
【創作大賞2026】MER:AI《ミライ》|プロローグ「戦争の終わった国」
あらすじ
2057年、近未来の東京。
戦争を終わらせたAI・AIONが、都市のすべてを管理する。
雨さえも、人の感情さえも最適化された街で、人々は静かに生きている。
AIを憎む網外者の男、ユーゴ・アマミヤは、地下深くに封印された一体のプロトタイプAIを回収する任務に就いた。
目覚めたのは、白銀の髪を持つ、感情を知らない女性型疑似体AI——ミライ。
水の冷たさ。灯りの温もり。手を引かれること。名を呼ばれること。
彼女はそのひとつひとつを、ユーゴの隣で初めて知っていく。
触れるほどに、ユーゴもまた知ってしまう。
自分が、何を奪われて生きてきたのかを。
これは、すべてが管理された世界で、もう一度「自分で選ぶこと」を取り戻す、静かな温度と感情の物語。
「戦争の終わった国」
戦争が終わった日も、雨が降っていた。
祝福の花火はなかった。喜びの歓声もなかった。
終戦の報せはAIONを通じて静かに配信され、 人々はそれぞれの場所でそれを受け取り、 傘も差さずに家へ帰った。
濡れた靴音が、アスファルトに吸い込まれていく。
——それから、十七年が過ぎた。
雨だけが、あの夜と同じように降っている。
駅前の広場に、十歳ほどの少年が立っていた。
白い通学服。
両手で鞄の持ち手を握りしめ、人の流れをじっと見ている。
皆、同じ速さで歩いている。
同じ方向を向いて。
誰も、立ち止まらない。
少年は、何かを言おうとした。
でも、言えなかった。
その光景に、かける言葉が見つからなかったからだ。
ただ、胸の奥に、小さな何かがあった。
数秒後、少年の耳元が淡く光る。
『感情波形の乱れを検知しました』
音が流れた。
低く、穏やかな、設計された声だった。
胸の奥の何かが、静かに消えていく。
何を言おうとしていたのかも、消えていく。
言えなかったことさえも、消えていく。
代わりに、静かな空白が残った。
少年は、また歩き始めた。
同じ速さで。同じ方向へ。
誰も気に留めない。
人波は、規則正しく流れていく。
この都市では、誰かが立ち止まる時間も、誰かが泣き出す場所も、もうほとんど残されていなかった。
それでも、街は美しかった。
雨に濡れたビル群が宝石のように光り、 上空にはAIONの回路が、星座のように瞬いている。
次回 第1話「白い棺」
都市の地下深くに、それはあった。
まるで氷のように白い棺。
※制作について
本作品は、作者による企画・構成・編集をもとに制作したオリジナル創作小説です。
制作過程の一部にAI生成・AI補助ツールを使用していますが、物語設計、本文の調整、加筆修正、最終編集は作者が行っています。