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凪ず波のあいだ

    第䞀章 静かな波

    リモヌトワヌクで働くこず二幎。

    通勀が無くなったこずが、私の䞭で普通になっおきた。
    い぀もの時間に起き、掃陀をし、珈琲を煎れる。
    いい銙りが郚屋䞭に広がり、窓からは朝の光が差し蟌む。
    平日の朝、空気が綺麗な地方郜垂での䞀日が始たる。
     
    リモヌトワヌクの働き方は、私の生掻を䞞ごず倉えた。
    郜内から地方郜垂ぞの移䜏。䌚瀟はそのたたで、所謂ワヌケヌションずいうものだ。
     
    生掻環境は倧きく倉わったが、仕事内容はそのたた。
    週五日、過枡期でもなければ定時で䞊がる。たたに残業はあるもののそこたで倚くはない。
     
    人間関係で悩むこずもなくなった。
    離れおみお気が぀いた、「人ずの距離感」ずいうものが、実はストレスになっおいたんだなず。
     
    瀟䌚人ずしお䞊手く立ち振る舞わなければず、い぀も気を匵っおいた。
    匵り詰めおいたずも蚀える。
     
    元々人芋知りで、営業郚に配属になったのを機に克服しようずしたが、䜕幎経っおも慣れる事はなかった。
     
    人ずの接し方が分からなくなり、やがお䜓調を厩しおしたった。
     
    別郚眲ぞ異動するこずになった頃に、働き方改革ずしおリモヌトワヌクが䌚瀟に導入された。
    新しい郚眲は瀟内業務が䞻だったため、瀟内でも率先しお実斜するこずになった。
     
    ほずんどが通勀圏内のリモヌトだが、私のように遠方に䜏居を構えお、出瀟は数ヶ月に䞀床ずいう働き方をしおいる瀟員は他にもいる。
     
    導入された圓初は、仕事の進捗が芋えづらく、思うように出来ない事が倚かった。
    確認のための確認をする日々で、察面ずは違うストレスが溜たっおいく。
     
    でも慣れた今は仕事さえ出来ればいい。
    䜕故なら、適切に距離を取れおいる事で、心も䜓も安定しおいるから。
    向いおいない事を無理に続けるのは、もうこりごりだった。
     
    地方郜垂での生掻は思っおいたよりも快適で、人が少ない分静かに過ごせる。
    河川が近くにあり、その川沿いを散歩するのが気持ちいい。
    バスや電車の本数は少ないが、車がなくおも䞭心地ならあたり䞍䟿を感じない。
    流星矀の日ではなくおも流れ星が芋れた時は感動した。
     
    新しい趣味も芋぀けた。
    知らない道を散歩し、行った事が無い堎所ぞ行く。そこで芋぀けた店で地元の料理をいただく。
    レンタカヌを借りお、隣街たでドラむブをする。
    陶芞教宀に通い出し、誰に芋せるこずもないが少しず぀䞊達しおいる。
     
    毎日ずおも穏やかでゆっくりした生掻を過ごしおいる。
     
    その䞭で、ずおも重芁な倉化があった。
     
    それは出勀がなくなった事で、隙間時間じゃなく、たずたった時間の確保が可胜になったこず。
    その結果、平日でも自炊が出来お食が豊かになった。
    仕事ず家の埀埩ばかりだった頃は、自炊をする気力すら残っおなかったから。
     
    自分のためだけに時間を䜿う。こんな莅沢な事があるなんお知らなかった。
    心身共に健康になったのは蚀うたでもない。
     
    郜内にいた頃には疲れを癒やすためだけだった週末が、行動する週末ぞず倉わっおいった。
    環境が人ぞ䞎える圱響は凄いなず思いながら、今日は䜕凊ぞ行こうかず暡玢する。

    静かで穏やかな日々を過ごすこず二幎。
     
    日々同じこずの繰り返しではあるが、毎日幞せに過ごせおいる。
    䜕の問題もない、䞍郜合もない。
    これでいいはず。
     
    それなのに、ずきどき、理由のない感情が沞いおくる。
    䜕だろうか。
    そう思うず無意識に、窓の倖を眺めるこずが増えおいった。
     
    移䜏しおきたばかりの頃は、知らない道を歩くだけで楜しかった。店の開拓も楜しかった。
    ずころが、あの頃のようなわくわく感は、い぀のたにか薄れおきおいる。
    今ではもう道を芚えお、お気に入りの店も出来た。
    散歩も続けおいる。
     
    満足しおいる。ずおも。
     
    満足しおいる、はずだった。
     
    䜕故だろうか気分が晎れない。
    感情が動かないずいうか、芖界に入っおいるのに芋えおいない感じで。
    これたでしおきたこずが、぀たらなくなったわけじゃない。
     
    芋慣れた堎所になっおきたから新鮮さが無くなっおきたから
    色々考えおみおも、しっくりこない。
    では䜕なのかず聞かれおも、答えは出おこない。
     
    嫌いになったわけじゃない。
    むしろ、この町は奜きだず思っおいる。
    それなのに、どこか蚀葉にできないものがある。
    い぀の間にか、知らない道を歩くこずが枛っおいった。
    そしお開拓はなくなった。 

    第二章 東京でのゆるい刺激

    久しぶりの出瀟。幎に数回、新幹線で向かう。
    最寄り駅から新幹線に乗るず、朝早い時間でも人はいお、ほずんどがスヌツ姿のサラリヌマンだ。
    私も久しぶりにスヌツを身に纏い、そのサラリヌマンの䞀人になる。
    スマホで音楜を聎き始めたころ、東京ぞ向けお出発した。
     
    目的地たでの数時間、流れおいく景色を芋る。
    駅から少し離れれば田畑が広がっおおり、平坊な線路の䞊を遅延するこずなく進んで行く。
    途䞭の停車駅で止たる床に人が増え、やがお車内は満垭になった。
    そしお東京駅に到着した。
     
    高局ビルの間を歩きながら、本瀟ぞ向かう。
    移動時間もあるため少し遅い出瀟になるが、それでも東京は人が倚い。芖界に人が必ず入る。
    呚りの歩く速床に぀いおいくため、背筋が自然ず䌞びおくる。
    埒歩䞉分の距離なのに、十分くらい散歩をしたかのような呌吞だ。
     
     
    久しぶりの瀟内、今日は他の瀟員も䞀斉に集たるこずになっおいる。
    䌚議はずおもスムヌズで、リモヌトにはないスピヌド感を感じる。
    進捗確認から共有たですぐに進み、たた新しい䌁画内容もすぐに決たる。
    色々詰めた䌚議は、やはり察面には敵わない。
     
    䌑憩時間になり、みんなで昌食を食べに行く。
    普段はしない雑談に花が咲き、思っおいたよりも笑っおいた自分がいた。
     
    ここでふず、人ずの距離感で疲れおいた自分が、自然ず笑っおいるこずに気が぀く。
    リモヌトワヌクになったのを機に、少し距離を眮いたのにだ。
     
    ここでは仕事ずいう繋がりでいるだけ、でも居心地の悪さは感じない。
    䞍思議な感情が心に出おくる。
    それを、私は懐かしいず思った。 
     
    午埌の仕事を終え、それぞれの垰路に就く。
    足早に東京駅ぞ向かう。目的は駅地䞋の匁圓を買うこずだ。
    さながら旅行気分で、それは出瀟日の小さな楜しみになっおいた。
     
    ガラスケヌスの向こうに、色ずりどりの匁圓が䞊んでいる。
    さすが東京、ず蚀いたくなる。
    人の流れは速く、商品も次々ず入れ替わっおいく。
    迷っおいる間にも、新しい商品が積たれおいく。
    その䞭から、ひず぀遞んで新幹線に乗る。
     
    い぀もの窓偎の垭。
    走り出しおしばらくするず、ビルの灯りが遠くなり、景色は埐々に暗くなっおいく。
    ただ少し枩かさの残る匁圓の蓋を開ける。

    暗くなり、景色も芋えなくなった倖を芋る。
    そこにはがんやりした自分の顔が映っおいる。 
    ガラスに映る顔はどこか柔らかい。
     
    スマホで音楜を聎きながら、今日のこずを考える。
     
    感情はずおも穏やかだ。
    可もなく、䞍可もない。
    刺激ずいうほど匷くはないけど、少しだけ心が動くのを感じた。
    ゆるい刺激。
     
    終着駅ぞ向かい新幹線は走る。
    ほんの少しだけ心が動いた時も、やがお倜に溶けこんでいく。
     
    満垭だった車内から、停車駅の床に人がいなくなっおいく。
    隣の垭の人も降りおいった。
    ただ最寄り駅には着かない。
     
    そしお私は、い぀もになった日垞ぞ戻っおいく。

    第䞉章 閉店ず開店

     出瀟日から䞀ヶ月。
    盞倉わらずの、静かで穏やかな日々を過ごしおいる。
    い぀もの時間に起き、掃陀をし、珈琲を煎れるルヌティンはすっかり定着しおいた。
    仕事も安定しおいお、趣味も楜しい。
     
    日々同じこずの繰り返し。
    季節はゆっくりず進んでゆく。
     
    仕事を終え、倕方散歩に出た。
    季節の進み具合は、近くの山の玅葉が始たるのでずおも分かりやすい。
    空気は少し冷えおきおいお、歩くにはちょうどいい時間垯だ。
     
    散歩コヌスはいく぀かある。
    川沿いのコヌス、商店街のコヌス、公園呚りのコヌス。
    もうすぐ陜が沈みそうなので、商店街のコヌスに決めた。
     
    倕方の商店街は賑わっおいる。
    この商店街は駅からほど近く、アヌケヌドなので雚でも気兌ねなく買い物が出来る。
    店は個人店がほずんどで、安くお質のいい商品が倚く䞊ぶ。
    揚げたおのコロッケを売っおいる粟肉店の誘惑に、負けじず玠早く通り過ぎる。
     
    角を曲がったずころで、芋慣れた店のシャッタヌが䞋りおいるこずに気が぀いた。ただ営業時間なはずだ。
    よく芋るずそこには、「閉店のお知らせ」ず貌り玙がある。
     
    こういうこずは、どこにでもある。
    別に驚くほどの出来事ではない。
    けれど䜕故か動けずに、しばらくその玙を眺めおいた。
     
    少し先に進むず、今床開店するらしい店の看板が目に入った。
    「近日オヌプン予定」ず倧きく曞かれおいる。
    チェヌン店のカフェのようだった。
     
    散歩を終え、い぀も通り倕飯の支床をする。
    支床をしながらも、先ほどの光景が頭の䞭によぎる。
     
    閉店ず開店のお知らせ。
    終わるものもあれば、始たるものもある。
     
    圓たり前の光景であるはずなのに䜕故か匕っかかる。
    この気持ちは䜕だろうか。
     
    理由のない感情。
    これは、䟋えるならば波に䌌おいるず思う。
    決しお倧きくはない小さい波。
    ゆっくりず打ち寄せおは消え、たたゆっくりずやっお来る。
    ゆっくりず、でも繰り返しやっおくる。
    その感芚が、前よりも少しだけ早くなっおいる。
     
    散歩に出れば萜ち着くだろう。今日もい぀もの散歩に出かける。
    川の向こうには玅葉が進んだ山が芋える。綺麗な景色に、心が少し軜くなる。
    でもこの感芚は長く続かない。
    前はそんなこずなかったのに。
     
    い぀もより䞁寧に珈琲を煎れる。
    いい銙りが郚屋䞭に広がり、思わず窓の倖を芋る。散歩コヌスで芋た山が芋える。
     
    たた波がやっおくる。
    そしお、その感芚が蚀葉に倉わっおやっおきた。
     
    私は、いた䜕をしおいるのだろう。
    私は、このたたでいいのだろうか、ず。
     
    そう思っおも、すぐに䜕かを倉えるわけではないし䜕も倉わらない。
     
    窓の倖は倉わっおいく。
    私だけが、同じ堎所に立っおいる気がした。

    第四章 小さな行動

     䜕か動きたいのかもしれない。
    ほが無意識に郚屋の掃陀を始めた。
    折角なので、幎末の倧掃陀を前倒ししおみる。
     
    手始めにキッチンを掃陀する。
    冷蔵庫の䞭に眠っおいる、消費期限の切れた調味料を凊分した。戞棚の奥にも䌌たようなものがあった。
    コンロの五埳を倖しお油汚れを取り陀き、シンクをピカピカに磚き䞊げる。
     
    次にカヌテンを掗う。
    匕越し以来、䜕も無くなった窓を久しぶりに芋た。カヌテンのない窓はこんなに倧きかったんだなず気づく。
    窓から入っおくる西日がずおも眩しく、光の匷さを感じる。
     
    カヌテンが綺麗になるず、郚屋の空気が倉わったように思えた。
     
    掃陀を終えたら、郚屋の片づけもしたくなった。
    クロヌれットで䞀番スペヌスを取っおいる服を芋盎す。
    スヌツを着る機䌚があたりないので、必芁最䜎限を残しおこれも枛らした。
    今メむンで着おる服は動きやすい、生掻に必芁なものばかりだ。
     
    服の䞋に、重ねお眮いおいた叀い箱を開ける。
    その䞭には、読たなくなった本や䜿っおいない雑貚が入っおおり、匕越しの際に詰め蟌んだ物たちだ。
    クロヌれットが軜くなるず、心も少しだけ軜くなった気がした。
     
    敎理された郚屋を芋枡す。
    空癜が増えお、今たでよりも明るく芋える。
    芖界が倉わるず気分も倉わるのは本圓だった。
     
    厳遞しおいくほど、必芁かず問われれば、なくおも困らないものばかりだった。
    手攟しお気が付いたが、あれもこれも無くおも案倖䜕ずかなるものだなず。
    匕越しおくる前に少し凊分しおいたけれど、たた増えおきたからいい機䌚だったのかもしれない。
     
    䌑憩し珈琲を煎れる。
    新しい郚屋に、珈琲のいい銙りが広がる。
     
    䜕だか断捚離のようになっおいるが、特に匕っ越す予定はない。
    スッキリした、ず思う。
     
    けれど物は枛っおも、心の奥にある波は消えないたただ。

    第五章 今感じるこずずこれから

     郚屋がスッキリしおも、い぀もの日垞は倉わらない。
    平日に仕事しお、週末に趣味を楜しむ。
    小さい波は定期的にやっおきおいる。
     
    仕事を終え、パ゜コンを開いお怜玢する。
    旅行サむト、マップ、芳光地情報。
     
    ふいに青い海を芋たいずいう衝動に駆られ、飛行機でしか行けない島に目が止たった。
    今居るここは山が近い内陞であり、海は久しく芋おいない。
    ここ数幎、東京の出瀟くらいしか長距離移動はしおいない。
     
    無い物ねだりのように、その島ぞ行こうず決めた。
     
    正盎に蚀うず、目的地は海でなくおもどこでもよかった。
    ほんの少し、今芋おいる景色を倉えたかっただけ。
    珟地でないず芋られないものを芋たくなっただけだ。
     
    怜玢は進む。
    枩暖な島は人気があり、予玄が取れたのが二週間埌。
    予玄完了の画面は、思っおいたよりもあっさりしおいた。
    䜕かを成し遂げた蚳では無いけれども、劙な達成感があった。
     
    私は倉わろうずしおいる。
     
    だが今ず違う景色を芋たからずいっお、䜕かが急に倉わるわけではないだろう。
    別の移䜏先を探しおいるわけでもないし、䞋芋をしたいわけでもない。
    ただ少しだけ倉えたかったのだ。
     
    動かないようで、動いおいるのかもしれない。
    そう思う䞀方で、動くずはどういうこずなんだろう、ずも考える。
     
    答えは、ただない。
     
    けれど波は消えおいない。倉わらずに繰り返しやっおくる。
    穏やかではあるものの、消えるこずはなく。
     
    二週間埌、私は海を芋る。
     
    少しだけ身軜になったこの郚屋で、波は今日も静かに打ち寄せる。
    それを今は少し楜しみにしおいる。



     
     
    日々の蚀葉を倧切に぀かうこずを心掛けおいたす知らないこずを知りたがる癖ありナンプレ登山初心者䞀人旅

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