メインコンテンツへスキップ
見出し画像

命には、お金がかかる




    トイプードルのララは、風邪こそ一度も引かなかったが、たくさんの病気を経験した。

    我が家に迎えて一年ほど経ったとき、尿結石が見つかった。

    お医者さんに「宝石箱みたいやろ」と言われたそのお腹の中は、
    なるほど、キラキラとしていた。


    当時犬のご飯は、安いものなら一袋五百円程度で売られていた。
    ララは病院食となり、一袋三千円のご飯を食べることになった。
    おやつも市販のものは与えてはいけない。病院で販売しているものだけ。


    尿結石とは上手につきあっていた。

    少し悪化する瞬間はあっても、またすぐに元に戻る。
    そんなことを何年も繰り返した。




    ララが八歳になったころ、心臓病が見つかった。

    激しい運動は控えるように言われたが、それ以外に大きな制限はなかった。

    ただ、三ヶ月に一度の心エコーが必要となり、毎日薬を飲むことになった。

    それでもララは心臓が悪いなんて信じられないほどに元気だった。
    今までどおり走り回るし、食欲もしっかりあった。


    ララは敏感な子だった。

    どれだけ上手にフードで隠しても、薬だけを探し当てて吐き出すことがよくあった。

    そういうときは、
    「姉ちゃんが汗水流して稼いだお金で買った薬! 心して飲めー!!」
    と、情に訴えた。
    犬に情が伝わるかは謎である。




    ララが十歳になったとき、今度は膵炎が見つかった。

    非常に危ない状態だったらしい。
    母の機転で九死に一生を得たララは、三日間の入院となった。

    ララは家族以外には懐かない子だった。
    けれど、こういうときだけは感心するほど賢い。

    自分で「この人」と決めた相手を一人選び、その人にだけ懐いて、世話をしてもらえるように立ち回るのだ。

    入院中はずっと一人の看護師さんにくっついていたらしい。

    けれど退院の日、私が迎えに行くと、その看護師さんまで途端に“敵”になる。

    ヴゥ〜……と唸り、触ろうものなら噛みつかん勢いで吠えた。

    なんとか入院生活を乗り切ったララだったが、その費用は、なかなか飼い主の財布を軽くした。

    さらにこれからは、毎日液体の薬を飲まなければならないという。

    これが、高い。

    二ヶ月で一万五千円。

    ララが生きている限り、これをずっと続けなければならない。

    その薬を提案されたとき、もう一つ別の選択肢も示された。

    あまりに高価なため、続けられない飼い主もいる。
    その場合は、ステロイドを使うことになるのだという。

    ただし、ステロイドは強い薬だ。
    体にまったく負担がないわけではないし、長く続けて良いものでもない。
    それなら、一カ月に千円程度で済むと言われた。

    ララの命を、お金と天秤にかけなければならないのか。

    そう思うと、なんだか悲しくなった。


    それでも、私には一択しかなかった。

    高くても、ララが長く生きていられる薬がほしい。
    ララが苦しまず、元気に過ごせる薬がほしい。

    自分に出せる間は、どれだけでも、お金くらい出す。

    ちょうどその頃、私は出世したばかりだった。
    ああ、ララのための出世だったのか、と思った。


    ペットを飼うということは、想像以上に選択の連続だ。

    財布はどんどん軽くなった。

    それでも私は、一度もその選択を後悔したことがない。


     
     
    心のこと、仕事のこと、過去を振り返って思うこと。 そして大切な犬たちとの暮らしの中で感じたことを、自分の言葉で綴っています。 読んでくれた人が少しほっとできるような場所になればうれしいです。

    あなたへのおすすめ