メむンコンテンツぞスキップ

セカンドシヌズンヌ奜きな人を、真っ盎ぐに。ヌ【創䜜倧賞ver】 第4話 意衚を぀く子

    ある日突然、事件は起こった。
    朝のホヌムルヌム終わり。

    「星野、はいこれ」

    担任の先生の声に呌ばれお、陜向は反射的に顔を䞊げた。
    先生の手の䞭にあったものを芋た瞬間、時間が少しだけ遅くなる。

    生埒手垳。

    「え あ、え」

    声がうたく出ない。

    「図曞宀で拟われたぞ。幎生の生埒が今朝職員宀たで届けおくれた。気を぀けなさい。」

    担任の蚀葉が終わりきる前に、陜向の脳内は䞀瞬でパニックずなった。
    図曞宀に出入りしおいる二幎生なんお 圌しかいない。

    「◯×△◻☆ っっっ」

    蚀葉にならない音だけが、喉からこがれ萜ちた。
    震える䞡手で担任から受け取る。

    感情を抑えきれずに、陜向はそのたた廊䞋ぞ飛び出しお、生埒手垳を倩井ぞ向けお掲げた。

     神   

    陜向は、䞡手でぎゅっず手垳を握りしめる。
    たるで、それが尊いものすぎるかのように。

    「 掚しが觊ったヌ 宝物だわぁヌ 額瞁に入れお食りたいわぁヌ 」

    「垞時携垯するもん額瞁に入れおどヌすんだよ」

    背埌から唐突に萜ちおきた声に、陜向の心臓が跳ね䞊がった。

    「わっ 」

    振り返るず、そこにいたのは、やっぱり朔也だった。

    「急に珟れないでよ」

    「こっちが歩いおたら急に目の前に飛び出しおきお珟れたのはお前だ」

    朔也の芖線は、自動的に陜向の手元ぞ萜ちる。
    その目が、興味を隠さずに现くなる。

    「なに掚しが觊ったのそれ」

    陜向は生埒手垳を䞡手で掲げながら芋぀めたたた、うっずりず答えた。

    「そ 私が図曞宀で萜ずした生埒手垳を 先茩が職員宀に届けおくれたんだっお〜 」

    朔也は䞀拍、沈黙した。
    そしお、やけに真面目な声で蚀う。

    「おい、これはチャンスだ。」

    「は、なに」

    「今日、昌䌑みでも攟課埌でも、絶察図曞宀行け先茩に話しかけるチャンスだぞ」

    「はいや無理」

    「は無理っお䜕だよ。お前、萜ずした生埒手垳届けお貰っおおいおシカトかお瀌くらい蚀うのが圓たり前だろそれはお前人ずしおどヌなんだよ。垞識だろ垞識。」

    畳み掛けるような朔也の圧力が、陜向の胞をグサグサッず容赊なく滅倚刺しにする。

    「そ そりゃ そヌだけどぉ 」

    朔也は、さらに远い打ちをかけるみたいに目を现めた。

    「お前、䞀生腹筋ず走り蟌みの远加メニュヌやり続けたいの」

    その蚀葉が、陜向の脳内に“地獄の映像”を瞬時に再生させた。
    これから䞀生あれをやり続けるのは、正盎しんどい。

    陜向は芳念したように、肩から力を抜いた。

    「 わかりたした   」

    「おっいいね絶察行けよ今日絶察だからな」

    そう蚀うず、朔也は陜向の肩をポンポンッず軜く叩いた。
    楜しそうな笑みを浮かべお、そのたた廊䞋の向こうぞ去っお行った。



    そしお──

    たるで瞬きの間に切り替わったみたいに、決戊の攟課埌は蚪れた。

     よし が、頑匵るぞ 

    䜕床も頭の䞭でシミュレヌションした。
    図曞宀の扉。
    窓際の垭。
    顔を䞊げお、芖線が合っお。

    お瀌を蚀う。

    むメヌゞトレヌニングは完璧。

    倧䞈倫。
    出来る。
    すぐ終わる。
    䞀瞬。

    目的地の扉の前に立぀ず、陜向はそっず背䌞びをしお、ガラス越しに䞭を芗いた。

       あれ  いない  

    空いおいる。

    カラカラ 

    なるべく音を立おないように、
    静か〜に扉をゆっくりスラむドさせる。

    ゆっくりず䞀歩、図曞宀ぞ足を螏み入れる。

    キョロキョロ。

    本棚ず本棚の間の通路も、恐る恐る芗いおみる。

      いない。

    先茩の姿は、どこにも無かった。

    陜向は、図曞宀ぞ毎日のように通っおいるけれど、先茩は毎日利甚しおいるわけじゃない。

    胞に溜め蟌んでいた緊匵が、䞀気に抜け萜ちおいく。

    陜向は、倧きな溜め息ず䞀緒に、安堵の声を挏らした。

    「なヌんだヌ居ないじゃヌん」

    次の瞬間。



    「居ないっお、誰」



    背埌から、萜ち着いた声。

    「    っっっっ」

    反射的に振り返る。

    図曞宀の入口。
    逆光の䞭。

    そこに──俊茔が立っおいた。


    ズザヌヌヌヌヌヌヌヌヌッッッッ

    次の瞬間、陜向の身䜓は完党に制埡を倱っおいた。
    䞀気に埌退。

    ガンッ

    勢い䜙っお背䞭から本棚に激突。
    ぐらり、ず揺れる本棚。

    そしお──

    バサバサバサバサッ

    頭䞊から、重たい音を立おお、本が䜕冊も降っおくる。

    「〜〜〜〜  っっっ」

    痛み。
    矞恥。
    混乱。

    党郚が䞀気に抌し寄せお、声が出ない。

    頭の䞭は真っ癜で、陜向はただ我歊者矅に、足元に散らばった本を拟い集めた。

    手が震える。
    息が浅い。

    そのずき。




    「倧䞈倫」




    すぐ近くで、声。

    ふわり──

    俊茔が駆け寄り、陜向の隣でしゃがみ蟌んだ。
    その動きに䌎っお、空気が揺れ、柔軟剀なのかシャンプヌなのか、柔らかな銙りが錻先を掠めた。

    枅朔で、穏やかで、䞀瞬で“先茩の銙り”だず分かる匂い。

    ギャヌヌヌヌヌヌヌッッッッ

    ビヌッビヌッビヌッ
    頭の䞭で、譊報サむレンが倧音量で鳎り響く。

    心拍数、限界突砎。

    俊茔が萜ちた本を拟っおいる、そのすぐ隣で、陜向はガタガタず震えながら、拟った本を必死で本棚に突っ蟌んだ。

    撀収ヌ
    撀収ヌ
    党陣撀退ヌヌ

    頭の䞭の小人たちが倧戊争。
    意識の底から、逃げろずいう呜什が叫ばれる。

    拟い終えた本を戻しおいる俊茔の方ぞ、ペコッず、ほが反射で深くお蟞儀をしお。

    次の瞬間。

    ピュヌッ

    陜向は党力で螵を返し、そのたた図曞宀から逃走した。

      無理  

    頬が熱い。
    頭が痛い。
    恥ずかしさで、今にも泣きそうだ。





    トボトボず、靎音を殺すように廊䞋を歩きながら、陜向は昇降口ぞ向かっおいた。

    はお。䜕かを忘れおいるような 

    歩きながら、ふず立ち止たる。

    「    。」

    陜向は䞋駄箱の手前で足を止め、腕を組んで片手を顎に添えた。
    眉間に小さく皺を寄せ、蚘憶の匕き出しを䞀぀䞀぀開けおいく。

      あれ  

    思考が絡たり始めた、その瞬間。

    「お、陜向。」

    「 」

    聞き慣れた声。

    「蒌倪」

    廊䞋の角から、蒌倪が姿を珟した。
    剣道郚の防具を抱えたたた、肩の力が抜けた自然な立ち姿。

    「郚掻」

    「おう、今から」

    そのやり取りが終わるより早く。

    「おひな、どうだった喋ったか」

    圓然のように、蒌倪の背埌から、もう䞀人が珟れた。

    「   っ」

    その瞬間、頭の䞭で、点ず点が䞀気に線になる。

    「あヌヌヌヌ忘れおたヌヌヌ」

    校舎に響く絶叫。

    「はあぁぁぁ」

    朔也の声が、呆れたように響き枡った。

    「だっおお前、さっき図曞宀向かっおなかったか」

    「いや、行ったよ行ったのよ図曞宀には」

    「先茩には䌚えたの」

    「うん、䌚えたの」

    「それで䜕で忘れんだよっバカ」

    胞に突き刺さる盎球。
    陜向は芖線を泳がせ、曖昧に笑う。

    「いや そのぉ〜 たぁこれには色々ず ありたしお」

    「ねぇよくそ短期蚘憶障害」

    その蚀葉に、空気が䞀瞬、ピリッず匵り぀めた。

    「おい朔也、陜向はそヌゆう特性なんだろそんな蚀い方すんなよ」

    蒌倪の声は䜎くお、穏やかだった。
    荒れかけた空気を、静かに抌し戻すような響き。

    「   ハりス」

    「え」

    唐突に、朔也が指を突き出した。
    たるで犬に指瀺を出すみたいに、図曞宀の方向を瀺す。

    「図曞宀ぞ、ハりス」

    「えぇっ死ぬ死ぬ死ぬ」

    喉がきゅっず瞮む。
    心臓が、たた隒ぎ出す。

    「お前、掚しぞ瀌儀を欠くのかよ。最䜎だな」

    「 ゔ   っ」

    蚀い返せない。
    ぐうの音も出ない。

    二人のやり取りを芋おいた蒌倪が、フン─ず小さく錻から息を吐いた。

    「   陜向。」

    静かな声で、名前を呌ばれた。

    「緊匵するのはわかるけど、萜ずした生埒手垳、先茩に届けお貰ったんだろそれでその埌も頻繁に顔合わせお、そんな倧事なものを拟っお届けおやった盞手から䜕のひず蚀も無くおシレッずされるっお 逆の立堎からしたらどうだ」

    蚀葉は淡々ずしおいるのに、逃げ堎がない。
    陜向の胞に、ずしりず重みが萜ちる。

    「 確かに   」

    小さく、玠盎な声。

    「恋だのなんだのは関係ない。これは道理の問題だ。最埌たでちゃんず人ずしおの筋を通せ。」

    その䞀蚀は、真っ盎ぐで、誀魔化しがなかった。

    パチパチパチパチ

    突然の拍手。

    「よっ歊士道粟神什和の䟍ずはこの男」

    茶化す朔也の声が、やけに明るく響く。
    その暪で、陜向は芳念したように肩を萜ずした。

    「 わかったよ 戻るよ  」

    俯いた陜向の肩に、そっず手が眮かれた。
    枩かくお、倧きな手。

    「偉いな。頑匵れよ。」

    さっきたでの厳栌さが嘘みたいに、蒌倪は柔らかく笑っおいた。

    「勇気出しお雲を突き砎ったら、芋えおくる景色があるっおな。」

    その笑顔に、胞の奥がじんず熱くなる。

    「うん っ頑匵るっ」

    陜向は顔を䞊げ、深く息を吞った。

    恐い。
    緊匵する。
    逃げたい。

    それでも。

    誰かが背䞭を抌しおくれた今なら、ほんの䞀歩くらい、螏み出せる気がした。



    陜向は再び、図曞宀の前に立぀。
    倧きく深呌吞をしお、意を決しお図曞宀の扉を勢いよく開いた。

    よしっ行くぞ

    ガラッ

    「   」

    柔らかな光の䞭で、本を開いおいた俊茔は、すぐに顔を䞊げた。
    䞀瞬だけ、芖線がこちらを捉える。

    「   っ」

    陜向は䞀瞬固たる。

    陜向は、歯の奥を噛み締めるようにしお、緊匵を振り払った。
    芖線は俊茔を真っ盎ぐに捉えたたた、ズンズンず窓際の垭ぞ匷く歩みを進めた。

    「 あの  っ」

    近くに立぀ず、途端に目を芋れなくなった。
    制服のネクタむあたりに芖線を眮いお、勇気の声を振り絞った。

    「 生埒手垳を届けお頂き  ありがずうございたしたっ」

    声が思ったより倧きく出た。
    勢いそのたた、ガバッず頭を90床に䞋げる。
    頭の䞭が真っ癜で、䜕も考えられなくなった。



    ──その瞬間。


    俊茔の優しくお柔らかい響きが、陜向の頭の䞊に降っおきた。




    「     意衚を぀く子だなぁ  」




    思考が䞀拍遅れる。

    俊茔の口から出おきた予想倖の蚀葉に、陜向は恐る恐る顔を䞊げた。

    「君が 生埒手垳の写真の、星野陜向さん」

    ズドギュヌヌヌンッッッッ

    名字だけじゃない。
    名前だけでもない。
    フルネヌム。

    確かに生埒手垳の写真は入孊埌すぐに撮圱されたもの。
    その顔は、今の自分の芋た目ずは別人のようなモブ女。
    脳が悲鳎を䞊げる。

    「4月の最初に図曞宀来おた子が、最近来なくなっお違う子が来るようになったなぁっお思っおたんだけど 」

      え 

    認識  しおた  

    そんなこず、ある
    掚しが
    自分を

    「 え っだ あ の っう っ」

    陜向の頭は倧パニック。

    そんな陜向ぞトドメを刺すかのように、俊茔は優しくにっこりず眩しい笑顔を芋せた。



    「むメチェンしたんだね。同じ子だっおわからなかったよ」




    ピヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ心停止音




    笑顔が、優しすぎお、盎芖できない。
    声が、柔らかすぎお、耐えられない。
    胞の奥が、きゅっず掎たれお、呌吞が止たりそうになる。



    死んだ。



    「倱瀌したすっっっっ」

    ドビュヌヌン

    陜向は嵐みたいに螵を返し、そのたた図曞宀から逃走した。

    「 逃げちゃった   」

    図曞宀には、困ったような優しい顔で埮笑む俊茔の独り蚀がポツリず萜ちた。




    廊䞋に出た瞬間、空気が冷たい。

    やばい
    やばい
    やばい
    やばい

    陜向は廊䞋を猛スピヌドで走りながら、党身から汗が吹き出しおいた。
    心臓が、完党厩壊状態に暎れおいる。

    先茩に   




    認知された




    こうしお陜向はめでたく無事に、朔也の地獄の特蚓远加メニュヌからようやく解攟された。




    今日も、先茩はモテおいる。

    人だかり。
    女子の笑い声。
    少し高く匟んだ空気。

    陜向は、校舎から䜓育通ぞ向かう枡り廊䞋を歩きながら、校舎裏口付近のざわめきに気づいた。
    その䞭心にいる人物を芋぀けた瞬間、胞の奥が、きゅっず鳎る。


    ──あ。


    俊茔だった。

    数人の女子に囲たれお、穏やかに笑いながら話しおいる。


    あぁ  。
    䜕お眩しいんだ。
    もはや神々しい。


    光の圓たり方さえ、他の人ずは違っお芋える。
    図曞宀以倖の堎所で、偶然先茩をお目にかかれるずは。
    ただそれだけで、今日䞀日分の運を䜿い切った気分になる。
    なんおこの䞊無い幞せなんだろう。
    神様ありがずうございたす。
    この玠晎らしい今日に感謝したす。

    胞の奥がいっぱいになっお、理由もなく手を合わせたくなる。


    取り敢えず拝んでおこう。


    陜向は俊茔の方ぞ向きながら、そっず目を閉じお、䞡手を顔の前で合わせた。

    「おい、なに拝んでんだよ。」

    呆れたような声が、すぐ隣から萜ちおくる。

    「芋ればわかるでしょ。先茩に拝んでんの。」

    朔也のツッコミに、陜向は目を閉じたたた、䜕の迷いもなく答えた。

    あの、図曞宀での䞀件以来。

    俊茔は、図曞宀で陜向に䌚うず、必ず穏やかに笑いかけおくれるようになった。
    それは、誰にでも向けるような、瀌儀正しい笑顔。
    特別じゃないず、分かっおいるはずの笑顔。

    それでも。

    陜向はその眩しさに、毎回䞀瞬で撃ち抜かれおしたう。
    息が止たり、心臓が暎れ、身䜓が勝手に硬盎する。

    そしお結局、俊茔から䞀番遠く離れた垭ぞず逃げ蟌んで、本を開いたふりをしながら、胞の内偎で嵐を起こす日々だった。

    「拝んでる堎合じゃねヌだろあれが目に入らねぇのかよ、すんげヌモテおんぞ。劬かないの」

    「たさか先茩はリアコじゃないの私、同担拒吊じゃないもヌん」

    即答だった。
    揺らぎも、迷いもない。

    「リアコ なに同担」

    「リアル恋しおるっお事同担は同じファンの子だよ」

    それだけ蚀っお、陜向はくるりず螵を返し、䜓育通の方ぞ歩き出した。
    その背䞭は軜くお、どこか晎れやかだった。

    「 はなんだよそれ」

    取り残された朔也は、思わず眉を寄せる。


    あのひなが。
    せっかく䞉次元の男にようやく目芚めおくれたず思ったのに。
    それをしめたず利甚しお、せっかくここたで苊劎しお芋た目もなんずかマシになっおくれたっおのに。
    今じゃすっかり、陜キャ䞀軍の女子の茪にも入っおくれお。

    ここたで来たら、䜕かが倉わるず思っおいた。

    党お順調だったはずなのに 



    リアコじゃないだず



    それじゃあ結局、䜕も倉わっおないのず同じじゃねヌか。

    胞の奥に、ちくりずしたものが残る。
    理由の分からない、䞍快感。

    朔也は、自分がむラ぀いおいる事に、遅れお気づいた。

    無意識に芖線が、裏口の方ぞ戻る。
    女子に囲たれ、盞倉わらず穏やかに笑っおいる俊茔。

    遠すぎるんだ。
    あたりにも。

    䞖界が違う。

    ひなの事だ。
    生埒手垳のお瀌以来、ろくに䌚話なんお出来おないに決たっおる。

    せめおもう䞀歩。
    でなければ、ひなはずおも珟実の恋愛感情なんかに目を向けおくれない。
    もう少しだけでも、藀厎先茩ずの距離を近づけられたなら。


    そこたで考えお、朔也はふず立ち止たる。

    んおか俺、なんでこんなにあんなや぀を必死で倉えようずしおんだ

    「た、俺は優しい男だったっお事だな。」

    ポツリず零したその独り蚀は、誰に向けたものでもなく、たるで自分の奥底に朜む無意識ぞ、蚀い聞かせるみたいだった。





    䞖間はもうすぐゎヌルデンりィヌク。
    担任がい぀も通りの調子でプリントを䞀枚、配り始めた。

    「えヌ5月25日に生埒䌚圹員総遞挙がありたす。立候補したい人、掚薊したい人は担任たで教えおください。」

    その蚀葉が、教宀に萜ちた瞬間。

    「  」

    朔也の頭の䞭で、たるでスむッチが入ったみたいに、䞖界が切り替わった。

    “生埒䌚圹員総遞挙”

    その文字を芋た瞬間、脳内で電球が、ピコンず音を立おお点灯した。

    これだヌヌヌヌヌヌ

    ホヌムルヌムが終わるチャむムを埅぀䜙裕すらなく、朔也は怅子を蹎るように立ち䞊がる。

    ガラッ

    教宀の扉が、勢いよく開いた。
    そしお次の瞬間には、䞀幎二組の教宀ぞ、無遠慮にズカズカず䟵入しおいた。

    「ひなちょっず」

    そのたた、グむッず腕を掎んだ。

    「え、ちょ、なに  」

    逆の手には、さっき配られたばかりのプリント。
    そのたた、教宀の倖ぞ。

    「先生ヌ先生ヌ」

    廊䞋に、朔也の声がやけに倧きく響いた。

    「どうした黒川」

    担任が振り返る。

    芖線が集たる。
    空気が、匵り぀める。

    朔也は、䞀瞬もためらわずにプリントを掲げた。



    「星野陜向、生埒䌚圹員総遞挙に立候補したす掚薊者、俺」



    その瞬間。
    䞖界が、ひっくり返った。

    「えええええぇぇぇぇぇ」

    陜向の悲鳎が、廊䞋に、教宀に、孊校䞭に響き枡る。

    胞が凍る。
    頭が真っ癜になる。
    理解が远い぀かない。

    その隣で。

    朔也だけが、劙に晎れやかな顔をしおいた。



    昌䌑みの廊䞋は、今日も隒がしかった。
    賌買、孊食ぞ急ぐ生埒たちの足音。
    笑い声。

    その流れを切り裂くように、ひずきわ必死な足取りで走る圱があった。

    迷いのない歩幅で前だけを芋お進む朔也の背䞭を、陜向は半歩遅れお远いかけおいた。

    「ちょっずちょっず朔也総遞挙に立候補っおどヌゆう぀もり私なんお、別に成瞟優秀でもないし人望もないし、だいたい私は陰キャで根暗で人前に出るのずか苊手なのそもそも立候補したずころで私が圓遞するわけないのに䜕考えおるのちょっず朔也ねぇ、朔也っおば」

    賌買の列が芋え始めた、その手前で朔也は、ようやく足を止めた。
    真正面から、真っ盎ぐ。

    「お前なぁ倖芋倚少倉わっお芋た目少しゃマシになったっおのに䞭身はブスのたんただなお前のどこが陰キャで根暗なんだよ自分に自信も持おねヌようなそんな奎、䞀生藀厎先茩になんか振り向いお貰えねヌからな」

    蚀葉が、容赊なく胞に突き刺さる。

    「だ だから  リアコじゃないっお 」

    その瞬間。

    ビシッ

    朔也の人差し指が、真正面から陜向を指した。

    「俺が、䜕がなんでも絶察にお前を生埒䌚圹員に攟り蟌んでやる」

    その手が、今床は拳になっお匷く握られる。

    そしお倩井ぞ向かっお、高く。
    たるで宣蚀みたいに。



    「名付けお生埒䌚圹員になっお先茩をリアコにしようぜ倧䜜戊だヌヌヌヌヌ」



    廊䞋のざわめきの䞭で、その声だけがやけに響いた。

    陜向は、呆然ず立ち尜くす。

    怖い。
    無理過ぎる。
    ありえない。



    ゎヌルデンりィヌクの倧型連䌑。

    「たヌお前は数字が党く駄目だから䌚蚈は無理。なるずしたら曞蚘っおずころだろうな」

    「私も自分でそう思う。」

    朔也の声に、陜向はペンを握ったたた小さく答えた。

    「だからこう、キャッチコピヌは品行方正な文孊生埒っお感じのや぀がいいよな」

    「文孊生埒ではあるけど、品行方正は掛け離れおるような  」

    「それっぜく芋せろっお事だよバカ」

    二人は䞊んでテヌブルに座り、遞挙ポスタヌ䜜りに励んでいた。

    「あずは公玄かぁヌ ありがちじゃない方が良いよなぁ」

    「孊校をもっず楜しく」

    「なんだよそれ、小孊生かよ」

    「えヌ みんなが笑顔になれる孊校にしたす」

    「お前、公玄っお蚀うのはそヌゆう事じゃなくお、具䜓的にどんな取組みをしたすっおいう仕事内容みたいな事を玄束すんだよ」

    「えヌ難しいよヌ」

    「じゃあ、ひなは 楜しくおみんなが笑顔になれる孊校にしたいっお思っおるっお事だよなその為に、うヌん 具䜓的に䜕をすっかだよな 」

    「あ、それだったら ──」

    少しず぀、少しず぀。
    蚀葉が圢になっおいく。

    連䌑䞭、二人はその勢いのたた、挔説スピヌチにも取り組んだ。
    文章を考え、曞き盎し、声に出しお読み、芚える。
    生埒䌚圹員総遞挙ぞ向けお、党力投球の日々。

    バシィッ

    鋭い音が、リビングに響く。

    「もっず声匵れぃ」

    朔也は、なぜか圓たり前のように竹刀を持ち出し、床をバシバシずしばいおいた。

    「だから いちいちその竹刀持ち出しおくんのやめろっ」

    「腹から声出せ腹から」

    完党に剣道郚のノリだった。

    そうこうしおいるうちに。
    気づけば、ゎヌルデンりィヌクは、あっずいう間に終わっおいった。





    五月䞊旬のずある朝。

    「 うわ  これは   やばい   」

    昇降口には、遞挙ポスタヌ掲瀺板が堂々たる存圚感で蚭眮されおいる。
    その呚囲には、すでに人だかり。

    そしお、それだけじゃなかった。

    廊䞋。
    職員宀前。
    生埒䌚宀前。

    校内の至るずころに、立候補者の遞挙ポスタヌが匵り巡らされおいる。

    「我ながら、なかなか䞊出来だな」

    隣で同じように掲瀺板を芋䞊げおいた朔也が、腕を組み、満足げに蚀った。

    その時。

    「陜向〜朔也〜おっはよヌ」

    背埌から、ぱっず空気を明るくする声。
    振り返るより早く、咲が陜向の腕に絡み぀いおきた。

    「ねヌポスタヌちょヌ良いじゃん陜向めっちゃ盛れおない加工した」

    「するわけないでしょっでもメむクはバッチリしずいた」

    「た、カメラマンの腕だよな」

    暪から入る朔也の声。

    「え、この写真朔也が撮ったの」

    「流石だろ」

    「ナむスぅ最っ高党候補者の䞭で陜向がダントツ番可愛いっっっ」

    「咲、それは友達フィルタヌ」

    照れ隠しみたいにそう蚀いながら、陜向はもう䞀床、自分の名前が曞かれたポスタヌを芋䞊げた。



    その日の昌䌑み。
    図曞宀。

    昌䌑みの喧隒から切り離されたその堎所は、い぀もず倉わらず音が少なかった。

    陜向は、い぀ものように窓際から䞀番離れた垭に身を朜めおいた。
    背䞭を䞞め、呌吞を浅くし、“気配を消す”ずいう長幎染み぀いた癖のたた、本の文字を远っおいるふりをする。

    けれど。




    「  ポスタヌ芋たよ。星野さん、生埒䌚立候補したんだね」




    その声が、静かな氎面に䞀石を投じた。

    「   っっっ」

    心臓が、文字通り跳ね䞊がった。


    唐突に。

    先茩に、話しかけられた。

    「   〜〜〜〜〜っっっ」

    陜向はバッず本から顔を䞊げ、次の瞬間完党に固たった。

    声は出ない。
    喉が、閉じおいる。
    身䜓だけが勝手に、たるでスロヌモヌションみたいに、そ〜〜〜っず、そ〜〜〜っず䌚釈をする。

    それだけで、限界だった。

    「頑匵っおね。応揎しおるよ」

    ズドギュヌヌヌン

    蚀葉より先に、俊茔のキラキラ笑顔が勢いよく胞に突き刺さる。
    柔らかくお、たぶしくお、どうしおそんな顔でそんなこずを蚀えるのか分からない。

    「 あ  ありがずう  ございた す」

    声は、情けないほどか现い。
    それでも、必死だった。
    “返さなきゃ”ずいう䞀心で、呜を削るみたいに絞り出した。

    「星野さんっお、䞭孊で生埒䌚ずかやっおたの」

    え
    ちょ  
    埅お埅お埅お埅お。


       この䌚話、続くの


    頭の䞭で譊報が鳎り響く。
    想定倖。
    未経隓ゟヌン。
    耐久倀れロ。

    「      。」

    フリフリフリフリず。
    芖線を本に萜ずしたたた、無蚀で銖を振る事だけが粟䞀杯だった。

    「 星野さんは、本奜きなんだね。い぀もなに読んでるの」

    声が、優しい。
    先茩を芋られない。

    「 ぁ ぇっ これ ぁの  」

    蚀葉が、圢になる前に溶けおいく。

    「んなに」

    蚊の鳎くような陜向の声を、俊茔は、ちゃんず“聞こう”ずしおくれる。
    それが、怖かった。

    「  これは   ゚リオット・グレむっお 䜜家の  」

    そこたで蚀った、その瞬間。

    ガタッ

    音がした。
    俊茔が、怅子から立ち䞊がった。



    「ちょっず遠くっお声が聞こえないから、そっち座っおいい」



    無理っっっ



    ガタガタッ

    こちらぞ歩み寄ろうずする、その動きに、陜向の身䜓は反射で反応しおしたった。
    怅子から立ち䞊がり、逃げるように、䞀歩、埌退。

    「     。」

    「 はぁ   はぁ   はぁ   」

    呌吞が乱れる。
    酞玠が足りない。
    心臓が、肋骚を内偎から叩いおくる。

    ポカンずする俊茔の衚情。
    それを芋るだけで、さらに息が詰たる。

    「  僕の事   苊手だったりする」

    眉を䞋げながら困ったように、でも優しく笑う。

    その顔に、胞がぎゅうぅっず締め付けられた。

    違う。
    違うのに。
    そう蚀われるず、党郚が厩れる。

    俊茔の蚀葉が匕き金になっお、陜向の理性は完党に吹き飛んだ。

    「いやいやいやいや奜きです奜きです倧奜きなんですもう先茩があたりにも尊くお眩しくおキラキラしおお近づけないんです死ぬんですキュン死するんですっっっ」



    はっっっ



    蚀った。

    党郚。

    我に返った頃には時既に遅し。

    朔也に初めお先茩の情報をダダ挏れさせた時ず党く同じ。
    パニックになるず䜕もかも党おが口から飛び出す。
    本音ずいう名の地雷原を、自分で、党力で螏み抜いた。


    静寂。
    氞遠みたいな䞀瞬。



    「   ぷっ」



    そしお。


    「っあははははは 」



    笑った。

    穏やかで。
    冷静で。
    い぀も図曞宀の空気そのものみたいなもの静かな先茩が。



    こんな颚に。
    少幎みたいに、声を䞊げお笑う事なんおあるんだ。



    「 いやヌ  本圓、星野さんには意衚を぀かれるよ〜 」

    ただ笑いを含んだたた、柔らかく自分の名前を呌ばれる。

    それだけで胞の奥が熱くなっお、目の奥がじんず痛くなった。
    これ以䞊、ここにいたら、本圓に泣いおしたう。

    ガシッず机の䞊の本を掎み、胞にぎゅっず抱きしめる。

    陜向は、䜕も蚀えないたた、そのたた図曞宀を飛び出した。


     
     
    䌚瀟員しながら子䟛5人の子育おに奮闘し、小説の執筆掻動しおいたす 毎日のメむン執筆掻動タむムは、話し長い郚長の朝瀌䞭ず、䌚瀟の぀たんない研修䞭です♡ 連茉䞭「セカンドシヌズンヌ奜きな人を、真っ盎ぐに。ヌ」 完結たで毎日曎新したす

    あなたぞのおすすめ