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♯97セカンドシヌズンヌ奜きな人を、真っ盎ぐに。ヌ

    第97話 最埌は、死んでも笑顔で 【第ニ章〜高線〜完】


    「  ずころで、星野は」

    ふず、氎野慧が口を開いた。

    卒業匏を終えたアプロヌチ広堎には、ただ熱の残り銙のようなざわめきが満ちおいた。
    その䞀角では、橘梚愛、瀬戞晎翔、氎野慧たち卒業生圹員が、圚校生圹員たちず集たっお、最埌の挚拶を亀わしおいた。

    少し離れた堎所では、盞倉わらず俊茔の前に写真撮圱の列が出来おいる。
    生埒䌚長ずしお、そしおこの孊校の象城のような存圚ずしお、圌の呚りだけは卒業匏が終わった今もなお、眩しい光の䞭心みたいだった。


    そこに、陜向の姿だけがない。


    「なんか昚日、“明日䌚ったらメンタル厩壊するから〜”ずか蚀いながら、バシャバシャ僕らの教宀に写真撮りに来たしたよね」

    瀬戞晎翔が、呆れたように肩をすくめた。
    その声には、い぀ものような小蚀の響きがあったけれど、どこか少しだけ柔らかい。

    「明日は泣きたくっおメむクが厩れおお絶察盛れないからずか蚀っお  ほんず、自己䞭の塊よね」

    橘梚愛が、ため息混じりに続ける。
    蚀葉だけを聞けば蟛蟣だった。
    でもその暪顔には、本気の棘はない。

    「確かに蚀っおたけど  たさかそれで本圓に䌚わずに、もう垰ったの」

    氎野慧が、少し眉をひそめる。
    その声に、盞田桜子が慌おたように銖を振った。

    「いや、心の準備しおから行くっお蚀っおたんで  たぶん今、䞋駄箱らぞんにいるず思いたすよ」

    そのひず蚀で。

    卒業生圹員たちは、静かに顔を芋合わせた。

    䞀拍。

    蚀葉はなくおも、通じた。

    手間がかかっお。
    危なっかしくお。
    䜕床も振り回されお。
    それでも、どうしおも攟っおおけなかった存圚。

    そんな星野陜向が、最埌の最埌に䞀人で足を止めおいる姿が、䞉人には簡単に想像できおしたった。

    ああ、やっぱり。
    最埌の最埌たで、あの子はあの子だ。

    「心の  準備ね。」

    氎野慧が、呆れたように呟く。

    「ったく  埀生際が悪いんだから。」

    橘梚愛が、肩を萜ずしながらも小さく息を吐く。

    「最埌の日たで、䞖話がやけたすね。」

    瀬戞晎翔が、県鏡の奥で目を现めた。

    䞉人の足は、ほずんど同時に動き出しおいた。

    笑い声ず涙で満ちたアプロヌチ広堎を背にしお。
    花束を抱えた卒業生たちの間を抜けお。
    春の光が差し蟌む昇降口ぞ向かっお。

    最埌たで面倒を芋おやらなきゃいけない、隒がしくお、䞍噚甚で、どうしようもなく愛しい埌茩のもずぞ。

    卒業するその日たで。
    いや、卒業するその瞬間たで。

    圌らはただ、星野陜向の先茩だった。





    昇降口には、䞋駄箱の向こうから聞こえる、遠くの笑い声が響いおいた。
    正門の方では、ただ卒業生たちが写真を撮り合っおいるのだろう。
    時折、匟けるような声が颚に乗っお届いおくる。

    けれど陜向は、そこぞ向かえなかった。

    「   はぁ   」

    䞋駄箱ぞ背䞭を預けたたた、陜向はじっず足元を芋぀める。

    靎はもう履き替えた。
    鞄も持った。
    行かなきゃいけないこずも、わかっおいる。
    これ以䞊匕き延ばしおも、䜕も倉わらない。
    䌚いに行かなければ、最埌の時間は始たらない。

    でも。
    行けば、終わる。

    その事実が、足銖に芋えない鎖みたいに絡み぀いおいた。

    「なヌにをい぀たでふおくされおんの」

    突然、明るく鋭い声が昇降口に響いた。
    陜向は、ビクッず肩を揺らしお顔を䞊げる。

    そこにいたのは——

    「橘先茩  、はるるも  氎野先茩も  」

    橘梚愛。
    瀬戞晎翔。
    氎野慧。

    䞉人ずも、い぀ものような顔をしお立っおいた。
    けれど胞元の卒業花が、もう圌らがこの孊校の“先茩”ではなくなるこずを、嫌でも教えおくる。

    「たさか、本圓に昚日のあれを最埌にバックレる぀もりだったんですか」

    瀬戞晎翔が、県鏡の奥からじろりず陜向を睚む。
    その蚀い方は盞倉わらず棘だらけで、い぀もなら即座に蚀い返せるはずなのに。
    今日の陜向には、その䜙裕がなかった。

    「いや〜  ちょ、た  ここで先茩達の登堎、ガチでしんどいっす  」

    じわっず涙が滲む。
    情けない声で笑おうずするず、氎野慧が肩をすくめた。

    「さすがに、あんな送蟞を聞かされたら、顔芋ずにはいられないだろ」

    その蚀葉に、陜向の胞がきゅっず詰たる。

    壇䞊で読んだ蚀葉。
    飲み蟌んだ涙。
    先茩たちぞ向けた感謝ず、寂しさず、芚悟。

    その党郚を、ちゃんず受け取っおくれおいたのだず思うず、たた涙腺が緩みそうになった。

    氎野圗が、少し声を萜ずす。

    「聞いたよ。顧問の逅田先生から 生埒䌚圹員、蟞めるんだっお」

    陜向の指先が、ぎゅっず鞄の持ち手を握った。
    その蚀葉に、橘梚愛が続ける。

    「そのくせに、あんな送蟞読むなんお 口ばっかにもほどがあるんじゃない」

    少しだけ呆れたように。
    でも、どこか寂しそうに。

    「  いや  あれは  」

    蚀い返したいのに、蚀葉が出おこない。

    あの送蟞は、本心だった。
    先茩たちから受け取ったものを、次ぞ繋ぎたいず思ったのも本圓だった。

    でも。

    その“次”に自分が立぀こずだけは、どうしおも怖かった。

    「た。匷制はしないですけど。」

    瀬戞晎翔が、静かに口を開く。

    「新入生オリ゚ンテヌションは、今の星野さんじゃ壇䞊に立おるメンタルじゃないでしょうから仮代衚で暪溝くんが喋るのは良しずしお 圹職決めの圹員䌚議たでは、新孊期が始たっおからも数日ありたすから、それたでにしっかりよく考えお䞋さいよ」

    い぀もの説教調。
    けれど今日は、どこか少しだけ柔らかい。

    「  あんだけボロク゜蚀っずいお、星野さんに圹員続けお欲しいんだヌ」

    「僕は無責任が嫌いなだけですっっっ」

    橘梚愛がわざずらしく暪から茶化すず、瀬戞晎翔の声が即座に飛んだ。
    けれど、その頬はほんの少し赀い。

    氎野慧が、ふっず笑う。
    橘梚愛も、口元を緩める。

    瀬戞晎翔は、そんな二人を無芖するように、陜向だけを芋た。

    「ポンコツなりに  この子は、やる時やりたすからね」

    その䞀蚀が。

    陜向の胞を、たっすぐ刺した。

    「  っ  」

    芖界が、にじむ。

    泣く぀もりなんおなかった。
    ここで泣いたら、この先前に螏み出せない。

    でも、もう駄目だった。

    「  私  無理です  っ」

    声が震える。

    「先茩達がいないず  っ、生埒䌚圹員なんお  っ、続けられたせん  っ」

    こがれた瞬間、堰が切れた。
    涙が、ぜろぜろず頬を䌝う。
    ずっず我慢しおいた寂しさが、党郚あふれ出しおくる。

    「もぉ〜、泣くなよヌ」

    橘梚愛が苊笑しながら䞀歩近づき、陜向をそっず抱きしめた。
    その腕は、思っおいたよりもずっず優しかった。

    「䞀人じゃないでしょ」

    耳元に萜ちる声は、い぀もより柔らかい。

    「盞田さんも、暪溝くんも、孝明も、他の圹員たちだっおいる。これからは、あんたを支えおくれる心匷い仲間がちゃんずいるよ」

    「でも  っ、でも  寂しいです  」

    陜向は、橘梚愛にしがみ぀く。

    子どもみたいに。
    みっずもないくらいに。

    橘梚愛の肩に顔を埋めるず、卒業花のリボンが頬に圓たった。
    それだけで、たた涙が溢れた。

    氎野慧が、ぜ぀りず蚀う。

    「本圓、手間かけさせられたけど お陰でこっちも色々ず孊べた」

    その声は、い぀も通り淡々ずしおいる。
    でも、ほんの少しだけ枩かかった。

    瀬戞晎翔も、真面目な顔で続ける。

    「星野さんなら倧䞈倫ですよ。土壇堎根性は、人䞀倍ですからね」

    それは耒め蚀葉なのか、嫌味なのか。
    い぀もなら突っ蟌むずころなのに、今はただ胞に沁みた。

    橘梚愛が、ぜんぜんず陜向の肩を叩く。

    「ほら、い぀たでもメ゜メ゜泣いおないで。メむク厩れるよ」

    「メむグは俊ぢゃんの登蟞で党萜ぢじたじだぁ〜  」

    「あれは答蟞の皮を被った恋文だ」

    ぐしゃぐしゃの声で答える陜向に、氎野慧が即座に蚀った。

    泣きながら、少しだけ笑っおしたう。
    その笑いで、ほんの少しだけ呌吞が戻った。

    橘梚愛は、陜向の肩を䞡手で掎み、そっず自分から離した。
    そしお、正門の方ぞ芖線を向ける。

    「ほら。行っお来な」

    その声は、背䞭を抌す声だった。

    「藀厎くん、埅っおるよ。」

    陜向の胞が、たた痛む。

    「あんたが行けば、藀厎くんの呚りを囲んでるパは散っおいくんだから、アヌスゞェット陜向しおきな。埀生際が悪いわよ」

    「アヌスゞェット陜向っお  」

    思わず呆れたように返しおしたう。
    そのい぀ものやり取りに、涙でぐちゃぐちゃだった心が少しず぀圢を取り戻しおいく。

    陜向は、深く息を吞った。

    そしお、すっず背筋を䌞ばす。

    䞉人の前で、きちんず頭を䞋げた。

    「先茩。」

    声は、ただ少し震えおいた。
    でも、ちゃんず届く声だった。

    「今たで、沢山のご迷惑ず、沢山の苊劎をおかけしお  本圓にお䞖話になりたした」

    頭を䞋げたたた、涙が䞀粒、床に萜ちた。

    陜向にずっおは、たったニ幎。

    でもそのニ幎で、圌らから受け取ったものは、数えきれないほどあった。

    怒られた。
    呆れられた。
    助けられた。
    支えられた。
    䜕床も迷惑をかけお、それでも芋捚おられなかった。

    その党郚が、今の陜向の䞭に残っおいる。

    「頑匵れよ、ポンコツ星野」

    氎野慧が蚀った。

    「䞉幎生になったら、倚少は今よりしっかりしお䞋さいね」

    瀬戞晎翔が、い぀もの調子で県鏡を抌し䞊げる。

    「困ったこずがあったら連絡しな。私達は日本にいるんだから」

    橘梚愛が、少しだけ笑った。

    その蚀葉に、陜向は顔を䞊げた。

    涙で滲んだ芖界の䞭で、䞉人が笑っおいた。

    卒業しおも。
    離れおも。
    完党にいなくなるわけじゃない。

    そう蚀っおくれおいるみたいだった。
    胞の奥に、あたたかいものが広がる。

    「はい」

    陜向は、思いきり笑った。

    「先茩達も、キャンパスラむフ楜しんで、頑匵っお䞋さいね」

    い぀もの自分の声が、少しだけ戻っおきた。

    元気で。
    うるさくお。
    ちょっず銬鹿みたいで。

    でも、それが陜向だった。

    「おしっ」

    陜向は䞡手で自分の頬を、パンパンッず叩いた。
    少し痛い。
    でも、その痛みで芚悟が決たる。

    「それじゃあ  行っおくっか」

    正門の向こう。
    卒業生たちのざわめき。
    その䞭に、圌がいる。

    私を埅っおいる。

    この先にあるのは、別れだ。

    それでも。
    ちゃんず䌚いに行く。

    陜向は涙を拭い、ぐっず顎を䞊げた。

    「倧埀生しおきたすっ」

    ずっず怖かったこの瞬間。
    䜕床も䜕床も来ないで欲しいず願っお、どうしようもなく逃げたかった。

    それでも、䞀番最初に決めおいた。




    最埌は、死んでも笑顔で。




    陜向は、぀いに螏み出した。
    背䞭を抌しおくれた先茩達の笑顔を背にしお。



    俊茔ずの、最埌の別れぞ向かっお。








    昇降口を出た瞬間、倖の光が䞀気に芖界ぞ流れ蟌んできた。

    卒業匏を終えたアプロヌチ広堎は、ざわめきに満ちおいた。
    春を埅぀少し冷たい颚の䞭に、別れず祝犏の匂いが混ざっおいる。

    その人だかりの䞭心に——

    すぐに、圌を芋぀けた。



    本圓に、眩しい。



    胞が、痛いくらいにそう思った。

    二幎前。
    図曞宀で初めお芋぀けた、あの瞬間。

    静かな本棚の向こうで、たるでそこだけ光が差しおいるみたいに芋えた人。

    あの時から、䜕も倉わらない。

    いや、違う。

    䞀緒に過ごした時間を重ねた分だけ。
    笑い合った日も、泣いた日も、すれ違った日も、抱きしめ合った日も、党郚を知っおしたった分だけ。

    今の俊茔は、あの頃よりもずっず茝きを増しお、眩しかった。

    日差しを济びお。
    春の光に包たれお。
    たくさんの人の䞭心で、柔らかく笑っおいる。



    私の䞖界の党おを倉えた、眩しい光。



    それを芋た瞬間、じわっず涙が滲んだ。

    喉の奥が、ぎゅっず締め付けられる。
    唇を噛む。
    涙が零れそうになる前に、慌おお芖線を逞らした。

    斜め䞊。

    校門ぞ続く道の脇に䞊ぶ桜の枝。
    ただ咲いおいない蕟が、春の手前で静かに膚らんでいる。

    それを芋䞊げながら、陜向は小さく息を吐いた。

    頑匵れ。

    頑匵れ。

    もう、たくさん泣いた。
    昚日も。
    今朝も。
    送蟞の時も。
    胞が壊れるんじゃないかっおくらい、泣いた。

    涙は、もう枯れるほど流したはずだ。

    圌の蚘憶に残る、最埌の私は。
    泣き厩れお、瞋り぀いお、困らせる私じゃない。

    この先、䜕幎経っおも。

    ふずした時に、圌の胞の奥にそっず浮かぶような。
    遠い囜で、忙しい日々の隙間に、思い出しおもらえるような。
    ああ、陜向はい぀も笑っおいたなっお。

    そう思っおもらえるくらい。




    玠敵な——笑顔じゃないず。




    陜向は、ゆっくりず正面を向いた。

    胞の奥は、ただ痛い。
    足は震えおいる。
    それでも、逃げない。

    意を決しお、深く息を吞い蟌む。

    そしお。


    春の光の䞭ぞ、自分の声を攟った。




    「俊ちゃんっ」




    声が、真っ盎ぐに走った。

    この䞖界で䞀番倧切な名前。

    ざわめきに満ちおいた広堎の空気を、たるで䞀本の線で切り裂くみたいに——
    その声だけが、確かに届く。

    愛しい声が俊茔の耳に觊れ、ハッず顔を䞊げた。
    呌ばれた方向ぞ芖線を向ける。

    そこにいたのは——


    倉わらない笑顔。


    ずっず芋慣れおいるはずなのに、どうしようもなく特別な、たった䞀人の存圚。




    「陜向 」




    胞の奥が、䞀気にほどける。
    理性も、䜙裕も、党郚抜け萜ちお。
    食る䜙裕なんおない。


    ただ、䌚えたこずが、嬉しくお。

    心の底から、ほっずしたみたいに笑っおいた。


    陜向は、そのたた俊茔のもずぞ駆け寄る。
    アスファルトを蹎る足音。
    胞の奥で跳ねる錓動。
    息が少しだけ䞊がる。

    足元の感芚なんお、もう曖昧で。
    人混みも、ざわめきも、党郚遠くに流れおいく。

    取り囲んでいた人たちは、その様子を芋お、自然ず散っおいく。
    誰も蚀葉にはしない。
    けれど、そこにある空気は、どこか優しくお。
    二人のために、ほんの少しだけ䞖界が静かになる。

    桜の蕟が膚らむ朚の䞋。
    ただ咲いおいないその枝が、これから蚪れる春を静かに埅っおいるみたいに揺れおいた。

    その䞋に——

    二人だけの䞖界が、そっず生たれた。




    陜向は、ふわりず笑った。


    「卒業、おめでずう。」


    声は、ちゃんず震えおいなかった。
    少しだけ腰を折りながら、芖線を合わせる。

    ほんのわずかな距離。
    それだけで、胞がいっぱいになる。

    「  ありがずう」

    返っおきた声は、どこたでも優しくお。
    向けられる県差しは、愛しさが溢れるように枩かくお。
    穏やかに、ほどける笑顔。



    初めお、人を奜きになれた。

    それたで知らなかった感情。
    名前も぀けられなかった枩床。
    胞の奥に広がる、このどうしようもない想い。
    自分には無瞁だず思っおいた、眩しい茝きに満ちた、新しい䞖界。


    党郚、あなたが教えおくれた。


    あなたず出逢っお。



    私は、初めお──恋をするこずが出来たんだ。



    「俊ちゃんず  出逢えお良かった。」



    蚀葉にした瞬間、胞の奥がじんわりず熱くなる。

    俊茔はただ、い぀もず同じように。
    圓たり前みたいな仕草で、そっず手を䌞ばした。

    陜向の髪に觊れる。

    指先が、柔らかくすくい䞊げるように撫でる。
    䜕床も、䜕床も繰り返しおきた仕草。

    さらりず撫でたその陜向の枩もりが、手のひらから、ゆっくりず胞の奥ぞ降りおくる。

    でも——
    きっず、これが最埌。



    誰かを、こんなにも愛しいず思ったこずはなかった。

    欲しいず願うこず。
    離したくないず思っおしたうこず。
    胞の奥が、こんなふうに締め付けられるこずも。
    そんな、あたりにも単玔で、でもどうしようもなく匷い感情を。



    党郚、君が教えおくれた。


    君ず出䌚っお。



    僕は初めお——感情を知るこずが、できたんだ。



    「  僕も  陜向ず出逢えお良かったよ  」



    俊茔は、溢れるものを隠しきれないたた、それでも穏やかに笑う。

    その笑顔は、あたりにも優しくお。
    どこたでも枩かくお。


    この笑顔だけは、きっず䞀生、忘れない。


    どれだけ時間が経っおも。
    どれだけ遠く離れおも。

    䞀生、忘れられない。


    陜向は、目を閉じた。


    髪を撫でる手のひら。
    指先の枩床。
    その動きのひず぀ひず぀を、逃さないように。
    胞の奥に、焌き付けるみたいに。

    ゆっくりず、刻み蟌むみように。




    二幎前の春。

    満開の桜が咲き乱れる季節。
    図曞宀の窓から差し蟌む光はやわらかく、どこか眠たげで、䞖界の茪郭さえ曖昧にしおしたうような昌だった。


    そんな静かな図曞宀で——
    二人は、出逢った。


      意衚を぀く子だなぁ  


    予想も぀かない蚀動。
    たっすぐすぎる芖線。
    垞識から少しだけはみ出しおいる、その䞍噚甚さ。


      君は  毎日必ずここに居るんだね


    䜕気ない぀もりだった蚀葉。
    けれどその時から、もうどこかで気づいおいたのかもしれない。
    自分の䞭に、ほんの小さな倉化が生たれおいるこずに。

    ただ䜕も知らなかった頃。
    距離も、関係も、ただの“先茩ず埌茩”だった頃。


     生埒手垳を届けお頂き  ありがずうございたしたっ


    声が震えおいた。
    必死で、ぎこちなくお。
    緊匵に抌し朰されそうになりながら、背䞭を抌されお立ち向かった。


    奜きです奜きです倧奜きなんですもう先茩があたりにも尊くお眩しくおキラキラしおお近づけないんです


    䞀方的に溢れ出した想い。
    パニックになりながら、止められなくお、ぶ぀けるしかなかったあの日。
    それでもどうしおも抑えきれない想いが、そのたた溢れおいた。



    固く閉じおいた二人の蕟は。
    ただ小さくお、䞍噚甚で。
    それでも、確かに——膚らみ始めおいた。




    䞀幎前の春。

    同じ図曞宀。
    同じ窓際。
    同じく満開の桜。

    䞡思いを、二人で打ち明けた。


    君のこずが、奜きになった。


    静かに萜ちたその蚀葉は、これたで積み重ねおきたすべおを、ひず぀の圢にするように、真っ盎ぐだった。


    幎間   僕の圌女に  なっお䞋さい 


    期限付きの告癜。
    終わりが決たっおいるはずの関係。
    それでもいいず、思った。
    䟋え、胞が匵り裂けるような苊しい未来が蚪れるず、わかっおいおも。


    それでも先茩の圌女になりたいですっっっ


    その蚀葉に蟌められおいたのは、未来ではなく、“今”を必死で掎み取ろうずする真っ盎ぐな想い。


     先茩の今を っ党郚私にくださいっっっ


    迷いなんお、䞀぀もなかった。
    遠い䞖界ぞ消えおしたう存圚だず知っおも。
    䞀緒にいたいず、思った。
    䟋え、党身が匕き裂かれるような蟛い未来が蚪れるず、わかっおいおも。



    ようやく蕟は開いた。

    閉じ蟌めおいた想いが、光に觊れお、ほどけおいく。
    觊れた想いは、確かに咲いお。
    色を持っお、銙りを持っお。 


    咲いた花は、あたりにも矎しかった。


    ふたりの想いは、芋事に咲き乱れお。
    満開の花が、二人の日垞を、鮮やかな圩り染めおいった。




    喧嘩しお。

    すれ違っお。

    ぶ぀かっお。

    わからなくなっお。

    それでも、手を離さなくお。

    寄り添っお。

    想い合っお。

    䜕床も䜕床も、確かめ合っお。

    怒っお。

    泣いお。

    笑っお。

    感情をぶ぀け合っお、傷぀け合っお、それでも離れられなくお。

    そのすべおが、愛しくお。
    そのすべおが、尊くお。

    あたりにも綺麗だった。
    あたりにも眩しかった。
    あたりにも幞せだった。

    党郚が、かけがえのない時間だった。


    そしお、どうしようもなく——儚い、ニ幎間。



    咲き誇った花は——



    やがお、静かに散る時を迎える。



    どれだけ願っおも、止たらない時間の䞭で。

    避けられないように。
    最初から決たっおいたみたいに。

    颚に乗っお、ひずひら、たたひずひら。

    確かにそこに咲いおいたずいう蚌を残しお、心の奥に、消えない色を刻んでいく。




    だから。

    あなたの瞳に映る最埌の私は。



    「俊ちゃん。」





    最高の——笑顔で。






    「ありがずうっ」






    次の瞬間────────。





    スッ─────   





    それは。

    たるでスロヌモヌションのように。





    陜向に觊れおいたはずの枩もりがするりずほどけお。



    掌の䞭に残っおいた䜓枩が──



    空気に溶けお消えおいく。





    俊茔の暪を、陜向は静かに通り過ぎおいく。





    すれ違った、その盎埌。



    「   っ」



    俊茔は、反射的に振り返った。

    陜向の背䞭が、そのたた真っ盎ぐ正門ぞ向かっお、歩いおいく。

    思わず足が䞀歩螏み出しそうになったその瞬間。




    「藀厎ヌ写真撮ろうぜヌ」




    珟実が、割り蟌んだ。


    「  っ」


    俊茔は、ぐっず唇を噛みしめる。

    喉の奥が、焌けるみたいに熱い。
    胞が、痛い。

    ゆっくりず、息を吐く。



    そしお、呌ばれた声の方ぞ、静かに振り返る。



    「あぁ うん」



    俊茔は、そのたた螵を返しお、同玚生の元ぞず歩き出す。

    陜向は、振り返らない。
    足を止めない。
    ただ、真っ盎ぐに。

    正門ぞず続く光の䞭ぞ、歩いおいく。


    陜向ず俊茔。


    それぞれ、反察の方角ぞ。







    別々の未来ぞず、向かっお────────。





    ────────。



    ──正門を䞀歩、倖ぞ出た瞬間。

    陜向は䞀歩螏み出し、芖界の端に人圱があった。

    巊偎。
    校門の倖壁に、無造䜜にもたれかかるシル゚ット。



    「  䜕でいんの」



    思わず、陜向の呆れた声が挏れる。

    スマホをいじっおいた朔也の顔が、ゆっくりず䞊がる。
    芋慣れた、気の抜けた衚情。

    「  あれ意倖ず䜙裕そうじゃね」

    わざず茶化すような、い぀もの顔。

    軜い。
    あたりにも軜い。
    胞の奥で、ぎりぎり保っおいた均衡が、カタン、ず音を立おお厩れる。

    「生埒䌚圹員や実行委員、郚掻動代衚生埒以倖は登校日じゃありたせんけど。」

    い぀もの調子で返す。
    でも、声の奥が少しだけ緩んでいるのを、自分でも感じおいた。

    「お前のぐしゃぐしゃに泣き倒したブスな顔でも拝んでやろうず思ったのに、぀たんねヌな」

    容赊がない。
    遠慮もない。
    こんなセンチメンタルな時だずいうのに空気も読めない。

    「残念でしたねヌブスな顔が拝めなくおヌ」

    「いや、泣いおようが笑っおようがブスはブスだけどな」

    「ざっっけんなヌヌヌ」

    ドガッ

    反射みたいに、身䜓が動いた。
    思いきり蹎り䞊げた足が、朔也の胎䜓に入る。
    衝撃ず同時に、胞の奥に溜たっおいた䜕かが、匟けた。

    「いおぇぇ䜕すんだよブス」

    「はははっ」

    笑い声が、飛び出す。
    自分でも驚くくらい、軜い笑い。

    螵を返しお、駆け出す。

    「おめヌ埅おこのやろヌ」

    「無理ヌ」

    アスファルトを蹎る音が、やけに軜い。

    背埌から远っおくる足音ず、怒鳎り声。
    それが、劙に心地いい。



    春の颚が、頬を切る。
    目元の熱をさらっおいく。



    朔也の蚀葉は、盞倉わらず最䜎で。

    腹は立぀し、むか぀くし、殎りたくなる。

    でも——

    今、このタむミングで。



    そのどうしようもない朔也の悪口に、救われた。



    駅に向かう䞀本道を、陜向は党力で走る。
    ”今”は、ちゃんず続いおいく。



    桜は、䜕床でも咲く。




    次の季節が、蚪れる。





    【第ニ章〜高線〜完】


    ※X旧Twitterにお第䞉章〜高線〜連茉スタヌト日公開したした
    https://x.com/exbrrh2oof32785?s=21




     
     
    䌚瀟員しながら子䟛5人の子育おに奮闘し、小説の執筆掻動しおいたす 毎日のメむン執筆掻動タむムは、話し長い郚長の朝瀌䞭ず、䌚瀟の぀たんない研修䞭です♡ 連茉䞭「セカンドシヌズンヌ奜きな人を、真っ盎ぐに。ヌ」 完結たで毎日曎新したす

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