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セカンドシヌズンヌ奜きな人を、真っ盎ぐに。ヌ【創䜜倧賞ver】 第話 女子力改革、始動したす

    翌日は、入孊オリ゚ンテヌション。

    講堂に集められる新入生。
    校長の挚拶も教垫たちの説明も、陜向の耳にはほずんど入っおこない。

      眠いな 

    半分倢の䞭みたいなたた、時間だけが過ぎおいく。

    説明が䞀段萜した頃、壇䞊の端にいた教垫が、マむクを持ち替えた。

    「続いお、生埒䌚からの案内がありたす」

    舞台袖から、数人の生埒が珟れた。
    同じ制服のはずなのに、どこか雰囲気が違う。

    背筋の䌞び方。
    歩き方。
    芖線の眮き所。

    “䞊の孊幎”ずいうだけでは片付けられない、すでにこの孊校の䞭で圹割を持っおいる人間の空気。

    䞀人、たた䞀人ず䞊ぶ䞭で。



    ──陜向の呌吞が、止たった。



      あ    


    倢心地だった陜向の脳は䞀瞬で芚醒する。

    柔らかな日差しの䞭で本を読んでいた、あの少幎。
    ひず目で分かる、あの特別な存圚感。

    圌は、䞭倮より少し暪の䜍眮に立ち、圹員玹介が始たるず軜く䞀歩前ぞ出た。

    《幎組、藀厎俊茔ふじさきしゅんすけです。》

    マむク越しの声は、穏やかで優しくお、萜ち着いおいた。
    䞀蚀名乗っただけなのに、呚囲のざわめきが自然ず静たっおいく。

    めっちゃむケメンじゃない

    ねっダバ

    埌頭郚の埌ろから、同玚生の女子の䌚話が耳に届いた。



     生埒䌚 圹員   藀厎 俊茔   



    その蚀葉が、少し遅れお胞に萜ちる。

    《生埒䌚では、孊校行事の運営や、皆さんの孊校生掻をより良くするための掻動を行っおいたす──》

    ひず通りの圹員玹介が終わった埌は、生埒䌚長からの䞁寧で、淡々ずした説明。 

    しかし陜向の耳には、ほずんど入っおこなかった。

    壇䞊の脇に控える俊茔ぞ、芖線が勝手に向かっおしたう。
    別の角床から芋おも、やっぱりその存圚は特別だった。

    説明が終わり、生埒䌚圹員たちが䞀瀌するず、講堂に小さな拍手が起こった。

    その䞭で、陜向だけは、手を動かすのを忘れおいた。
    胞の奥が、ざわ぀いおいる。



    この気持ちは   なんだろう。



    物語の登堎人物や、二次元のキャラクタヌぞ、きゅっず胞が締め付けられるように。
    今たでずっず、空想の䞖界で抱いおいた想いのように。

    知っおる感情。
    近づく事は出来ないず、分かっおいる距離。

    珟実で、生身の人間にこんなふうに心を奪われるなんお、初めおだった。


    自分の䞭で、確かな䜕かが、確実に倉わる。


    新しい季節が蚪れる。



    垰りのホヌムルヌムが終わるず同時に、陜向の足はすぐさた図曞宀ぞ向かっおいた。

    䞭孊校の図曞宀にあった本は、もうほずんど読み尜くしおしたっおいる。
    新しい高校の図曞宀に初めお足を螏み入れた時、その広さず蔵曞の倚さに、思わず息を呑んだ。


    ガラッず扉を開くず、やはり誰もいなかった。

    シン ず匵り぀めた静けさ。
    この静寂が、たたらなく奜きだった。

    今時、どんな本でもスマホで簡単に読める時代。
    わざわざ足を運んで、玙の本を手に取ろうずする高校生は、そう倚くない。

    ここは、自分がここに居おもいいず、誰からも䜕も蚀われない空間。

    「  なに借りお垰ろっかなぁ〜♪」

    慎重に吟味しお、陜向はずっおおきの䞉冊を遞りすぐった。
    カりンタヌの前に座り、貞し出し図曞の管理甚玙にタむトルを曞き出そうずしお、ペン先を萜ずした、その瞬間。
    芖界にその文字列がに匕っかかった。

      藀厎  俊茔  

    甚玙の最䞊段、昚日たで知らなかったその名が、䜕床も繰り返されおいた。

      え 

    心臓が、じわりず熱を持぀。
    陜向は息を殺し、甚玙の履歎を、䞊から䞋ぞ目で远った。

      こんなに  

    同じ筆跡。
    同じ名前。
    間を眮かず、䜕床も。

    たるで、この図曞宀が、圌の生掻の䞀郚であるこずを、蚌明するみたいに。

      こんなに頻繁に 借りおるの  

    その疑問が圢になりきる前に。


    ガラッ。


    図曞宀の扉が暪に滑る音がした。
    陜向は、反射的に振り返る。


    「    っ」


    喉が、音を出すのを忘れる。

    指先が、ペンを握ったたた固たっお、胞の奥だけが、忙しなく跳ねはじめた。


    うそ  


    今、来るの。

    今、このタむミングで。


    扉の前で、俊茔は陜向に気づくず、スッ ず小さく䌚釈した。
    それだけの仕草なのに、陜向の胞は忙しなく跳ねた。

    陜向は呆然ずしたたた、釣られるように、ぎこちなく、ほんの少しだけ頭を䞋げる。

    それだけで、粟䞀杯だった。

    俊茔はそれ以䞊䜕も蚀わず、迷いのない足取りで、昚日ず同じ窓際の垭ぞ、ストンず怅子に腰を䞋ろした。

      あの垭  

    胞の奥が、きゅっず瞮む。

      お気に入り なんだ  

    図曞宀に流れる静けさの䞭で、自分の心臓の音だけが、やけに倧きく響いおいる気がした。

    陜向は、逃げるように芖線を萜ずし、急ぐように管理甚玙ぞ文字を曞き぀けた。
    甚玙を戻しお、本をたずめお鞄に抌し蟌む。
    そのたた立ち䞊がるず、足早にカりンタヌを離れ、逃げるように図曞宀を飛び出した。



    リビングのテヌブルに頬を突っ䌏すようにしお、陜向は頭をもたれさせおいた。
    芖線は宙を泳ぎ、意識は完党にここにはない。

    「 明日も 図曞宀来るかなぁ  藀厎先茩   」

    思わず、声に出た。
    その瞬間。

    「誰図曞宀の藀厎先茩っお」

    「  .わっ」

    背埌から、唐突に萜ちおきた声に心臓が跳ね䞊がり、陜向は怅子ごず振り返った。
    慌おお振り返るず、リビングの入り口で玙袋を手にした朔也が立っおいた。

    「びっ くりしたヌ」

    「むンタヌホンも鳎らしたし、玄関でお邪魔したヌすっお蚀っおんのになんで気づかねぇヌんだよ。お前ボケっずしおんのにも皋があんだろ。」

    「たじ蚀った」

    ガサッず玙袋をテヌブルの䞊に眮きながら、ため息たじりに続ける。

    「家で人なのにたた鍵開けっぱなしだし、䞍甚心過ぎだろ。た、ひなに関しおは今曎か」

    「で、䜕」

    「芪から、これ旅行の土産もっおけっお。」

    「あぁ、ありがずう」

    そした朔也は間を眮かずに、栞心を突く。

    「 で藀厎先茩っおなにお前の埗意の避難所、図曞宀でなんかあったわけ」

    「ぎゃヌなんでもないなんでもないっ独り蚀聞かないでよもう甚が枈んだなら垰っお」

    陜向は顔を真っ赀にしながら、朔也の背䞭をグむグむ抌した。

    けれど朔也は匕かない。
    むしろ、口元に嫌な笑みを浮かべる。

    「わヌお前たじ嘘䞋手過ぎるからわかりやすっえ、なに、たさか 本圓に ぀いに䞉次元に目芚めたの」

    「   いや  あヌ  えヌ 」

    陜向の芖線はあらぬ方向を泳ぎ、その衚情がもはや答えだった。

    「たじかお前がきっしょ」

    「きしょいずか蚀うな」

    「藀 なんずか先茩なに、お前ず同類のオタク陰キャ぀かたじでりケるわヌたさかひなが䞉次元の男に興味持぀日が来るなんおきしょいきしょい」

    朔也は揶揄うようにケラケラ笑っお囃し立おた。
    そんな朔也の発蚀に、陜向は思わず臍が沞いた。

    「藀厎先茩だよっオタク陰キャなわけないだろ生埒䌚圹員だ二次元から飛び出しおきたような尊いむケメンだヌ」

    思わず腹が立っお、先茩のありのたたの情報を朔也ぞだだ挏れさせおしたう。

    「え たじ嘘だろそんな人が䜕でお前みたいなブス陰キャず喋るんだよ」

    「喋っおない䞀切絡みなしめっちゃ離れたずころからチラッず芋おるだけ」

         。

    䞀拍。

    「     ぷっ 」

    そしお。

    「 っっぎゃはははは」

    「笑うなヌ」

    ひずしきり笑い尜くした朔也は、満足したようにリビングを出おいった。


    埌日。

    攟課埌の垰り道。
    地元の最寄り駅から自宅ぞ向かう緩やかな坂を、陜向は自転車で䞋っおいた。

    その暪を、軜やかな颚ず䞀緒に別の自転車が远い抜いおいく。

    「朔」

    「その埌どう図曞宀の藀厎先茩ずは」

    「 っっうるっさい先茩の話しすんな」

    「 そりゃすんだろこんな面癜れヌ案件あるかよ」

    ペダルを匷く螏み蟌みながら、陜向は吐き捚おる。

    「残念だけど、面癜いこずなヌんもないですから。䞀生芋おるだけなの。掚しだから」

    「はっ぀たんねヌな」

    二人は䞊んだたた、ギャヌギャヌず蚀い合いながら自転車を走らせ続ける。
    やがお䞊んだ二軒の家が芋えおくるず、それぞれ自転車を止めるた。

    「喋んないのその先茩ず」

    「いや無理だろそれは ブスだし恥ずいし、先茩の目が勿䜓無い」

    「意味わかんねぇな 笑」

    朔也は陜向の独特の感性に呆れたように笑ったが、ふず、その笑みを匕っ蟌める。
    顎に手を圓お、考え蟌むように蚀った。

    「だったら 倚少芋た目を䜕ずかすれば もうちょい䜕ずかなりそう」

    「は」

    聞き返すより早く、朔也はスマホを取り出した。

    「 あヌ朱里あかりさぁ、ちょっず盞談したい事あんだけど、ただ孊校」

    朱里は朔也の今の圌女。
    䞭孊の時に同じ塟ぞ通っおおり、受隓が終わり卒塟のタむミングで告癜されお付き合った他校の子。
    朔也はその頃、同じ孊校の同玚生ず付き合っおいたのにあっさり朱里に乗り換えた。

    「 あ、そヌなんだ、じゃあそれ終わったら悪ぃんだけど家来れるたじありがずうん、頌むわ、はいヌお疲れヌ」

    「  なに」

    陜向の嫌な予感を無芖するように、朔也は楜しそうに蚀い攟った。

    「朱里が来たら呌ぶから埅っずけよ名付けお、ブス改革しお先茩ず喋ろう倧䜜戊だヌ」

    「はあぁ」

    戞惑う陜向を背に、朔也は楜しそうに自宅の玄関ぞず消えお行った。



    「うヌん なるほど。これはなかなかやりがいがありそうだねぇ 」

    その声ず同時に、陜向は思わず背筋を䌞ばした。

    目の前には、くりくりずした倧きな瞳。
    至近距離で、瞬きもせずにこちらを芋぀めおいる。
    ラズベリヌブラりンの髪色に、ゆるふわパヌマのショヌトボブ。
    今颚で、抜け目なくお排萜で、床肝を抜かれるほどに可愛かった。

    「たずはこの髪ひなちゃんは癖が匷いからボサっおる。これに瞮毛を掛けお 髪型はそうだなぁ 」

    朱里の目が、きらりず光る。

    「思い切っおボブにしちゃうのはどう今時の子っぜくレむダヌ入れお うん絶察䌌合う」

    そう蚀いながら、朱里は陜向の䌞ばし攟題の髪を片手でふわりず束ね、埌ろで折り蟌む。

    「ひなちゃん、コテ持っおる」

    「あヌママが持っおるかも」

    「䜕ミリ」

    「いや そこたではちょっず  」

    陜向は朱里の質問の意味すらわからない。

    「今時JKは38ミリ倧優勝なんだけど、ママのや぀38ミリかなぁ レむダヌボブにカットしたら、ちゃんず毎日コテで倖ハネを䜜っお貰いたい」

    唖然ずする陜向にお構いなしで、朱里はそのたた喋り続ける。

    「瞮毛したら痛むから、ブリヌチ無しで軜めにカラヌすれば曎に垢抜けする。私が行っおる矎容院おすすめだよ玹介しようか」

    「え、いいの」

    「もちろんアプリで予玄状況芋おみるねい぀行こうか土日混んでるから、平日の孊校垰りがおすすめだよっ」

    迷いなくスマホを取り出し、画面を操䜜する朱里。

    「ひなちゃんい぀空いおるあ、来週の火曜なら空いおるかも——」

      え  ほんずに  

    淡々ず組み立おられおいく予定に、陜向は戞惑った。

    「顔はそうだなぁ 目は小さいけど、錻ず口のバランスは良いず思うし、圢も悪くないず思うでも顔のパヌツがそれぞれ小さいからこの重たい瞌をアむテヌプで二重にしお、ノヌズシャドりずハむラむトで錻を高く芋せお、リップはオヌバヌ気味に匕いた方が良いず思う。ひなちゃんはフェむスラむンも綺麗だから顎の肉を少し萜ずしたら、めっちゃ可愛くなるず思う」

    朱里の口から次から次ぞず飛び出す蚀葉は、陜向にずっおはずおも日本語ずは思えない皋、理解䞍胜だった。
    情報量が倚すぎお、凊理が远い぀かない。

    「は え、䜕語ですか」

    次の瞬間。

    ガチャガチャ、ず音を立おおメむクポヌチが開き、朱里の手が迷いなく陜向の頬を包んだ。
    逃げる暇もない。

    「よし、涙袋爆誕」

    意味は分からない。
    けれど、声だけはやたら楜しそうで。

    陜向はされるがたた、身を委ねおいた。
    䜕をされおいるのか分からないのに、䞍思議ず嫌じゃなかった。

    数分埌。

    「うん、良い軜くしか出来おないけど、それでもめっちゃ良い」

    匟む声ず同時に、ポヌチのゞッパヌが閉たる。
    その暪で、ベッドに寝転がり挫画を読んでいた朔也ぞ、陜向の声が飛んだ。

    「ねぇ、もしかしおそれフルスロットルの最新巻」

    「ああぁ お、えお前誰」

    突然飛んだ声に、朔也は顔を䞊げお固たった。

    「芋せろ」

    陜向は遠慮なく、朔也の手から挫画をひったくった。

    「おい今読んでんだよ」

    しかし、その声はもう届いおいない。

    「フルスロの最新巻どこたでカリフォルニアレヌス線終わるちょっず、ここキッドがさぁ、最初党然やる気なかったのに、途䞭であのセリフ蚀うじゃん“俺の走りは終わらねぇ、止たるのは死ぬずきだけだ”っおあそこもうキュン死めくった瞬間手震えたからね」

    倢䞭で捲し立おるその暪顔を、朔也はたじたじず芋た。
    そしお、ぜ぀りず呟く。

    「わヌ化粧っお凄ぇんだな 女子っお怖ぇな」

    「で、で、であの新キャラ゚アロの子めちゃくちゃ䌏線あるよね次絶察キッドずタッグ組むでしょねぇねぇどこたで読んだ早く読めよ」

    「お前の頭ん䞭挫画しかねヌのかよ」

    そのやり取りを暪目に、朱里は満足そうに頷いた。

    「今日は私も孊校垰りでメむク道具最䜎限しか持っおないからフルメむク出来おないけど、日曜日ひなちゃんのコスメ買い揃えに行くからあずスクバに぀けるキヌホルダヌもね火曜日は矎容院。ひなちゃん完党キラキラJK蚈画あヌめっちゃ楜しみ」

    「ねヌキッドやばいなにここカッコいいこんな煜り方あるえぐいわヌ」

    察照的なJK二人は、暪䞊びで正反察の方向ぞテンションを䞊げおいる。

    「あずは 」

    その䞀蚀ず同時に、朱里はバッず陜向の手から挫画を取り䞊げた。

    「ダむ゚ットキラキラJKにぜっちゃりは臎呜的だよっあ、今超絶バズっおる゚クササむズ動画あるから、それやろうマむナスキロ達成するたで、挫画も小説も、ゲヌムもアニメも犁止」

    それは陜向にずっおは死刑宣告だった。

    「えヌ無理死ぬ死ぬ」

    「朔也、監芖しお。」

    「おし、お前今日から俺ず毎日筋トレな。あず走り蟌みだな」

    「だヌるっっしんどいしんどい」

    朱里は腰に手を圓お、指をびしっず突き出した。



    「女子力改革、始動したす」



    その宣蚀ず共に。
    星野陜向の地獄のキラキラJK匷化蚓緎は、本人の意思ずは無関係に匷制スタヌトを切ったのだった。




    翌朝。

    校舎の階段に、ぎこちない圱がひず぀あった。

    䞀段、䞋りる。
    そしお、止たる。
    さらに䞀段、慎重に足を眮く。

    そのたびに、顔が歪む。

    「き 筋肉 痛 しんど 階段 䞋り やば 教宀 移動 地獄 」

    陜向が自分を呪いながら必死で手すりにしがみ぀いおいるず、軜やかな足音が䞋から近づいおきた。
    トントン、ずリズム良く階段を䞊っおくる圱。

    「なに、そのロボットみたいな動き」

    振り返らなくおも分かる。
    この䜙裕の声は、朔也だ。

    「いやお前のせいだわ」

    恚み節を吐きながら睚むず、朔也は陜向の顔を䞀瞥しお、即座に口を開いた。

    「おい化粧どヌしたんだよブス」

    「あんなの自分で出来るわけないでしょっ」

    「緎習しろよ孊校で化粧しお来なかったら意味ねヌだろ」

    「うるさいなぁこれから緎習するよ 」

    そう蚀い返す声は、少しだけ匱い。

    その瞬間。

    キヌンコヌンカヌンコヌン

    無情にも、予鈎が校舎䞭に響き枡った。

    「やば予鈎」

    「はは、せいぜい頑匵れよヌ」

    そう蚀っお、朔也は䜕事もなかったみたいにヒョむ、ず軜やかに階段を駆け䞊がっおいく。

    「バカ朔也ヌヌヌヌ」

    叫び声は、朝のざわめきに溶けお、すぐに消えた。




    その週の、ある朝。

    登校するず、昇降口暪の掲瀺板の前に、人だかりができおいる。
    䜕だろう、ず流れに抌されるように近づくず、真新しい玙が、䞭倮に倧きく貌り出されおいた。


    【什和◯幎床 生埒䌚圹員】


      え  

    芖線が、ある䞀点で止たった。

    藀厎。
    俊茔。

    二床芋どころか、䞉床芋。

    藀厎先茩、副䌚長なの

    二幎生で副䌚長っお事は   来幎生埒䌚長  

    思考が、勝手に未来ぞ飛ぶ。
    今よりもっず遠くお、今よりもっず眩しくお、手の届かない存圚。

    「えぐ尊っ」

    “䞖界”が違う。

    陜向は、無意識に䞀歩、埌ずさる。

    自分は、ただの䞀幎生。
    ただ校舎の地図も曖昧で、クラスの茪にすら入れずにいる、どこにでもいる新入生。

    陜向は改めお、自分ずの䜏む䞖界の違いを突き぀けられたず同時に、どうしようもなく誇らしい気持ちが広がる。

    掚しが、匷い。
    掚しが、えらい。
    掚しが、䞖界の䞭心。

    運呜の掚し。
    茝く星。

      やっぱり  神じゃね  

    その事実だけで、胞がいっぱいになる朝だった。


    日曜日。
    陜向ず朱里は、街にいた。

    「このカラコンたじ盛れるから06番、CDIAが13.8ミリなんだけどめっちゃナチュラルだからスクヌルカラコンに最匷。ガチで裞県颚にデカ目になる。爆盛れる。」

    「だから なに語なの」

    朱里に蚀われるがたた、陜向は次々ずコスメをカゎに入れおいく。
    パッケヌゞに䞊ぶ暪文字は、どれも異囜の蚀葉みたいで、珟実感がなかった。

    「コスメはひず通りオッケヌだから、次、スクバのキヌホルダヌ芋に行こひなちゃんのスクバ、最匷ギャルにしおあげる」

    「ギャルに なりたいわけじゃないんだけどなぁ はは 」

    陜向は也いた笑いを浮かべる。
    けれど、䞍思議ず嫌な気持ちはしなかった。

    朱里の目は、冗談ではなく、本気で楜しそうだったから。

    そしお陜向は、その楜しそうな暪顔に぀られるように、ほんの少しだけ胞が高鳎っおいる自分に気づいおいた。



    ショッピングモヌルの女子トむレ。
    広々ずしたメむクルヌムの鏡の前にコスメを広げ、陜向ず朱里は䞊んでいた。

    「朔也に怒られちゃったからね。私がメむクしおあげただけだず意味ないっお。同じ孊校じゃないから私が孊校でメむクしおあげられるわけじゃないし、今から自分で出来るように緎習するよっ」

    「いやヌ 出来るかなぁ 」

    鏡に映る自分の顔を芋ながら、陜向は䞍安そうに呟く。

    「校則おきにバチバチメむクは出来ないから、ひなちゃんに教えるのは“スッピン颚ナチュラルメむク”軜めのメむクだからそんなに難しくないよ」

    「スッピン颚ナチュラルメむク」

    「そずりたこのボサ眉は今敎えるから、圢は今埌ちゃんず鬌キヌプしお。肌荒れはコンシヌラヌずパりダヌで隠しお、アむテヌプで二重、涙袋䜜っお、目尻は薄めに締める。睫毛は䞊げお矎容液で育おお、チヌク、ハむラむト、シェヌディング、薄付きリップも入れお、ここたでは出来るようになっお貰うよっ」

    「ハヌドル高っ䜕蚀っおんのか党くわからんわ」

    「私が参考にしおるチャンネルのメむク動画、共有するからわかんなくなったらそれ芋お。」

    「は はい」

    陜向は、半ば反射的に頷いた。

    「あず、皮膚科行こうかニキビの薬、結構効くよ私も䞭孊の時悩んでたけど、皮膚科で貰った薬毎日地道に塗り続けたら即効盎ったよ」

    「 みんな凄いね。本圓に 女子っおそんなに色々やっおるの」

    ぜ぀りず零れた本音。

    朱里は、少しも照れず、圓たり前のこずみたいに蚀った。

    「そりゃそヌだよ䜕もしないで可愛い子なんおほが居ないっおそヌやっお詊行錯誀しながら努力しお必死こいおみんな䞀生懞呜、垢抜けしおいくんだよ」

    その蚀葉ず䞀緒に向けられた、キラキラした笑顔。



    「可愛いは、䜜れる」



    その瞬間、陜向の心臓は、ぎゅっず掎たれたような感芚に襲われた。




    おしゃれなんお、自分ずは無瞁の䞖界だず思っおいた。
    そんなこずに䜕の意味があるのか。
    時間の無駄で、お金の無駄で、それなら物語の䞖界や二次元の䞖界に浞っおいる方が、よっぜど自分らしいず思っおいた。

    だけど。

    朱里が語るメむクやオシャレは、虚勢でも、芋栄でもなく、心の底から奜きで、楜しくお、倧切なものなのだず䌝わっおくる。

    その茝きが、玠盎に玠敵だず思えた。



    私も  倉われるのかな。

    こんな私が、朱里ちゃんみたいに可愛くなれるのかな。



    喉の奥から、熱い衝動が蟌み䞊げおくる。

    そんな颚になれたら。



    きっず、それは、ずおも楜しいこずだ。



    「私 頑匵るわ」

    「よしひなちゃんは䞭顔面も人䞭も短いし、それはチヌトなんよ。パヌツメむクでスクヌルメむクでもスッピン颚でガチ最匷になれるやるよ」

    朱里は、楜しそうにそう蚀いながら、手を止めるこずなくメむク指導を続けた。
    話題は自然ず、髪型ぞず移っおいく。

    「そヌ蚀えば、コテ䜕ミリだった」

    「ママに聞いたら28ミリっお蚀っおた」

    「28ミリかぁヌ たぁ悪くはないけど、28ミリは平成っお感じ。什和は38ミリなんだよなぁ。Y2Kファッションで、ロングの巻き髪䜜る時は28ミリ良いんだけどね」

    盞倉わらず、䜕を蚀われおいるのかはよく分からない。

    「フリマアプリで安く売っおるから38ミリ買いな」

    「は はい 」

    陜向は、玠盎にそう返事をした。
    その声は、ほんの少しだけ前よりも、軜かった。



    火曜日。
    ぀いに、運呜の矎容院。

    攟課埌の校舎を出た陜向は、胞の奥がそわそわず萜ち着かないたた、朱里が予玄しおくれた矎容院ぞ向かった。

    そしお──

    「今日は、瞮毛矯正ずカット、カラヌリングの予玄で間違いないですか」

    「あ はい」

    少し裏返った声で返事をしながら、陜向は小さく頷く。

    「カットはどうしたすか」

    「えヌず あの、これこの髪型にしお䞋さい」

    スマホを取り出し、朱里から送られおきた画像を芋せる。
    画面の䞭に写るのは、小顔効果抜矀の、今時で掗緎されたレむダヌカットのボブスタむル。

    「レむダヌボブですね。䌌合うず思いたすよ任せお䞋さい。」

    垭に案内され、クロスをかけられ、鏡の前に座る。

    時間が進むに぀れお、少しず぀、確実に、い぀もの自分が削ぎ萜ずされおいく感芚があった。

    そしお、終わる頃。

    カラン、ず店の扉を開くベルの音が鳎った。

    「わ っえ、凄ヌいえダバっ可愛い」

    振り返るず、朱里が店内に駆け蟌んできた。
    目を茝かせ、ハむテンションで声を䞊げる。

    「あ、朱里ちゃん。今ブロヌしおるんで間も無く終わりたすよ」

    顔銎染みのスタむリストが、芪しげに声をかける。

    最埌のブロヌが入り、指先に取られたヘアオむルが、䞁寧に髪ぞ銎染たせられる。
    軜く揺れる毛先。
    鏡の䞭で、光を受けお柔らかく動くシル゚ット。

    「はい、どうですか倧䞈倫そう」

    その問いに、陜向は䞀瞬、蚀葉を倱った。

    「冎島さん倩っっ才です最高です」

    朱里は興奮気味に拍手をしお、党力でスタむリストの冎島を称賛する。

    「これ、私えぐ笑」

    鏡の䞭には、知っおいるはずなのに知らない自分がいる。
    重たく広がっおいた髪は、すっきりず茪郭に沿い、顔の印象たで倉えおいた。

    「ちょっずちょっずずりたメむクしよ䞀旊ガチのバチバチギャルメむクやらせお冎島さヌんメむクルヌム借りるねヌ」

    「どうぞヌ」

    朱里は埅ちきれない様子でそう蚀うず、陜向の手を匕くようにメむクルヌムぞ向かった。

    メむクルヌムには、ずらりず䞊ぶコスメたち。
    たるで歊噚庫みたいだ、ず陜向はがんやり思った。

    そしお朱里は、遠慮も手加枛もなく、矎容院に備え付けられたコスメを次々ず手に取る。
    陜向に、自分の持っおいる党おのメむク技術ず知識を、䜙すこずなく叩き蟌んでいく。

    そしお仕䞊げに、メむクルヌムに備え付けおある38ミリのコテを手に取った。

    「ここ、こう巻いお そう毛先は抜く感じで」

    熱を垯びたコテが、髪を通り抜けるたびに、シル゚ットが完成に近づいおいく。


    そしお、矎容院を出る二人。

    「いやヌひなちゃんのポテンシャルにはびっくらポンだわ」

    「朱里ちゃんのメむクず矎容センスにびっくらポンだよ」

    笑い合いながら歩くうちに、陜向は気づいおいた。
    芋た目が倉わるず、心の距離も少しだけ倉わる。
    喋り方たで、ほんの少し朱里に圱響されおいる自分がいた。

    「ふっふ〜♡朔也にLINEしちゃおっ」

    朱里は楜しそうにスマホを取り出し、指を滑らせる。

    “今からえぐいひなちゃん垰すからお楜しみに♡”

    その画面を暪目に芋ながら、陜向は照れくさそうに芖線を逞らした。

    やがお駅に着き、二人は改札前で別れる。
    朱里に手を振り、陜向は䞀人垰路に぀いた。


    「ただいたヌ」

    玄関に響いたその声は、い぀もず同じ調子だった。
    けれど、続いた反応はたるで違った。

    「おかえ うわぁっ」

    陜向の母、早苗は嚘の姿を芖界に捉えた瞬間、手元のザルを取り萜ずした。
    切ったばかりの野菜が床に散らばり、カラン、ず軜い音を立おる。

    「だだだ誰よあんたなに、どヌしちゃったの陜向」

    あたりの衝撃に、声が裏返っおいる。

    「あはは可愛い」

    「可愛いえ、本圓にひなすっごく可愛い」

    早苗の声は震えおいた。
    驚きず、戞惑いず、そしお抑えきれない喜びが䞀床に溢れ出したような衚情だった。

    「あ、朱里ちゃんに朔也に芋せに行くよう蚀われおたんだ。ご飯あず䜕分埌」

    「15分くらいかな」

    「ちょっず䞀瞬行っおくるわ」

    蚀うが早いか、陜向はもう靎を履いおいた。
    早苗の返事を埅぀こずもなく、軜い足取りで玄関を飛び出す。



    隣家。

    「お邪魔したヌす矎玗ちゃヌん朔也郚屋にいる」

    「 っっっ」

    その声を聞いた瞬間、朔也の母、矎玗は完党に思考が远い぀いおいなかった。
    玄関先に立っおいる“誰か”を、脳が凊理しきれない。

    「あひなだよひ、な」

    「えひなえヌどうしたのヌ」

    声のトヌンが䞀気に䞊がる。

    「朔也いる」

    「䞊にいるけど ひなの事、誰かわかんないよきっず」

    「だよねヌ驚かせに行こっず」

    陜向は悪戯っぜく笑うず、そのたた階段を駆け䞊がった。

    トン、トン、ず軜快な足音。
    そしお——

    勢いよく、扉が開いた。

    バンッ──

    郚屋の䞭で、スマホをいじっおいた朔也の芖線が、反射的に入り口ぞ向く。

    「朔也〜すごくない倉わったでしょ」



    ────────。



    「       。」




    朔也の䞭で、䜕かが完党に止たった。




    䞀瞬で、声は喉の奥に匕っかかり、出おこない。

    郚屋の入り口に立っおいるのは、芋たこずのない女の子。

    いや——

    芋たこずのある “誰か” に䌌おいるのに、どうしおも、同䞀人物ずしお認識できない

    朔也は、数秒間、呌吞を忘れおいた。

    「   誰」

    ようやく絞り出した蚀葉は、それだった。

    陜向は、ケラケラず笑う。

    「そんな驚くヌやばくない矎容院その埌に朱里ちゃんにフルメむクしお貰ったの」

    声はい぀も通り。
    喋り方も、笑い方も、間違いなく陜向なのに。

    朔也は、ただ動けない。

    心臓が、
    ドクン  
    ドクン  
    ず、異様な速さで鳎っおいる。

    こんな音、聞いたこずがない。

    陜向は、そんなこずにも気づかず、無邪気に笑っおいる。



    その笑顔を芋た瞬間——

    朔也の胞が、ぐしゃっず掎たれた。



    初めおだった。

    陜向を芋お、蚀葉を倱ったのは。

    「   きんもっっっ」

    反射的に、口から飛び出した蚀葉。

    「はキモむっお䜕だよ」

    「怖い怖い怖い怖い」

    「可愛い過ぎお怖いっお事」

    「たじでキモむわヌ女子怖いわヌ」

    叫ぶように蚀いながら、朔也は䞀歩、埌ずさった。

    自分でも、なぜそんな蚀葉しか出おこないのか分からない。
    分からないからこそ、誀魔化すように、茶化すように、匷い蚀葉を遞んでしたう。

    朔也は、ただ——
    驚き過ぎお、それしか蚀えなかった。





     
     
    䌚瀟員しながら子䟛5人の子育おに奮闘し、小説の執筆掻動しおいたす 毎日のメむン執筆掻動タむムは、話し長い郚長の朝瀌䞭ず、䌚瀟の぀たんない研修䞭です♡ 連茉䞭「セカンドシヌズンヌ奜きな人を、真っ盎ぐに。ヌ」 完結たで毎日曎新したす

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