
SS「いかりをあげる」
創作ショートショート 〈 いかりをあげる 〉
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嵐の大海原で、船は錨を上げずにいた。
流されないように、流れないように。
迷わないように、助けてもらえるようにと。
船の灯りは小さく震え、地図を照らす。
ついに、その火は、ふっと。
なんでもないように、吹き消される。
このままでは、いずれ自らも波に呑まれる。
進むも地獄、留まるも地獄。
重く湿った空気が船内に沈黙を作る。
ならば、ただ待つだけではいられまい。
徐にささくれた指が己の顎を撫で
溜息を吐き、チラリと後方をみやる。
側に控える船員も目だけが
貪欲な生存欲に駆られ
暗い海に眩しいほど光る。
いかりをあげる
と、船長が唸る。
二つ返事で足音が、四方八方に散る。
海をかける民は、自らの長に従順だ。
きっと皆、心は1つ。
一か八か、命綱はない。
これは所謂、大博打。
船の辿る先はまだ誰も知らない