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私の推し活~世界が広がった主婦のはなし~

    それは2025年秋、突然やってきた。

    仕事を辞め専業主婦になって15年、長い不妊治療を経てやっとのことで子を授かって8年。巷には「推し活」という言葉が存在し、特定の「推し」がいる人が少なくないということは知ってはいたが、要領が悪く家事と育児だけで精一杯な自分には全く縁のないものと思っていた。

    きっかけはたまたま観たバラエティ番組で、楽しそうに歌う彼を知ったことだった。高音をものともせずにのびやかに歌い、大きな口で楽しそうに笑う。全身で「音楽が好き!」といっているかのようで可愛らしかった。そして、やや長めの髪・長身・細身。ビジュアルが私にとってはドンズバで好みだった。

    もっとさっきの彼の歌を聞きたい、そう思ったがあいにくその番組は録画していなかったので、ネットの無料配信を期間が終了するまで何回も観た。何回観ても飽きなかった。

    彼が若手アイドルグループの一人(メンカラは緑)であることを知り、グループ名で検索をかけると、どうやら彼らのYouTubeが大変面白く人気があるとのこと。早速見てみた。どれも面白くて動画を見ながら声をあげて笑った。アイドルではあるが、関西出身だからなのか会話がテンポよく、いざこざしているさまも面白い。特に笑った動画は家事をしながら繰り返し見た。YouTubeで何回も同じ動画を繰り返し見るのは初めてだった。

    しばらく動画を見漁っていて、ふと気づいた。そういえば彼らはアイドルだった。楽曲の動画をまだ見ていない。こっちが本業?のはずなのだからいくつか楽曲の動画が上がっているだろうと探し、最初に遭遇したのは彼らのライブ映像だった。

    バンドもやるグループであるということで、まずはそちらからと思い、動画を再生して度肝を抜かれた。ゴリゴリのロックサウンド、そして私が歌を好きになった彼はボーカルではなくドラムだった。あんなに歌えるのにドラム?!と大変に驚いたが、動画を見て納得した。彼らのグループには圧倒的高音・声量の神がかったボーカルがいた。私の気になる彼はそれはそれは楽しそうにドラムを叩き、週末の朝の情報番組で見たことがあった物腰の柔らかな彼は力強くギターをかき鳴らし、動画の中ではちょっと様子がおかしい(失礼)破天荒なイケメンと思った彼はスーパークールにキーボードを奏でていた。なんだこの子達、かっこいいじゃないか…!とあっという間にドハマりし、CDを買い集め、ネットをチェックしまくった。毎週の動画更新を楽しみにし、外出する時は彼らの音楽を常に聴くようになった。「これが推しってやつか!」と初めて「推し」がいることの楽しさを知った。

    いい歳をして、自分の息子でもおかしくないような年齢の子たちのアイドルグループを好きになってもいいものか…とはちょっと思った。友人にそのことを話すと、
    「”押しは推せるときに推せ“っていうじゃん、いいと思うよ」との答えが返ってきた。そうだよね、誰に迷惑をかけるわけでもないし、なにより今彼らの存在があることで毎日がより楽しくなり、イキイキと過ごせている実感がある。

    その後、彼らの曲をもっと聴きたいと思い、彼らのデビューアルバムを購入した。自分のためにCDを買ったのは何年ぶりだろうか、数年ぶりいや10数年ぶりかもしれない。最近は落ち着いて音楽を聴くことはなく、サブスクで昔聴いていた曲のプレイリストを作って運転中に流すくらいだったので、とても新鮮だった。彼らの楽曲はゴリゴリのロックからしっとりしたバラード、アイドルならではの自己紹介ソングやポップなものなど幅広くてどの曲も大好きになった。アイドルグループのアルバムを聴くなんて、学生の時以来だったけれど、いろんなジャンルの曲が聞けるのがアイドルならではで良いなと思った。

    Netflixで彼らのデビューまでの軌跡が配信されていたのを観た。彼らの所属する事務所にいる子の多くが下積みを経てデビューに至っているため、かなり早いうちから応援してくれているファンがいるのが普通だ。でも私は彼らのその頃を知らない。でもこのコンテンツを観て自分もずっと前から彼らを応援してきたような気持になった。知れば知るほど応援したいグループだ、そう思った。

    11月に勇気を出して彼らのファンクラブに入った。彼らの曲を聞くうちに、ライブで生歌を聴いてみたいと思うようになり、チケットを入手するにはファンクラブ入会が必須だったからだ。一般販売もあるにはあるが、どうやら調べてみると一般で入手するのはなかなかに難しいらしい。

    私が気になる彼を見つけたその直後、彼の所属するグループは大きな危機に見舞われていた。YouTubeは一時的に休止し、公開予定だった映画は今後どうなるかわからない。なんてタイミングで好きになってしまったんだろう…と思ったものだが、このまま終わるだなんてもったいない、なんとか前を向いて頑張ってほしいと思い、これからもあなたたちを応援したい人がちゃんといるよという気持ちでファンクラブへの入会手続きをした。ライブを観たいと思ったけれど、この状況では当分そんな予定は立てられないどころか今後一切ないかもしれない。それでも、ずっと応援したいと思っているよという気持ちが少しでも届くといいなと思った。

    彼らの活動再開は思っていたより早かった。一時はどうなることかと思ったYouTubeも再開され、新体制で歌番組にも出てくれるようになった。一連の報道後、初めて新体制で歌番組に出演した彼らを観たときは、嬉しかった。あの時のメンバーの苦悩や痛みは私などには理解できるはずはないけれど、若干の痛々しさを滲ませながらも全力でパフォーマンスする彼らを誇らしく思い、ヒリヒリした気持ちで、まるで親のような目線で数々の歌番組を見守った。

    年末にはこの事務所恒例のカウントダウンコンサートが久しぶりに復活というお知らせが来た。年末に東京ドーム…子持ち・家族持ちにはかなり厳しい。しかも錚々たるメンツが一堂に揃う場になるからそう簡単にチケットは入手できないだろう。配信があるとのことだったので、今回は配信チケットを購入して自宅で楽しむことにした。

    そして大晦日。ライブを配信で観るというのももちろん初めての経験で、始まる前からそわそわした。配信開始までに家事を一区切りさせ娘を寝かしつけて万全の態勢で臨む。

    始まった。しかし通信が不安定なのか肝心の彼らのターンで映像が途切れ途切れになる。半泣きになりながら再接続してみたが変わらず、あとからアーカイブで観られるということだったので、その時に改めて楽しむことにした。途中から安定してみられるようになったので、コラボ曲は無事に見れてホッとした。

    終了後ネットを観ると、彼らのビジュアルが話題になっていた。キラキラのアイドルではないワイルドさが彼らの魅力だ。コラボパフォーマンスも評判が良かったようで、まるで自分のことのように嬉しくなった。推し活って楽しい。

    カウントダウンコンサートの少し前、彼らのライブツアーのお知らせが来た。思っていたよりもかなり早く、ツアーの案内が来たことにびっくりした。勇気を出してファンクラブに入っておいてよかった。無事に申し込みができる。

    なんとか一度、彼らのパフォーマンスを生で観たい。でも私の住んでいる地方には彼らが来るはずはなく、どこの会場へ遠征するかが問題だ。

    子どもの学校のスケジュールや夫の仕事の繁忙期のことも考えて日程とにらめっこし、私の住んでいる場所から一番近い新潟会場に申し込むことにした。申し込みをしたからといって、チケットが取れるかどうかは分からない。でも取れたら絶対に行きたい。唯一参加可能と思えた4月25日の夜公演一本に絞って申し込みをし、結果を待った。夫にはチケットが当たったら相談してみよう。

    年が明けて、無事チケット当選の連絡が届いた。やった!これで彼らに会える。

    チケットを申し込むとき、1枚にするか2枚にするかは非常に迷った。これまでライブやコンサートに一人で行ったことがなかったからだ。仮にチケットが取れたとしても、小さい子供がいる身では当日まで何が起こるかわからない。急な病気や怪我・トラブルで行けなくなってしまう可能性を考えて、1枚で申し込むことにした。一人でライブ参戦だなんて、私にとってはかなりの冒険だ。

    チケット当選の連絡が来てから、私は夫にライブに行きたい旨を相談した。出かけるのは土日、スケジュール的にライブ終了後1泊して翌日帰ってくることになる。学校も会社も休みなので夫への負担は比較的少ないはずだ。食事の支度は敷地内に同居する私の母が引き受けてくれ、夫も了承してくれたので晴れて新潟に行けることになった。

    初めてのツアー参戦がめでたく決まった後、彼らのニューアルバムのリリースがあった。このアルバムを引っ提げてのツアーとなるわけで、買わないという選択肢はない。アイドルならではなのか、アルバムが出ると言っても1形態ではなくて、さまざまな特典が付いた何パターンかがリリースされる。早期の特典があるので、どの形態をどのタイミングで買うか、難しい。なかなかに仕組みが複雑で混乱していると、ファンの方が丁寧に解説してくれているサイトを見つけた。この特典が欲しい人はこれを予約する、早期特典が欲しい人はこの点に注意、と詳しく紹介されていて非常にありがたかった。

    サイトを参考に予約を済ませ、アルバムの発売を待った。そしてアルバム発売に合わせたYouTubeの生配信があるということで、落ち着いてリアルタイムで視聴すべく家事の時間、子どものお風呂の時間を調整する。

    インスタライブやYouTube生配信なんてものは今まで縁がなく、視聴方法も知らなかったが、彼ら見たさに必死で慣れてコメントも送るようになった。彼らのおかげで毎日が刺激的で非常に楽しい。ただ、スマホやタブレットを見る時間が圧倒的に増えたのはちょっぴり心配だ。


    ライブ参戦までは少し期間があったので、暇さえあればネットでありとあらゆる情報を検索しまくった。彼らの事務所ならではのルールがあるらしく、グッズ購入については事前に整理券をおさえておく必要があった。3月からツアーが開始していたので、ツアーレポのようなものも上がっていたが、なるべくそれは見ないようにした。せっかくの初めてのライブ、なるべく新鮮な気持ちで演出を楽しみたい。とりあえず彼らの楽曲を聴きこんでいけばなんとかなるだろう。ツアーレポは新潟公演を観終わってからゆっくり探そう。

    続いてツアーグッズのお知らせが来た。とりあえずペンライトとうちわは必須!さて誰のうちわを買う?YouTubeを見まくって、アルバムを聴きまくって、メンバー全員のことが大好きないわゆる”箱推し”になっていたので非常に悩んだ。いっそのこと全員分購入する…?そんなことも考えたが、結局一番最初に好きになった緑の彼のを購入することに決めた。あとは何を買う?今回のツアーからと思われる動物のキャラがやたらと可愛い。メンバーそれぞれの個性をとらえていて面白い。グッズ購入の整理券用のアプリに、購入品のリストを作る機能があったのであれやこれやと悩んだ。できることなら全部購入してしまいたいくらいだが、さすがにそれは現実的ではない。心の中で落ち着け私!と自分で自分を戒める。パンフレットは今回の記念に欲しい…タオルもやっぱりライブ感が高まるから欲しい。そして最も気になったのがスカーフだ。

    こういうライブのグッズでスカーフっていうのはちょっと珍しい気がしてずっと気になっていた。髪につけたり首に巻いたりしてもいいし、バッグに結ぶのも可愛いと思う。悩んでいたら、先に開催された会場でスカーフが売り切れ続出というのを見た。メンカラ赤の彼が一番の激推しグッズということで売れに売れているらしい。そうなるとやはりスカーフは購入したい。というわけでグッズ購入は夕方でも良いと思っていたが、予定の時間を早めて整理券を無事におさえた。それでも早い時間に売り切れてしまう可能性はあるが、それはもう運だから致し方ない。


    肝心の宿については、ツアー日程が発表になった段階で会場横のホテルを早々に予約していた。チケットの当落が分かってからキャンセルすることになっても直前ではないのでキャンセル料はかからないし、今押さえておかないときっと宿は見つからないと思ったからだ。これが非常に良かった。当日は朝、習い事に向かう子どもと夫を見送ってから駅に向かい、新幹線に乗り込んだ。1人で新幹線に乗るのもかなり久しぶりだ。働いていたときは出張で時折利用していたが、それもずいぶん昔の話なので改札を通るだけでもドキドキした。


    新幹線に乗り込む。無駄にワクワクする。ここにいるのは妻でも母でもない自分だ。


    正直自分にこんなに行動力があるだなんて思ってもいなかった。推しの効果はすごい。途中乗り換えが不安ではあったが、スマホで検索しながらなんとか現地にたどり着いた。

    会場には既にたくさんの人がいた。若い子ばかりなんじゃないかと心配していたが、自分と同じくらいやもっと上の年齢らしき方もちらほらいてホッとした。年配のご夫婦や、男性2人組もいてファンの方の幅広さにびっくりした。

    ホテルのチェックインにはまだ少し時間があったので、先にフロントに荷物だけ預けに行く。身軽になったところでトイレを済ませ、グッズ整理券の時間になった。初めてで戸惑いながらも案内に従い並んでいると、前に並んでいた方から「この画面ってこれで大丈夫ですかね?」と声をかけられた。「私も初めてなのではっきりは分からないけど、たぶん大丈夫なんじゃないですかね。システムが複雑でドキドキしますよね」と答えた。「ホントに!何回か来てても毎回ドキドキするわ」とその方と隣の連れの方と少し話をしながら自分の番を待った。

    並んで待っている間に、先にグッズ購入を終えた人たちが次々と出てくる。早速シャツに着替えている人を見て、「やっぱりあのシャツ可愛いなぁ。買った方がいいかなぁ」と呟く。すると隣にいた方が「あれ可愛いですよね。私もまだ悩んでるんです」と声をかけてくださった。そしてまたしばし談笑。1人は心細いかと思っていたけど周りの方が温かくてほっこりした。

    結局シャツは、とっても悩んだけれど見送ることにした。すでにグッズ購入の自分の予算を超えていたからだ。ぬいぐるみ付のイニシャルキーホルダーも、全メンバー分欲しかったが緑の彼の分だけ購入した。いつかこのキャラで全身のぬいぐるみが出るかもしれない。そのときに全色買うんだ!という希望のもとに。

    悩みに悩んで購入したのはパンフレット、うちわ、ペンライト、ぬいぐるみ付のキーホルダー、シール、タオル、そしてスカーフ。無事に買えたが直後にやはりスカーフは品切れのお知らせがきていて、ファンの熱量に感心させられた。


    スムーズにグッズ購入を終えたところでチェックイン時間になったので、ホテルに向かった。会場直結のホテルというのは大変に便利だ。体力に自信のない私にとってこんなに安心なことはない。

    フロントに手続きに行くと、「喫煙のお部屋で予約されていますが、よろしいですか?」と聞かれたのでダメ元で「禁煙に変更できますか…?」と聞いてみた。慌てて予約を入れたときはちょっと上のクラスの喫煙の部屋しか空いておらず、少し悩んだものの宿が取れるんだから贅沢を言うまい!と諦めて喫煙で予約していたのだ。

    すると「空きがあるので変更できますよ。ツインの部屋になるのでゆったりお使いいただけると思います」と朗らかに言われ、変更をお願いした。聞いてみて良かった。

    部屋に入り、ぽいぽいと靴を脱いでひと心地つく。疲れた。なんせ初めての一人旅なのだ。ツインのお部屋は広々としていて快適だ。

    会場に入るまではまだたっぷり時間があるので、いったんシャワーを浴びてさっぱりした。かすかに会場内でのリハーサル?の音が聞こえる。どうしよう、ワクワクが止まらない。あと少しで彼らに会える。

    身支度を整え、そろそろかなと思う時間で部屋をあとにする。会場では入場のアナウンスが始まり、たくさんの人が並んでいた。参戦服というのかな、皆それぞれ気合を入れた服装をしていて素敵だなと思う。メンカラでバチっと決めた人、ツアーグッズで全身揃えている人、おそろいの服を着た可愛らしい2人組の女の子。私は今回動きやすさ快適さ重視で、アクセサリーが少し多めなくらいで普段とそんなに変わらないのだけれど、次回参戦する時にはこういうのもいいなと思った。

    そしていよいよ発券。チケットは早々に確保されているものの、座席は会場に入るまでわからない。QRコードをスタッフに見せ、紙のチケットを受け取る。座席番号が見えないチケットを伏せた形で手渡され、そういうものなのだと変に感心する。

    私の座席はアリーナの1番後ろの右端のブロックだった。良い席なのかどうかはよく分からない。とりあえずステージからは割と遠いのだなと思ってちょっぴり残念に思ったけれど、最初から神席を引けるなんてミラクルはそう起こらないものだ。初めてなのだし上等上等、と自分に言い聞かせる。

    私の席の両端は肩の出たお洋服を着たギャルっぽいお嬢さん方で、アラフィフの私がその間におさまるのはちょっと緊張した。座席は思っていたよりも狭くてギュっとしている。鞄を足元に置き、ペンライトとうちわを握りしめて開始を待つ。初めてなのでどんな風に始まるのかもよく分からずドキドキしながら座っていたら、少しずつ彼らのグループを呼ぶ声が聞こえ始めた。そろそろ始まる、ということなのか。

    その後どのように始まったのかは正直あまり覚えていない。ただ、予想外のところから彼らが登場し、ものすごい声援が聞こえ、初めての生歌に感動したことは覚えている。こればっかりは運だから仕方ないのだが、私の席からステージへの目線の延長線に割と背の高い方がいらして、150㎝ちょっとしかない身長の私からはステージ中央は完全に見えなくなってしまった。必死にモニターで彼らの姿を追ったがモニターも隠れて見えなくなってしまい、音だけで楽しむしかない時もあったがそれでも楽しかった。

    途中、いわゆるトロッコというものでメンバーが後方のお客さんの近くに来てくれる演出があった。緑の彼がトロッコに乗って私たちのいるブロック近くまで来てくれたので5メートルほどの距離で観ることができた。私は必死にうちわとペンライトを振った。彼は今日もニコニコしていて、久しぶりのライブですごく嬉しそうだった。つられて私までニコニコしてしまう。彼の笑顔の力は半端ない。

    続いて青の彼がやってきて、ちょうど角の所で歌い始めた。私の隣の隣の女の子は彼のファンらしく、一生懸命にアピールしていたら不意に彼から投げチューをもらい、そのまま崩れ落ちた。至近距離でのファンサの攻撃力?ってこんなにすごいものなのね…とおばちゃんはまた感心してしまった。

    それからも次々にメンバーがやってきて、会場全体の観客に最大限応えている。次にやってきた紫の彼は彫刻のように美しく、少し前に見た彼の個人YouTubeで緑の全身タイツを着て河童になっていた人とは到底思えなかった(笑)。残念ながら赤の彼は私は後ろ姿でしか見れなかったのだけど、あの圧倒的な歌声を聴けて大満足だった。席に着いたときはステージからの遠さを残念に思ったが、一時的ではあるにせよ、離れた座席の人にも彼らを近くに感じられる演出があるのがすごいと思った。そしてステージがあんなに動くものなのだと驚かされた。


    夢のような時間が終わり、余韻を感じながらホテルに戻った。1人での参戦は、これはこれで気ままに動けて良いなと思ったけれど、終わった後に感想を語り合える人がいないのはちょっと寂しい。この時だけは誰かと感動を分かち合いたい。部屋に戻ってから、ネットで感想を綴っている人を見つけては読み耽った。

    会場の隣がホテルというのは、本当に楽でありがたい。帰りの車や電車の混雑を気にせずゆったりと過ごせるのは想像以上に快適だった。もし来年も彼らが新潟に来ることがあればまた同じ形で参戦したいと思った。


    初めてのライブ参戦が終わり、余韻に浸っていたのもつかの間、公開延期になっていた彼らの映画が公開間近となり、4枚目のシングルの発売を控え様々なプロモーションが始まった。当然のごとく各形態1枚ずつを予約し、微力ながら売り上げに貢献する。GW明けには彼らの楽曲のサブスク解禁が発表され、それを記念しての様々なイベントがネットで展開された。リスニングパーティーというものを初めて知り、あれこれ調べながら必死でついていった。大変だけど、嬉し楽しい忙しさだ。

    そして4枚目のシングル発売日。サブスクが解禁されたらCDの売り上げは伸びなくなるのかなと勝手に心配していたら、全然そんなことはなかった。発売直後、ネットには「売り切れた」「ここの在庫はあと○枚」と情報が飛び交い、彼らの売り上げ記録を更新すべく熱心に奔走するファンの人たちの熱量が凄かった。地方に住む私は大きな力にはなれなかったけれど、画面の向こうで頑張る人たちを応援しながら一緒に達成感を味わっていた。そしてハーフミリオン達成。ファンの団結力、ここに極まれり。


    彼らグループ自身のことはもちろん大好きだが、この熱意あふれる彼らのファンの人たちも本当に素晴らしいと思う。特典の獲得方法がわからずネットで呟けば親切に解説してくれ、ライブ会場で初めての人にもアドバイスしてくれている書き込みをみてほっこりする。彼らのファンは全体的に熱く、治安がいい。

    怒涛のプロモーションを追いかけているうちに、私のツアー参戦は新潟の1回きりで終わりと思っていたが、できることならもう一度体験したいと思い始めた。そして無謀にも一般発売に挑戦した。思っていたとおりなかなか購入画面にたどり着けなかったが、粘り強くパソコンとにらめっこしていたら、突如として画面が変わり、奇跡的に横浜アリーナの立見指定が取れた!購入画面に入力する手が震えた。もう一度あの空間に入れるなら、立見でもなんでも構わない。


    さて、突如として2回目参戦の機会を得たわけだが、宿の手配もしていないし夫の了承も得ていない。しかも今回は平日夜。家族に反対されたら今回は諦めるしかないかもしれない。そう思いながらも慌てて宿を探し、新幹線の切符を手配して夫にお伺いを立てた。またしても自分でも驚くべき行動力を発揮していた。

    「誕生日もクリスマスも何もいらないから、7月6日の横浜公演に行かせてください!!!」思い切って夫に切り出したところ、「チケットが取れたんだったら行って来い!」との返事がもらえた。やった!


    4月に続いて再び不在の間の食事や子どものお迎えは実家を頼りつつ段取りをし、2回目参戦の準備を進めた。1回限りでしまい込んだままになると思っていたツアーグッズを再び出してきて荷物をまとめる。

    今回はちょっぴり参戦仕様で、それぞれのメンカラのハートのミニバッジを作って着て行く服につけた。鞄には新潟公演の時に買ったぬいぐるみキーホルダーとスカーフをつけ、うちわとタオルとペンライトを持って出かけた。今回はグッズを既に購入しているので、楽に行動できた。

    2回目の参戦は立見だったのでほぼ見えなくても仕方ないと覚悟はしていたが、思っていたよりは見えた。ステージ横に近い位置だったので、新潟の時よりモニターが大きく見え、不満はなかった。後ろに人がいないので、遠慮なくペンライトを高く掲げ、求められるままに大声で声援を送った。とても楽しかった。

    帰ってからはまたネットで感想を見漁った。現地に入れた高揚感でなかなか眠れなかった。そして今もなお、暇さえあればスマホで彼らを追いかけ続けている。


    「推しがいる」っていうのがこんなに楽しくて幸せなことだとは知らなかった。推しをきっかけに、行動範囲が広がり、友人が増える。次のツアー参戦や新曲を楽しみに毎日頑張れる。「推し」の対象がアイドルではなく2次元や動物だったとしても、きっと皆同じ感情を味わっているのだろう。彼らに出会えて本当に良かった。つい先日帰ってきたばかりなのに、早くも私は次のライブを楽しみに毎日を過ごしている。


    あの時、たまたま見た映像が、私の世界をこんなにも広げるなんて思ってもいなかった。

     
     
    日々のこと、好きなもの、折々の気持ちを少しずつ。

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