
そばにある理由
私の机には亀がいる。
いるとは言っても、リアルな造形のフィギュアだ。
いつから側にあったのかも覚えてはいない。
昔、両親に尋ねた事があったが、二人とも首を傾げて「覚えていない」と困り顔をされた。
いつ、どこで、だれに貰ったのか?
不思議な亀との関係は幼少期から続いている。
そして、困った事に私はこの亀を捨てる事ができずにいる。
顔ほどの大きさがある海亀のフィギュア。
作業机の一角を大胆に占拠する亀の置き場に困ったことは数知れない。
あまりにスペースを取るものだから、押し入れの奥へ仕舞い込んでいたことだってある。
でも、気づけば取り出して目の届くところに戻っている。
捨てる機会だって何度もあった。
実家を出た時。結婚した時。引っ越した時。
「もう、いいかな?」そんな事を思いながらも、ダンボールに詰めては新居に迎え入れた。
これは、もう愛着ではなく執着かもしれない。
思い出と情、そして不思議な出会いが絡み合い、亀のフィギュアは手離せないものになっていたのかもしれない。
いまこの記事を書きながら、側にある亀に手を伸ばして甲羅を、そっと撫でてみる。
変わらず、少し柔らかくも樹脂特有の手触りだが、不思議と気持ちを落ち着かせてくれる。
私にとっての大事な宝物。
意識をしなくても、長い月日を共にすれば、なんでもないモノでも、大事なモノへと変化する。
そんな、少しおかしな宝物。