
肩書にはない、自分だけの強みを仕事に<5.遠回りが強みに変わるとき>
前章では、あなたらしく居られる場所についてお話をしました。
自分に合う居場所をさがす過程では、報われなかった努力や合わなかった環境など、これまでの経験を何度も振り返ることになります。
それは、なかなか勇気のいる作業かもしれません。でも、これまで傷ついたことや悔しかったことも、無駄ではなかったのかもしれないと気づくきっかけになるのです。
もちろん、それらの感情を美化するわけではありません。ただ、遠回りにしか見えなかったことは、自分の強みや届けたい想いにもつながっていくのです。
この章では、遠回りに見えた経験が、どのように「自分だけの強み」に変わっていくのかをお話ししていきます。
報われなかった想いも、愛しさへ
遠回りしている最中は、その経験にまさか意味があるとは思えないもの。
むしろ、
「何のためにこんな思いをしているのだろう。」
「どうして自分だけ、こんなにうまくいかないのだろう。」
そんなふうに、出口の見えない気持ちになることもあります。
「いつか役に立つ」と言われたとしても、その真っ只中にいる時には、簡単に受け止められないこともあるでしょう。
私自身、これまでの人生を振り返ると、決してまっすぐな道を歩いてきたわけではありませんでした。
銀行員として働いていた頃は、努力や実力よりも、学歴や肩書きで見られることに悔しさを感じていました。他の会社で働いても、自分の本音を押し込めながら、周りに合わせることばかりを考えていました。
離婚をしてシングルマザーになった時には、自分ひとりの愛情でも子ども達をしっかり守れるはずだと信じていました。現実は、子ども達が学校生活でつまずき、不登校や行き渋りに向き合う日々でした。
「頑張っても、頑張っても、報われない……。」
いつもこの感覚に引き戻されていたのです。ただ悔しかったし、悲しかったし、どうしてこんなことが起きるのだろうと何度も思いました。
だからこそ、遠回りしている最中に、「この経験には意味がある」とすぐに思えなくてもいいのだと思います。
自分の過去に向き合うときには、悔しかったなら思い切り悩み、悲しかったなら思い切り泣いて、吐き出したかった胸の内を身近に話せる人に言葉にしてみてください。
こういう作業があって、ふたたび前に進もうとする。それでも、また転ぶかもしれません。ただ、この時に後戻りをしているわけではないのです。
同じ失敗の繰り返しと感じるかもしれませんが、転びながらも自分に向き合うことで、いつか「気づき」がやってきます。
私は40歳を過ぎて、ようやく「本当の自分」を知ることができました。自分の失敗や報われなかった体験すべて含めて、自分の人生を愛せるようになったのです。
悔しかった想いや悲しかった想いも、少しずつ抱きしめるように受け止めてあげてください。
「あの時の私は、よくがんばっていたね。辛かったね。苦しくかったね。」
こんなふうに自分を認めてあげることで、自分や自分の人生をいたわり愛することができるようになるのです。
ここでようやく、これまでにはなかった新しい道しるべ見えてくるはずです。それは、心から「自分らしく生きられる」道と感じられるでしょう。
バラバラに見えた経験が、一本に
そのときは意味など何もないと思えた体験でも、あとから振り返ると、不思議と一本につながっていることがあります。
私自身も、仕事で感じた違和感、家庭の中で向き合ってきた現実、占い師として人の悩みに触れてきた時間など、一見するとバラバラに見える経験をいくつも重ねてきました。
でも今振り返ると、どれも人の「言葉」や「想い」を大切にしたいという気持ちが共通して、今の仕事につながっていたのだと思います。
銀行員時代の窓口対応
→ 人の不安を聞き取り、安心できる言葉を探す力へ
会社員時代の息苦しさ
→ 本音を押し込めている人の苦しさに気づく力へ
離婚やシングルマザーとしての現実
→ きれいごとでは済まない悩みに寄り添い、現実の中で希望を見つける視点へ
子ども達の不登校や行き渋り
→ 環境に合わない苦しさを、本人だけの問題として片づけない視点へ
占い師活動
→ 言葉にならない本音を整理し、その人が前を向ける言葉へ
ココナラ活動
→ 自分の言葉や鑑定を、必要としてくれる人に届ける場所へ
Kindle出版
→ 自分の経験や想いを、ひとつの形として残し、届ける手段へ
今、こうして文章を書いていること
→ 私が通ってきた遠回りを、誰かが自分の強みに気づくための言葉へ
このように並べてみると、バラバラに見えていた経験の奥には、
「人の本音に気づきたい」
「言葉にならない想いをすくい上げたい」
「誰かが自分の力に気づくきっかけを届けたい」
このように共通した想いがあったのだと分かります。
つまり、遠回りに見えた道のひとつひとつが、今の私の「言葉で人に寄り添う仕事」へつながっていたのです。
もちろん、その最中にいる時には、そんなふうにきれいにつながっているとは思えませんでした。むしろ、何度も道を間違えたような気がしていました。
「どうしてこんなに回り道をしているのだろう。」
「もっと早く、自分らしく生きる道に気づけなかったのだろうか。」
こんなふうに思ったことさえあります。当時は、何も達成できないままに年月だけが過ぎていくことに、焦りを感じていたのです。
でも、今なら分かります。
遠回りをしたからこそ、同じように遠回りしている人の気持ちが分かるのです。
本音を押し込めてきたからこそ、言葉にできない想いを抱えている人の気持ちに気づくことができます。
報われなかった悔しさを知っているからこそ、自分には何もないと思い込んでいる人が気づくことのできなかった「強み」を伝えることができます。
バラバラに見えた経験も、あとから振り返ると、「このために通ってきた道だったのか」と思えるように、一本につながっていったのです。
もしかすると、過去を振り返っても、「まだ人生の意味が見えてこない」と感じる方もいるかもしれません。
でも、焦らずゆっくりと時間をかけて振り返ってみてください。いつか必ず「こうなるためだったのか」という答えを導けるはずです。
遠回りした人ほど、届けられるもの
バラバラに見えた経験が一本につながったとき、そこには「自分だけが届けられるもの」が見えてくることがあります。
それは、苦しかった経験だけではありません。
人から頼まれやすかったこと
気づいたら続けていたこと
自分では当たり前だと思っていたこと
苦手だと思っていたこと
そのどれもが、あとから振り返ると、誰かに届けられる言葉や、誰かの力になる形へ変わっていくことがあります。
それはまぎれもなく、自分らしく居られる場所をさがしてきた、時間の証なのです。
履歴書に書ける経歴を持つ人だけが、人の心を動かすわけではありません。一度も失敗をせずにうまく進んできた人だけが、誰かを導けるわけでもありません。
むしろ、遠回りした人だからこそ届けられる言葉があります。
迷った経験がある人は、同じように迷う人の気持ちを汲み取ることができます。自分を責め続けてきた人は、同じように自分を責めている人に、やさしい言葉を届けることができるのです。
そして、苦しい経験だけではなく、自分では何気なく続けてきたことも、誰かにとっては大きな助けになることがあります。こうしたことは、自分ではあまりにも自然にやっているため、「強み」だと気づきにくいものです。
「これくらい、誰にでもできる」
「仕事にできるほどのことではない」
そう思って、見過ごしてしまうこともあるかもしれません。
でも、誰かにとっては、それが救いになることがあります。
自分では当たり前にしていたことが、誰かにとっては安心になる。自分が自然に選んできた言葉が、誰かにとっては前を向くきっかけになる。
自分らしさを求めて歩いてきた時間は、同じように迷いながら進もうとしている人にとって、ひとつの「道しるべ」になるのです。
強みは、いつも分かりやすい形で目の前にあるとは限りません。資格や肩書きのように、誰から見てもすぐに分かるものばかりではありません。
むしろ、日常の中で自然に続けてきたことや、人から何度も頼まれてきたこと、自分では苦手だと思っていた一面の奥に、静かに眠っていることもあります。
だからこそ、自分の歩いてきた道を、すぐに正解か不正解かで判断しなくてもいいのだと思います。
遠回りは、決して無駄だったと決めつけなくていいのです。それは、同じ目線で「私もそこを通ってきたよ」と、伝えるためのものかもしれないのです。
おわりに
ここまで、引っ掛かる言葉の奥にある本音、忘れられない悔しさ、日常の中にある強み、そして自分らしく居られる場所についてお話ししてきました。
私の人生は、決して輝かしいものばかりではありませんでした。
それでも、苦しかったことや、うまくいかなかったこと、何度も自分を責めたことの中に、あとから「強み」に変わるものが隠れていました。
あなたにも、遠回りだったと思う経験があるかもしれません。
「あの時、もっと違う選択をしていれば。」
「もっと自分に合う場所を選べていれば。」
そう思うこともあるでしょう。でも、その遠回りの中でしか見えなかったものも、きっとあるはずです。
あなたが悩んだからこそ、気づける痛みがあります。あなたが傷ついたからこそ、選べる言葉があります。
あなたが遠回りしたからこそ、誰かに届けられるものがあります。あなたの遠回りは、誰かの道しるべになるかもしれません。
そしてその道しるべは、特別な肩書きや立派な実績だけでできるものではありません。
あなたがこれまで感じてきた違和感や心の奥にしまい込んできた本音。気づいたら自然に続けてきたことや自分では苦手だと思っていた一面。
そのすべてが、少しずつ重なり合って、あなたらしい強みを形づくっているのだと思います。
「自分には、特別なことも強みも何もない……。」
そう感じてしまう時ほど、どうか、自分の歩いてきた過去を責めずにいてあげてください。どうか、時間がかかっても受けて止めてあげてください。
遠回りに見えた道の中にも、自分が心から愛せる「強み」が眠っているかもしれないことを、どうか、忘れないでください。
自分の本音に気づき、自分の強みを見つめ、自分らしく居られる場所をさがしていくこと。
その先で、あなたの遠回りは、きっと誰かに届けられる言葉へと変わっていくはずです。