
【税法3科目同時合格】仕事・育児と両立しながら5年で官報合格した勉強法のすべて
序章:私は「受験資格すらなかった」ところから始まった
1. ゼロ以下のスタート地点と「受験資格」の壁
税理士試験に挑戦しようと思い立ったとき、私にはそもそも受験資格すら存在しなかった。
大学時代、法学や経済学といった関連学科の単位はゼロ。当時の制度において、大学で対象科目の単位を取得していない人間が税理士試験の受験資格を得るには、「日商簿記検定1級」または「全経簿記能力検定上級」を取得するしか選択肢がなかった。
つまり、私の税理士試験受験ロードマップは、大学3年時に挑んだ「簿記3級」という完全なる初心者レベルからのスタートを余儀なくされたのである。
2. 周囲との温度差と孤独な決断
周囲の学生たちが一斉に就職活動へと動き始めていた時期だった。友人たちはリクルートスーツに身を包み、企業説明会へと足を運び、「どの企業に応募したか」「面接の進捗はどうか」といった話題で持ちきりになっていた。
そんな喧騒を横目に、私は一人暮らしの自宅アパートで一人静かに参考書を開き、電卓を叩き続けていた。
正直に明かせば、当時の私に「何としても税理士になりたい」という高尚な志や強い執着があったわけではない。ただ胸の内にあったのは、“自分の人生を他人に委ねず、自分の意思で選択できるようになりたい”という切実な焦燥感と執着であった。
3. 「何者でもない自分」への恐怖と資格という手段
一般的な就職活動のプロセスを進めようとしても、当時の私は「自分が何者であるのか」すら定義できずにいた。何を成し遂げたいのかも不明確で、どのような企業を選択すべきかも見当がつかない。そのような不透明な状態のまま無防備に社会へと押し出されることに、強い恐怖を抱いていた。
学歴や特別な実績がない状態からでも、「難関資格」という目に見える客観的な評価基準を獲得できれば、社会における「自分の価値」を自らの手で定義できるのではないか――そう考えたのだ。
私にとって「税理士」という国家資格は、終着点ではなく、自立したキャリアと人生の選択権を勝ち取るための極めて合理的な“手段”に過ぎなかったのである。
第1章:私の5年間の受験ロードマップ
私の税理士試験の受験歴は、決して順風満帆なものではなかった。むしろ、暗雲の立ち込めるような迷いと挫折の連続であったと言える。
しかし、その回り道や泥臭い苦闘のすべてが、結果として現在の私を形作っている。ここでは、私がどのような環境に置かれ、どのような心境で勉強に立ち向かっていたのかを、可能な限りリアルな事実に基づいて記録する。
1. 大学3年:簿記3級からのスタート
最初に手にしたのは、書店で最も売れていた簿記3級のテキストであった。ページをめくった瞬間、目に飛び込んできた「借方」「貸方」という専門用語の意味すら、当時の私には一切理解できなかった。
しかし、未知の概念を一つひとつ解き明かしていく感覚や、左右の数字が寸分違わず一致する決算作業に、妙な爽快感を覚えた。大学で受ける理論中心の講義よりも、よっぽど「社会で生きている実用的な知識」に触れている実感が湧いたのだ。
2. 大学4年:簿記2級の独学合格
3級合格の勢いのまま、簿記2級へと駒を進めた。スクールには通わず独学という形をとったが、毎日愚直に机に向かい続けることで合格を掴み取ることができた。
「正しい方向性で努力を継続すれば、必ず結果として還元される」という揺るぎない感覚が、私の中に芽生え始めたのはこの時期である。
3. 同年:大手予備校(TAC)への通学と簿記1級一発合格
ここで私は、初めて“本気で合格を目指す受講生が集まる環境”へと身を投じた。大手予備校(TAC)の講義レベルは非常に高く、周囲の受験生の目の色もこれまでとはまるで異なっていた。
私は講義を一度たりとも休まず、理解が曖昧な箇所はそのままにせず、必ず講師に質問してその日のうちに解消した。徹底した食らいつきの結果、難関とされる簿記1級を一発で合格。これでようやく、税理士試験という本戦のスタートラインに立つことができたのだ。
4. 1年目:財務諸表論 合格(小規模会計事務所への就職)
大学を卒業後、私は実務経験を積むために小規模な会計事務所へ就職した。実務の現場は覚えるべき業務で溢れており、毎日が生き残るための必死のパッチであった。
それでも、「今年で絶対に1科目以上を仕留める」という強い覚悟を持って簿記論・財務諸表論・消費税法の受験に臨み、財務諸表論の合格を果たした。職場の所長や先輩方が我がことのように合格を喜んでくれた際の達成感は、今でも鮮明に記憶に残っている。
5. 2年目:簿記論 合格(結婚という転機)
この年に結婚を果たした。生活環境が大きく変化し、一家の支柱としての責任感も一気に増した。
しかし、勉強を「特別な活動」ではなく「生活の一部(歯磨きと同じレベルの習慣)」として組み込む仕組みを作ったことで、消費税法は不合格だったものの、会計科目である簿記論にも無事合格することができた。
6. 3〜4年目:法人税法・消費税法 不合格(挫折と子供の誕生)
ここから、私の受験生活において最も苛烈な停滞期が訪れる。
仕事の責任範囲は広がり、家庭では第一子が誕生した。当然、これまで確保できていた勉強時間は大幅に削られ、焦燥感だけが日に日に募っていった。
「これ以上の継続は不可能なのかもしれない」――そう弱音を吐きそうになった夜は一度や二度ではない。努力の量を投下しているにもかかわらず、全く結果に結びつかない苦しみを痛感した2年間であった。
7. 5年目:税法3科目(法人税法・消費税法・事業税法)同時合格
→ 官報合格
苦節を経て迎えた5年目、私は税法3科目を一気に同時合格し、官報合格(5科目完全合格)を成し遂げた。この大逆転を可能にしたのは、根性論に頼るのをやめ、勉強法の根本的な構造改革を行ったからに他ならない。