金木犀より近いひと
夕暮れの下り坂を
金木犀の香りが風に揺れてほどける
自転車のペダルを踏む彼の背中に
そっとおでこを預けた
伝わってくる身体の温もりに
頬を撫でる秋の風まで、遠くなった気がした
スピードを上げて、風を切る音に
小さく鼓動の音が重なる
「すこし寒いね」
そう言って腰にまわした腕に力を込め
身体をしっかりと寄せる
強ばっていた彼から
少しずつ力が抜けていくのを
なんとなく感じた
恋をしている、と気付くのは
きっとこんな何気ない瞬間
甘い香りとその温もりが
じんわり染みていく
どこまでも続くようなこの坂道を
もう少しだけ、このままで
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