかが多く、診療の内容とはあまり関係がないことが多い。後は検査してくれなかったってやつとかね。
まぁ食べログでも何でも個人の感想だからいいんだけど、基本的には病院は反論もできない。何か事実と異なるとんでもないことを書かれていたりしても、個人情報保護の観点から診療の内容はもちろん書けない。殴られっぱなししかないのだ。もちろん、医師が、看護師が、受付の誰がみたいな個人攻撃をしてくる場合、それは誹謗中傷にあたるので削除依頼はした方がいいと思う。なので、気になっている病院があったら、とりあえず行ってみて決めればいいと思う。レビューは当てにならないというのは賛成だ。
一通り記事については触れたので、感想を。
ニーズとサービスが合ってないというのは認める。今日私は子どもの発熱で休んだ。家での診断はただの風邪だけど今後病児に行きたいから受診をするために。夜病院に行ければそんなことにはならない。
ただ、医療を提供する側からすると、医師も人間であり夜の間ずっと診療は厳しい。看護師さんは夜勤もあるじゃないかと言われるかもしれないが、数が4倍くらい違う。そもそも日中の診療ですら今の人数で足りないくらい忙しい。だから、夜にサービスを提供するということ自体は悪くない考え方だと思う。ただし、昼の診療と同じクオリティを求められても無理だと思う。
オンライン診療も、そもそもの成り立ちはコロナ禍で、ずっと飲んでいるような薬を病院に行かなくても処方できるようにっていうものだったはずなのに、だいぶ捻じ曲げられて行われている。小児の急性期はオンラインじゃ分からないことの方が多い。精神科とかもそれで診断書記載したりとか、とんでもないことが横行していると聞く。
お金は欲しい。でも、医療がお金儲けに走るとどうなるのかということがどんどん形になってきている。それを止める法律もない。法の範囲内でやっているのだから。
そして、医師免許を取っても自由診療の方が儲かるからと、美容医療等にいく医師も増えている。これを止められる理由がどこにあるだろうか。小児科で必死に1日で100人外来診察したとする。終わる頃にはこっちがヘロヘロだ。美容医療は完全予約で、時間もきっちり。それで何倍も収入に差がつく。私が明日から美容医療がやりたいと言って、私が納得がいく止める理由を誰か言えるだろうか。
都会と田舎の医師の数の差、それでも求められる医療の質はどこにいてもどんどん高いものを求められる。
医療は一度完全に壊れないと、もう立ち直ることはできないんだろう。その代償を、救急外来に不必要に受診してた人達だけが負うならばともかく、日本人全員が負うことになる。
私のジレンマは、小児科という所だ。
ヤバいこと言うのは全部親だ。
大人ならば、あなたはお断りです、でもういいと思う。自己責任だ。
でも、小児科でそれをやると割を食うのは何の罪もない子どもなのだ。だからこそ、どんなに親がヤバくても、診察を止めることはできない。まぁ出禁もないことはないけどね。
便利さを求めるならば、医療の質が下がることは容認する、地域によって受けられる医療が異なってしまうことも受け入れられないと言われても、働く人がいない。
じゃあ私はどうするのか。こんな偉そうに書いておいて、お前は何をするのか。
何もしない。体制がどうあれ、地域がどうあれ、医療崩壊がどうあれ、今目の前で私にできることをするだけだ。壊れるならば壊れればいい。そこに私が何かをしたから変わるなんてことは決してない。自分の食い扶持を稼ぐだけだ。ただ、内情を知っている分、自分が十分な医療を受けられずとも、それは諦めて死んでいく覚悟くらいはしておこう。
結局みんなこうなんだと思う。だからこそ変わらない。何かしたら変わる事があるならばするが、個人で何をしてもなんの動きも起こらない。
私は私で、救急外来はこれまで通り勤めるし、明日でいいじゃんと思ったら明日でいいじゃんと言う。親から見たら冷たいだろう。その代わりに、昼に、継続的に来てくれる人には後悔はさせない。一貫して、しっかりとした治療を続けていく。
せめて、私がもう医師として働くのを終えたくらいで、医師は全部国が管理して配属するみたいな感じになりますように…