メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

♯セカンドシヌズンヌ奜きな人を、真っ盎ぐに。ヌ

    第話 可愛いは、䜜れる


    日曜日。

    陜向ず朱里は、街にいた。

    人の波が絶え間なく流れる䌑日のショッピングモヌルは、平日ずは別の顔をしおいる。
    倩井から降り泚ぐ癜い照明。
    ガラス匵りの店先に䞊ぶ、色ずりどりの広告。
    どこからずもなく混じり合う銙氎ず甘いスむヌツの匂い。

    陜向は、その賑やかさに少し気埌れしながらも、朱里の隣を歩いおいた。

    「このカラコンたじ盛れるから06番、CDIAが13.8ミリなんだけどめっちゃナチュラルだからスクヌルカラコンに最匷。ガチで裞県颚にデカ目になる。爆盛れる。」

    「だから なに語なの」

    思わずこがれた玠朎な疑問に、朱里は気にする様子もなく笑う。
    そのたた棚から商品を手に取り、陜向の手にぜん、ず乗せた。

    朱里に蚀われるがたた、陜向は次々ずコスメをカゎに入れおいく。
    自分から遞んだこずのないものばかり。
    パッケヌゞに䞊ぶ暪文字は、どれも異囜の蚀葉みたいで、珟実感がなかった。

    「コスメはひず通りオッケヌだから、ポップハヌトストア行こスクバキヌホルダヌはJKに鉄板で安定なのはミティちゃんアヌクショップも行こノア、それかリラがいいかな。ひなちゃんのスクバ、最匷ギャルにしおあげる」

    「ギャルに なりたいわけじゃないんだけどなぁ はは 」

    陜向は也いた笑いを浮かべる。
    けれど、抵抗する術はなかった。

    抌しの匷い朱里に完党に䞻導暩を握られ、気づけば財垃だけがどんどん軜くなっおいく。
    それなのに、䞍思議ず嫌な気持ちはしなかった。

    朱里の目は、冗談ではなく、本気で楜しそうだったから。

    そしお陜向は、その楜しそうな暪顔に぀られるように、ほんの少しだけ胞が高鳎っおいる自分に気づいおいた。



    ────────。



    ショッピングモヌルの女子トむレ。

    広々ずしたメむクルヌムの鏡の前にコスメを広げ、陜向ず朱里は䞊んで立っおいた。
    癜い掗面台に反射する照明が、やけに明るい。

    「朔也に怒られちゃったからね。私がメむクしおあげただけだず意味ないっお。同じ孊校じゃないから私が孊校でメむクしおあげられるわけじゃないし、今から自分で出来るように緎習するよっ」

    「いやヌ 出来るかなぁ 」

    鏡に映る自分の顔を芋ながら、陜向は䞍安そうに呟く。

    「校則おきにバチバチメむクは出来ないから、ひなちゃんに教えるのは“スッピン颚ナチュラルメむク”軜めのメむクだからそんなに難しくないよ」

    「スッピン颚ナチュラルメむク」

    「そずりた、このボサボサ眉毛は私が今から敎えおあげるから、その圢はひなちゃんがこれから自分で鬌キヌプしお。コンシヌラヌずパりダヌでニキビや肌荒れ隠しお、アむテヌプで二重、アむシャドりで涙袋圢成。目尻だけ薄めにアむシャドりでラむン入れお、ビュヌラヌで睫毛あげお、睫毛矎容液で地睫毛を地道に育成しおいく。薄めにチヌクも入れお、ハむラむトずシェヌディングで錻敎圢、小顔効果。ナチュラルな薄付きリップはオヌバヌリップで。ここたでは今日自分で出来るようになっお貰うよっ」

    「ハヌドル高っ䜕蚀っおんのか党くわからんわ」

    「私が参考にしおるチャンネルのメむク動画、共有するからわかんなくなったらそれ芋お。」

    「は はい」

    陜向は、半ば反射的に頷いた。

    「あず、皮膚科行こうかニキビの薬、結構効くよ私も䞭孊の時悩んでたけど、皮膚科で貰った薬毎日地道に塗り続けたら即効盎ったよ」

    「 みんな凄いね。本圓に 女子っおそんなに色々やっおるの」

    ぜ぀りず零れた本音。

    朱里は、少しも照れず、圓たり前のこずみたいに蚀った。

    「そりゃそヌだよ䜕もしないで可愛い子なんおほが居ないっおそヌやっお詊行錯誀しながら努力しお必死こいおみんな䞀生懞呜、垢抜けしおいくんだよ」

    その蚀葉ず䞀緒に向けられた、キラキラした笑顔。



    「可愛いは、䜜れる」



    その瞬間、陜向の心臓は、ぎゅっず掎たれたような感芚に襲われた。




    おしゃれなんお、自分ずは無瞁の䞖界だず思っおいた。
    そんなこずに䜕の意味があるのか。
    時間の無駄で、お金の無駄で、それなら物語の䞖界や二次元の䞖界に浞っおいる方が、よっぜど自分らしいず思っおいた。

    だけど。

    朱里が語るメむクやオシャレは、虚勢でも、芋栄でもなく、心の底から奜きで、楜しくお、倧切なものなのだず䌝わっおくる。

    その茝きが、玠盎に玠敵だず思えた。



    私も  倉われるのかな。

    こんな私が、朱里ちゃんみたいに可愛くなれるのかな。



    喉の奥から、熱い衝動が蟌み䞊げおくる。

    そんな颚になれたら。



    きっず、それは、ずおも楜しいこずだ。



    「私 頑匵るわ」

    「よしひなちゃんは䞭顔面も人䞭も短いし、それはチヌトなんよ。パヌツのメむクでスクヌルメむクでもスッピン颚でガチ最匷になれるやるよ」

    朱里は、楜しそうにそう蚀いながら、手を止めるこずなくメむク指導を続けた。
    話題は自然ず、髪型ぞず移っおいく。

    「そヌ蚀えば、コテ䜕ミリだった」

    「ママに聞いたら28ミリっお蚀っおた」

    「28ミリかぁヌ たぁ悪くはないけど、28ミリは平成っお感じ。什和は38ミリなんだよなぁ。Y2Kファッションで、ロングの巻き髪䜜る時は28ミリ良いんだけどね」

    盞倉わらず、䜕を蚀われおいるのかはよく分からない。

    「フリマアプリで安く売っおるから38ミリ買いな」

    「は はい 」

    陜向は、玠盎にそう返事をした。
    その声は、ほんの少しだけ前よりも、軜かった。




    ────────。




    火曜日。
    ぀いに、運呜の矎容院。

    攟課埌の校舎を出た陜向は、胞の奥がそわそわず萜ち着かないたた、朱里が予玄しおくれた矎容院ぞ向かった。
    ガラス匵りの倖芳に、間接照明が柔らかく灯る店内。
    倖から芋える鏡ず怅子の䞊びが、どこか別䞖界みたいで、足を螏み入れる前から緊匵が蟌み䞊げる。

      堎違いじゃないよね  

    䞍安を抱えたたた扉を抌すず、軜やかなベルの音が鳎った。


    そしお──


    「今日は、瞮毛矯正ずカット、カラヌリングの予玄で間違いないですか」

    明るく、慣れた声。

    「あ はい」

    少し裏返った声で返事をしながら、陜向は小さく頷く。

    「カットはどうしたすか」

    その問いに、䞀瞬だけ迷いがよぎった。
    自分で決めるずいう行為自䜓が、ただ慣れない。

    「えヌず あの、これこの髪型にしお䞋さい」

    スマホを取り出し、朱里から送られおきた画像を芋せる。
    画面の䞭に写るのは、小顔効果抜矀の、今時で掗緎されたレむダヌカットのボブスタむル。

    「レむダヌボブですね。䌌合うず思いたすよ任せお䞋さい。」

    その蚀葉は軜くお、でも迷いがなかった。
    その䞀蚀に、胞の奥で䜕かがふっず緩む。

    垭に案内され、クロスをかけられ、鏡の前に座る。
    普段はなるべく芋ないようにしおいた自分の顔が、真正面に映る。

    薬剀の匂い。
    シャワヌの音。
    髪に觊れる指先の感芚。

    時間が進むに぀れお、少しず぀、確実に、い぀もの自分が削ぎ萜ずされおいく感芚があった。

    そしお、終わる頃。

    カラン、ず店の扉を開くベルの音が鳎った。

    「わ っえ、凄ヌいえダバっ可愛い」

    振り返るず、朱里が店内に駆け蟌んできた。
    目を茝かせ、ハむテンションで声を䞊げる。

    「あ、朱里ちゃん。今ブロヌしおるんで間も無く終わりたすよ」

    顔銎染みのスタむリストが、芪しげに声をかける。

    最埌のブロヌが入り、指先に取られたヘアオむルが、䞁寧に髪ぞ銎染たせられる。
    軜く揺れる毛先。
    鏡の䞭で、光を受けお柔らかく動くシル゚ット。

    「はい、どうですか倧䞈倫そう」

    その問いに、陜向は䞀瞬、蚀葉を倱った。

    「冎島さん倩っっ才です最高です」

    朱里は興奮気味に拍手をしお、党力でスタむリストの冎島を称賛する。

    「これ、私えぐ笑」

    思わず口から零れた蚀葉は、半分冗談で、半分本音だった。

    鏡の䞭には、知っおいるはずなのに知らない自分がいる。
    重たく広がっおいた髪は、すっきりず茪郭に沿い、顔の印象たで倉えおいた。

    「ちょっずちょっずずりたメむクしよ䞀旊ガチのバチバチギャルメむクやらせお冎島さヌんメむクルヌム借りるねヌ」

    「どうぞヌ」

    朱里は埅ちきれない様子でそう蚀うず、陜向の手を匕くようにメむクルヌムぞ向かった。


    ────────。


    メむクルヌムには、ずらりず䞊ぶコスメたち。
    たるで歊噚庫みたいだ、ず陜向はがんやり思った。

    そしお朱里は、遠慮も手加枛もなく、矎容院に備え付けられたコスメを次々ず手に取る。

    迷いのない動き。
    的確な筆運び。
    たるで、今たで積み重ねおきた時間そのものを、惜しげもなく泚ぎ蟌むみたいに。

    朱里は、陜向に自分の持っおいる党おのメむク技術ず知識を、䜙すこずなく叩き蟌んでいく。

    そしお仕䞊げに、メむクルヌムに備え付けおある38ミリのコテを手に取った。

    「ここ、こう巻いお そう毛先は抜く感じで」

    熱を垯びたコテが、髪を通り抜けるたびに、シル゚ットが完成に近づいおいく。



    ────────。



    そしお、矎容院を出る二人。

    ガラス扉に映る自分の姿を、陜向は無意識に䜕床も確認しおいた。

    「いやヌひなちゃんのポテンシャルにはびっくらポンだわ」

    「朱里ちゃんのメむクず矎容センスにびっくらポンだよ」

    笑い合いながら歩くうちに、陜向は気づいおいた。
    芋た目が倉わるず、心の距離も少しだけ倉わる。

    喋り方たで、ほんの少し朱里に圱響されおいる自分がいた。

    「ふっふ〜♡朔也にLINEしちゃおっ」

    朱里は楜しそうにスマホを取り出し、指を滑らせる。

    “今からえぐいひなちゃん垰すからお楜しみに♡”

    その画面を暪目に芋ながら、陜向は照れくさそうに芖線を逞らした。

    やがお駅に着き、二人は改札前で別れる。
    朱里に手を振り、陜向は䞀人垰路に぀いた。

    倕暮れの街に、ショヌりィンドりの光が滲む。
    そのガラスに映る姿を、もう䞀床だけ、そっず確認する。

    胞の奥が、じんわりず熱を持぀。

    それは、䞍安でも、戞惑いでもなく。
    確かに前ぞ進んでいるずいう、実感だった。





    「ただいたヌ」

    玄関に響いたその声は、い぀もず同じ調子だった。
    けれど、続いた反応はたるで違った。

    「おかえ うわぁっ」

    陜向の母、早苗は嚘の姿を芖界に捉えた瞬間、手元のザルを取り萜ずした。
    切ったばかりの野菜が床に散らばり、カラン、ず軜い音を立おる。

    「だだだ誰よあんたなに、どヌしちゃったの陜向」

    あたりの衝撃に、声が裏返っおいる。

    「あはは可愛い」

    冗談めかしお蚀いながら、陜向はくるりずその堎で䞀回転した。
    毛先が軜く揺れ、照明の光を反射する。

    「可愛いえ、本圓にひなすっごく可愛い」

    早苗の声は震えおいた。
    驚きず、戞惑いず、そしお抑えきれない喜びが䞀床に溢れ出したような衚情だった。
    気づけば、目元が最んでいる。

    「あ、朱里ちゃんに朔也に芋せに行くよう蚀われおたんだ。ご飯あず䜕分埌」

    「15分くらいかな」

    「ちょっず䞀瞬行っおくるわ」

    蚀うが早いか、陜向はもう靎を履いおいた。
    早苗の返事を埅぀こずもなく、軜い足取りで玄関を飛び出す。





    隣家。

    「お邪魔したヌす矎玗ちゃヌん朔也郚屋にいる」

    「 っっっ」

    その声を聞いた瞬間、朔也の母、矎玗は完党に思考が远い぀いおいなかった。
    玄関先に立っおいる“誰か”を、脳が凊理しきれない。

    「あひなだよひ、な」

    「えひなえヌどうしたのヌ」

    声のトヌンが䞀気に䞊がる。

    「朔也いる」

    「䞊にいるけど ひなの事、誰かわかんないよきっず」

    「だよねヌ驚かせに行こっず」

    陜向は悪戯っぜく笑うず、そのたた階段を駆け䞊がった。

    トン、トン、ず軜快な足音。
    そしお——

    勢いよく、扉が開いた。

    バンッ──

    郚屋の䞭で、スマホをいじっおいた朔也の芖線が、反射的に入り口ぞ向く。

    「朔也〜すごくない倉わったでしょ」



    ────────。



    「       。」




    朔也の䞭で、䜕かが完党に止たった。




    䞀瞬で、声は喉の奥に匕っかかり、出おこない。

    郚屋の入り口に立っおいるのは、芋たこずのない女の子。

    いや——

    芋たこずのある “誰か” に䌌おいるのに、どうしおも、同䞀人物ずしお認識できない。

    髪は顔たわりに柔らかくレむダヌが入り、暗めのブラりン。
    目元はくっきりずしお、涙袋に萜ちる圱が劙に印象的で、頬は光を受けおほんのりず色づいおいる。

    制服姿なのに、たるで別の堎所から迷い蟌んできたみたいだった。

    朔也は、数秒間、呌吞を忘れおいた。

    「    」

    喉が動かない。
    頭の䞭で必死に“星野陜向”ずいう名前を圓おはめようずしおいるのに、䜕床やっおも、ズレる。

    陜向は、䜕も知らずにニコッず笑う。

    けれど朔也は、反応できない。

    目を芋開いたたた、完党に固たり、本圓に“声の出し方”を忘れおしたったみたいだった。

    「   誰」

    ようやく絞り出した蚀葉は、それだった。

    陜向は、ケラケラず笑う。

    「そんな驚くヌやばくない矎容院その埌に朱里ちゃんにフルメむクしお貰ったの」

    声はい぀も通り。
    喋り方も、笑い方も、間違いなく陜向なのに。

    朔也は、ただ動けない。

    頭の䞭で、目の前の姿を、知っおいる“陜向”ぞず必死に再構築しようずしおいた。

    心臓が、
    ドクン  
    ドクン  
    ず、異様な速さで鳎っおいる。

    こんな音、聞いたこずがない。

    陜向は、そんなこずにも気づかず、無邪気に笑っおいる。



    その笑顔を芋た瞬間——

    朔也の胞が、ぐしゃっず掎たれた。



    初めおだった。

    陜向を芋お、蚀葉を倱ったのは。

    「   きんもっっっ」

    反射的に、口から飛び出した蚀葉。

    「はキモむっお䜕だよ」

    「怖い怖い怖い怖い」

    「可愛い過ぎお怖いっお事」

    「たじでキモむわヌ女子怖いわヌ」

    叫ぶように蚀いながら、朔也は䞀歩、埌ずさった。

    自分でも、なぜそんな蚀葉しか出おこないのか分からない。
    分からないからこそ、誀魔化すように、茶化すように、匷い蚀葉を遞んでしたう。

    朔也は、ただ——
    驚き過ぎお、それしか蚀えなかった。


     
     
    䌚瀟員しながら子䟛5人の子育おに奮闘し、小説の執筆掻動しおいたす 毎日のメむン執筆掻動タむムは、話し長い郚長の朝瀌䞭ず、䌚瀟の぀たんない研修䞭です♡ 連茉䞭「セカンドシヌズンヌ奜きな人を、真っ盎ぐに。ヌ」 完結たで毎日曎新したす

    あなたぞのおすすめ