
詩『ドライトマト』#創作大賞2026#オールカテゴリ部門
やさしい幽霊が真夏の冷蔵庫に横たわっている、ミニトマトを取り出して、半分に切って並べてから、軽く塩を振る、ドライトマトを焼くように言葉を編んでゆく、生者は死を待ちながら、やがて干からびてゆく、しかしそれは花が朽ちるのとは異なり、みんな太陽を浴びて、甘酸っぱい濃度を凝縮しているのだ、息を吐いて、吸って、吐いて、日常を掬ってゆく、そしていつか冷蔵庫で視線を冷却した幽霊に昇華される、水面が揺れるように、遠くに棲むひとにひかりを届けたい、水面が震えるように、近くに棲むひとにおとを囁きたい、そう願いながら、幽霊は透明な肢体で詩を綴る、色とりどりの光を反射しながら、香ばしい音を弾きながら、言葉があなたたちのなかで舞踏を始める、そしてドライトマトは噛み砕かれて飛び散り、ひとり、ひとり、の食道で躍動してから、だんだん吸収されてゆく、血になって、肉になって、したたかな味が広がる、またその味が食べたくなって、冷蔵庫の氷山を探検しているうちに、幽霊のことを思い出す、はっとして、ミニトマトを取り出して、吸って、吐いて、吸って、半分に切りながら並べて、軽く塩を振る、そして自分なりに、ドライトマトを作り上げる、そうやって言葉はつづいてゆく、たとえ言葉が見えなくなっても、たとえ言葉が聴こえなくなっても、ドライトマトの味の記憶は消えずに。

photo:見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、あずき*mさん)
picture:GoogleGemini✕ 未来の味蕾