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トラガールは、 道の果てに夢を見る。(13)

    春のゴールデンルート

     今年も「年度末、ぎりぎり配送」の仕事がまわってきた。
     職場ではそう呼ばれており、なんとなくキワドイ響きがあるが、レイはこの仕事が嫌いではない。

     平和島の物流センターで荷を積み、千葉の印西市、佐倉市、南房総市にある会社に納品し、東京に戻る。
     それぞれ三か所の納品指定時間自体は、ぎりぎりではなく、余裕がある。ということは待機時間ができる。この待機時間中、納品場所の真ん前で待っているわけにもいかないので、『待機場所』を自分で探すことになる。
     去年もこの仕事を担当し、レイは絶好の空間を見つけた。

     午前九時半に平和島を出発。首都高を経由して、京葉道路へ。途中、東関道に入り、四街道インターで降りたら、県道を通って印西市の吉高に十一時過ぎに到着。

     納品指定時間は十三時。レイはコンビニに寄り、『おにぎり二個と唐揚げ・ウィンナ』のセットと、緑茶のペットボトルを買うと、再び中型トラックを走らせ、印旛中央公園の駐車場に車を停める。

     ここからお目当ての地まで少し歩くが、歩いただけの甲斐がある。

     樹齢四百年を超える大桜が太い幹や枝を広げている。『淡いピンク色の小山』から、穏やかな風に乗って、無数の花びらがひらひらと漂う。

     レイは、そばを舞い降りる花びらを手のひらで受け止め、それに飽きたら、また空を見上げた。
     これを何度か繰り返すと、大木から少し離れた場所まで下り、立ったままおにぎりをほおばった。

     印西市の会社の倉庫で積み荷の三分の一ほどを納品する。受領のサインをもらい、積み荷をチェックし、再び車を走らせる。次の配送先、佐倉市は県道を戻り、四十分弱で着く。

     納品時間まで「佐倉ふるさと広場」の駐車場で『待機』する。
     運転席と助手席両方の窓を開け、まだ涼しい春の風を通す。

     オランダ風車を囲み、童謡に歌われている「あか、しろ、きいろ」だけでなく、ピンク色や淡い紫色のチューリップの花々が、広大の土地に綺麗な直線・曲線の列を作って並んでいる。

     レイは鮮やかな、色の大行列を眺め、残りの緑茶を飲み干すと、トラックのエンジンをかけた。

     佐倉市の会社の倉庫に荷を降ろし、受領サインを貰って積み荷をチェック。
     これから一時間半ほど走り、最終目的地に向かう。
     県道から佐倉インターで東関東自動車道に入り、館山線を進む。

     納品先に着いたのは、十六時少し前。陽が少し陰ってきている。
     残りの荷物をすべて降ろす。受領サインを貰って、今日の配送はすべて終了。
     車を出し、南房総の冨浦にある道の駅に向かう。

     ここには、広大な菜の花畑がある。

     既に最盛期は過ぎていたが、まだまだ黄色と薄緑の花畑は壮観だ。

     オープンカフェで『びわソフト』を買い、舐めながら、菜の花畑に向かう。

     平日で、菜の花のシーズンもそろそろ終わりにもかかわらず、観光客がちらほらいる。
     夕日を受け、黄金色に輝くお花畑のなかでじゃれ合う、小さな男の子と女の子。

     思わずレイは微笑んだ。

     トラックのキャビンに戻ると、最近持ち歩くようになった創作ノートを取り出し、サインペンを動かしたり、ペンを止めて少し思案したりしながら、三つの歌を書いた。

     花びらを
     掬う 手のひら
     重なって

     二人のチュー
     並んで見ている
     チューリップ

     菜の花の
     黄色い海に
     影 二つ

     幼い恋の歌になった。
     ちょっと子供っぽいかな、と思った。

     レイは思い出す。
     自分の初恋を。

     それから、想う。
     今度恋をするのは、いつだろうと。

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    #創作大賞2024 #お仕事小説部門

     
     
     
    A picture with a smile - and perhaps, a tear. 微笑みと、そしておそらく、一粒の涙の物語 (チャップリン 「キッド」より引用) そんな物語が書けるようになりたいと恋焦がれています。 lit.link/minato_funazu

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