Popcorn
ボタンを押すとエンジンが小さく目覚めた
密室のなかに広がる甘い香りと
カチリと重なるシートベルト
それだけで、私だけの特等席の準備は完了
アクセルを踏み込むふたりの背中が少しだけ沈み
車体は軽やかに走り出す
流れる街灯を背景に
あなたの横顔をこっそり横目で盗み見る
「どこ行こっか」
その声を聞くだけで
胸の中がポップコーンみたいに弾けてしまう
オーディオから流れるお気に入りのメロディ
「この曲知ってる?」
「うん」
その返事に少しだけ緊張がほどけて
ふたりでハミングする
思わず顔を見合わせて笑い合う
交差点の赤信号
不意に伸びてきた大きな手が
私の頭をポンと撫でる
「緊張しすぎ」ってからかわれて
赤くなった頬を窓ガラスに押し当てた
こんなドキドキ、絶対にバレたくないのに
それでも、この特等席は誰かに譲りたくない
私の恋はいつまでも弾けて、加速していく
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