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♯16セカンドシヌズンヌ奜きな人を、真っ盎ぐに。ヌ

    第16話 隣の垭の君


    二人が仲良くなったのは、入孊しお䞀番最初に隣の垭になったこずが、きっかけだった。

    鷹井綟真たかい りょうた。
    䞀幎二組。
    バスケ郚所属。

    入孊しおすぐ、教宀の空気はただ他人の匂いが残っおいた。
    机ず机の間に流れる距離感。
    名前も知らないたた亀わされる「おはよヌ」ず、ぎこちない笑い。

    その䞭で、隣の垭の女の子だけが、最初から最埌たで静けさを纏っおいた。

    地味で、もの静かで、い぀もマスクず長い髪で茪郭を隠しおいる。
    衚情の半分以䞊が芋えないせいか、教宀の喧隒から䞀歩、いや二歩くらい倖偎にいるように芋えた。

    第䞀印象は、暗い女子。

    そんな感じだった。

    だけど、綟真はすぐに気づく。
    圌女は静かなくせに、なぜかやたらず隒がしい。

    バサバサッ。

    授業の合間、隣からプリントの束やノヌトや文房具が、よく綟真の足元に舞い萜ちおくる。

    「あ っごめんなさい 」

    拟っお手枡すず、圌女はたるで声が消えそうなくらい小さく蚀う。

    「 すいたせん ありがずうございたす 」

    芖線は、䞀床も合わない。
    髪の隙間から芋える目が、こちらを芋ようずする盎前にふっず逞れおいく。
    その動きが、謝眪の蚀葉より怖がっおいるこずを瀺しおいた。

     別に、怒っおないのに

    綟真は内心でそう思う。
    でも圌女は、怒られおいないこずより先に、迷惑をかけたこずに反応しおしたうみたいだった。

    たた別の日。

    「あれ 消しゎム 消しゎム あれヌさっきたであったのに 」

    普段は無口で息をひそめるみたいに座っおいるのに、こういう時だけ独り蚀が出る。
    声は小さいのに、動きが倧きい。

    バサバサ 
    ガサゎ゜ 

    教科曞を持ち䞊げ、ノヌトをめくり、机の䞭をかき回しお、ポケットたで探り圓おる。
    静かな人が突然、忙しい人になるその萜差が䞍思議で、綟真は目の端で远っおしたう。

     本圓に、おっちょこちょいだな

    呆れるずいうより、倉なずころで人間味があっお、少しだけ笑いそうになる。
    けれど笑ったら、圌女はもっず瞮こたっおしたう気がしお、綟真は衚情を動かさないたた、自分の消しゎムを差し出した。

    「はい」

    圌女の手が止たる。
    動きが止たるず、教宀の音がやけに急に倧きく聞こえる。

    「  え  でも    」

    戞惑いが、そのたた沈黙になった。

    「予備あるから」

    綟真は、なるべく軜く蚀う。

    「   す、すみたせん 」

    い぀も以䞊に小さい声。
    気たずそうに、ためらいながら、それでも指先でそっず消しゎムを受け取る。

    隣の垭の子。

    星野陜向は、そういう子だった。

    話しかければ、壊れそうな声で返事をする。
    でも、こちらが䜕もしなければ、透明みたいに存圚を薄くする。

    そしお──

    入孊匏から十日ほど経った、ある日。



    圌女は、突然䞀倉した。



    「え 星野さん 」

    「え、たじ」

    「だっお、あそこ星野さんの垭じゃん」

    女子たちの声が、綟真の耳に飛び蟌む。
    そのトヌンには、驚きず、ざわめきず、少しの興奮が混じっおいた。

    綟真は反射的に、隣の垭を芋る。

    「   っっっ」

    その瞬間、胞の奥が硬くなる。

    そこにいたのは、確かに星野陜向のはずなのに、今たでの“星野陜向”ではなかった。

    驚愕の盎埌。
    星野陜向は、䞀瞬でクラスの女子に囲たれた。


    ────────。


    その日を境に、圌女を取り巻く䞖界はひっくり返った。

    教宀の芖線。
    女子たちの距離。
    名前を呌ばれる頻床。

    すべおが、昚日たでずは別物だった。

    綟銬はい぀も䞀番近くでその存圚を感じおいたからこそ、陜向の倉化を䞀局匷く感じおいた。

    「  はぁ〜  どこ行っちゃったかなぁ〜  」

    小さな呟き。

    ガサゎ゜。
    ガサゎ゜。

    バサッ。

    教科曞が萜ちる音。
    続いお、シャヌペンが机の瞁から滑り萜ちお、床を転がる。

    コロコロ  



    ああ 出たよ。



    どれだけ髪を切っおも。
    どれだけ呚りが隒いでも。

    探し物をしお、萜ずし物をしお、気づいおいない。

    芋た目は別人のように倉わっおも、䞭身は星野陜向本人のたただ。

    綟真は内心で、少しだけ肩の力を抜いた。

    足元たで転がっおきたシャヌペンを、䜕の迷いもなく拟い䞊げる。
    考えるより先に、身䜓が動く。

    「はい」

    「  ごめんなさい  」

    小さく、䞁寧な䌚釈。
    以前ず同じ仕草。
    以前ず同じ声の倧きさ。

    「本圓、よく萜ずすよね」

    呆れたように蚀いながらも、声に棘はない。
    それはもう、泚意ずいうより、習慣みたいなものだった。

    「なに探しおるもの」

    「修正テヌプです」

    綟真は無蚀でポン、ず陜向の机ぞ修正テヌプを投げ眮いた。
    たるで圓たり前かのように、すっかり慣れた仕草になっおいた。

    「ありがずうございたす  」

    陜向は、たた小さくお瀌を蚀う。

    その暪顔を、綟真はちらりず芋た。
    短くなった髪が、頬のラむンを隠さずにさらりず揺れる。
    今たで髪の奥に隠れおいた茪郭が、教宀の光を受け止めおいる。

    䞍意に、蚀葉が口から零れた。

    「髪短いの、䌌合うね」

    䞀瞬、空気が止たった。

    「  え」

    陜向の顔が、ゆっくりこちらを向く。

    その瞬間。
    初めお、真正面から、芖線が重なった。

    マスク越しでも、䌏せられた芖線でもない。
    逃げ道のない、正面同士の目。

    綟真の胞が、ほんの少しだけ跳ねる。

       こんな目、しおたんだ。

    思っおいたより、ずっず倧きくお、思っおいたより、ずっず感情がそのたた出る目。

    「そっちの方がいいっしょ。断然」

    そう蚀った自分の声は、驚くほど自然だった。
    取り繕っおいない。
    気を遣っおもいない。

    その盎埌だった。
    陜向の口元が、ふっず緩んだ。
    䞀瞬だけ、迷うように。
    それから——

    「ありがずう」

    小さく、でもはっきりず。
    芖線を逞らさないたた、埮笑んだ。

    ——星野陜向が、笑った。

    䜜り笑いじゃない。
    呚りに向ける愛想でもない。
    今たで䞀床も芋せなかった“こちらに向けおの笑顔”。
    綟真の胞の奥に、蚀葉にならない䜕かが萜ちる。


    しばらく、静かな時間が流れた。


    黒板に曞かれるチョヌクの音。
    ペヌゞをめくる玙の擊れる音。
    教宀の空気が、少しだけ匛んでいく。

    「あ こんなずころに居た、修正テヌプ」

    呟くような声。

    綟真は芖線だけを暪に送る。
    そこには、蛍光カラヌペンのケヌスの蓋を半分開けたたた、ぎたりず動きを止めおいる陜向の暪顔があった。

    色が党然揃っおいないペンずペンの間。
    なぜか、そこに鎮座しおいる修正テヌプ。
    なぜその䞭に修正テヌプが入っおいるのか理解出来ない。
    文房具の分類も、収玍の秩序も、この子の䞭では独自の法則で成り立っおいるらしい。

    「文房具の䜏所、ちゃんず決めよ」

    思わず零れた蚀葉は、泚意ずいうより提案に近かった。

    「いや、䞀応決たっおはいるんだけどみんなすぐ家出しちゃうんだよ」

    陜向が䞀瞬キョトンずした埌に口にした、あたりにも自然で、圓たり前みたいな蚀葉に小さく吹き出した。

    「反抗期かよ 笑」

    案倖話しおみるず、この子の独特な蚀葉の蚀い回しは普通ずは少しズレおいお、なんかツボだなず綟真は感じた。

    呚りが隒ぎ始めおからも。
    芋た目が倉わっおからも。

    こうしお䞊んで座っお、萜ずし物を拟っお、探し物に付き合っお、しょうもないやり取りをするのは䜕も倉わらない。

    「すいたせん、修正テヌプありがずうございたした」

    その声は、さっきよりもほんの少しだけ、はっきりしおいた。
    芖線はただ長く合わない。
    でも、逃げるように䌏せる感じでもない。
    綟真は机の䞊のノヌトに芖線を戻しながら、返された修正テヌプを受け取り、軜く答える。

    「どういたしたしお」

    それだけの蚀葉。
    それだけのやり取り。

    なのに、胞の奥に残る感芚は、さっきたでずは、少し違っおいた。



    ────────。



    それからの日々も、星野陜向は盞倉わらずだった。

    消しゎム。
    マッキヌペン。
    蛍光ペン。
    修正テヌプ。
    のり。

    授業の途䞭でも䌑み時間でも、ふずした瞬間に、

    「あれ  あれ」

    ず小さく呟きながら、い぀も䜕かを探しおる。
    そのたびに、綟真は半ば呆れ、半ば慣れたように笑う。

    「たたかよヌ」

    そう蚀いながら、必芁そうな文房具を差し出す。
    蚀葉にしなくおも、もうだいたい分かる。

    それが、い぀の間にか日垞になっおいた。

    䜕でもない䌚話も、増えおいった。

    星野陜向は挫画が奜きで、女子にしおは珍しく週刊少幎誌系のコミックにもやたら詳しい。
    しかも知識だけじゃない。
    語り出すず止たらない熱量がある。
    お互い共通で奜きな挫画の話しが぀い匟んでしたい、授業䞭に先生に二人しお怒られる事もしょっちゅうだった。
    でも、䞍思議ず嫌じゃなかった。

    そしお、もうひず぀。
    星野陜向には、臎呜的な癖があった。



    授業䞭、すぐ眠る。



    板曞の途䞭。
    先生の説明の真ん䞭。
    静かに、気づかれないように、すずんず意識が萜ちる。

    隣の垭だからこそ、分かっおしたう。

    机に䌏せた暪顔。
    芏則正しく䞊䞋する肩。
    前髪の隙間から芗く、無防備な衚情。

    至近距離で芋るその姿には぀い぀い芖線を奪われる。

    こんなに授業䞭寝おる奎なんお初めおだ。
    今たで同玚生の女子の寝顔なんお芋る事は、たずなかった。

    たた寝おんなヌ  

    綟真はい぀も芋぀めるだけ。
    起こすのは、決たったタむミングだけ。

    先生が名簿をめくる音。

    「次の問いを  えヌっず、次の出垭番号は  」

    その瞬間。
    綟真は、ペンの先や指先で、そっず陜向の腕を぀぀く。

    ツン。

    「  っ」

    小さく肩が揺れお、陜向が目を開く。

    「問い4。それ、匏ず答え。」

    サッず自分のノヌトを陜向の机に玠早く瞬間移動させる。

    「 次は 出垭番号20番だから 星野だな。はい、じゃあ答えお。」

    先生の蚀葉に、陜向は䞀瞬だけ戞惑っおから、綟真の指瀺通りに机に開かれたノヌトの内容をそのたた答える。

    そしおホッずしたように怅子に座り盎したあず、ノヌトを返しながらこちらを芋お、ハッキリずわかりやすく口を動かす。

    あ、り、が、ず、う

    声はない。
    でも、ちゃんず䌝わる。



    その盎埌に芋せる、柔らかい笑顔。



    綟真の胞の奥で、䜕かが萜ちた。

    ドンッ──ず音がした気がした。

    理由なんお、分からない。
    ただ、確かに。


    完党に    



    食らった。




     
     
    䌚瀟員しながら子䟛5人の子育おに奮闘し、小説の執筆掻動しおいたす 毎日のメむン執筆掻動タむムは、話し長い郚長の朝瀌䞭ず、䌚瀟の぀たんない研修䞭です♡ 連茉䞭「セカンドシヌズンヌ奜きな人を、真っ盎ぐに。ヌ」 完結たで毎日曎新したす

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