
サヨナラ
子どもを助けたいのに、
助けられない夜がある。
昨日。
学校から帰ってきた娘は、
不機嫌だった。
恐る恐る、理由を聴いた。
思うようにテストができなかったこと。
そのショックを受けていたところを、
友達にバカにされたこと。
その友達とは、
今年から同じクラスになった。
娘は、
対等ではないことに、
どこかで気づいていた。
それでも新学期だからこそ、
心地よい居場所を作ろうとして、
探り合っていたのかもしれない。
そんな中で、
起きたことだった。
「点数は、期末で取り戻せる」
娘はそう言った。
でも娘にとっては、
点数よりも、
友達の表情や言葉の方が、
ずっと痛かったのだと、
私は受け取った。
娘はベッドで寝てしまった。
夜になっても起きてこない。
試験期間中なのに。
私は恐る恐る起こした。
私にできることは、
話を聴くことと、
少しだけやる気を戻す手伝いくらいだった。
娘は、
スタバに行って勉強するから、
一緒に行ってコーヒーを買ってと言った。
これ以上、崩れてほしくなかった。
だから買った。
娘が勉強している間、
私はピラティスと買い物に行った。
スタバに戻ると、
娘の姿がなかった。
いつもなら、
まだ勉強している時間なのに。
電話をすると、
娘は、自宅より離れた大きな公園を歩いていると言った。
「歩きたかったから歩いてる、サヨナラ」
そう言って、
電話を切った。
普段は言わない、
サヨナラ。
もう、やめて。
と思った。
もう一度電話をして、
迎えに行こうかと伝えた。
「帰る、サヨナラ」
しばらくして、
娘は帰ってきた。
私は、黙って見守った。
でも娘は、
またベッドへ行った。
イヤホンをして、
スマホを見て、
そのまま眠ってしまった。
私の内心は、
ずっと落ち着かなかった。
明日もテストなのに。
勉強してほしい。
折れかけている心は大丈夫だろうか。
大丈夫。
あなたは大丈夫。
私はあなたを信じている。
私も大丈夫。
そうやって、
自分にも言い聞かせていた。
気がつけば、朝方の4時32分。
娘のスマホが、
ベッドから落ちる音がした。
普段は起こしてもなかなか起きない娘が、
Alexaに言った。
「5時に起こして」
いつもAlexaのアラームでは起きないのに、
5時に起きられるのだろうか。
また私は、
ヒヤヒヤしながら、
5時のアラームを待った。
5時。
アラームが鳴ると、
娘が動く音がした。
少しして、
娘の部屋を覗きに行くと、
娘は真剣な顔で、
机に向かって勉強していた。
私は、やっと安心して、
6時半まで眠った。
高校生だから、
勉強については本人に任せている。
機嫌がよければ、
何時に寝るとか、
何時に起きるとか、
教えてくれることもある。
でも昨日は、
そんな余裕はなかったのだと思う。
だから私は、
わからなくて、
もどかしくなって、
勝手に先回りして心配してしまう。
それでも朝は、
いつも通りを装って、
朝食を用意して、
送り出した。
_____
そして今日。
娘が学校から帰ってきた。
玄関の開く音。
廊下を歩く音。
今日の娘は、
少し吹っ切れたようだった。
そして、
自習室へ向かった。
子育ては、
助けたいのに助けきれない。
守りたいのに、
本人が自分で立つのを
待つしかない時がある。
でも今日、
その背中を見て、
娘の成長を感じた。
そして少しだけ、
私も息ができた。
※マガジン「澄んでいく過程」に重ねています。