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【ちょっと一息ショートストーリー/朗読】♯2シュワシュワ中毒



    三度の飯より炭酸が好きな僕は、
    いつからか、どんなドリンクを飲んでも
    あの刺激的な”シュワシュワ”を感じられるようになってしまった。
    水は勝手に炭酸水になるし、ただのオレンジジュースだって、
    気づけばソーダに変わっている。
    炭酸好きの僕としては、願ったり叶ったりだ。

    けれど、日常がシュワシュワに染まりすぎると、
    それが当たり前になって、だんだん物足りなくなってきた。
    そこで、さらなる刺激を追い求めてコーラを一気飲みしてみると、
    コーラの炭酸と僕自身の炭酸力がかけ合わさって、
    今までとは比べものにならないほどの爽快感が全身を駆け抜けることを発見した。
    いろいろ試した中で、一番のお気に入りは激辛ラーメンを食べたときだ。
    熱々のスープ、火傷しそうな辛味、
    そこに追い討ちをかけるように、
    火花が散るみたいなスパークリングな刺激が口いっぱいに広がる。
    ああ、なんて至福の瞬間なんだろう…

    そんな僕にも、ついに彼女ができた。
    彼女はマシュマロとかロイヤルミルクティーとか、
    優しくて穏やかなものが好きらしい。
    僕にはちっとも良さがわからないけれど、
    そんなところも含めて、可愛くていいなと思っていた。

    ただ、ひとつ悩みがある。
    彼女がどうしても手を繋いでくれないのだ。
    指が触れただけで、スッと手を引っ込めてしまう。
    これは由々しき問題だ。
    でも会話は弾むし、よく笑ってくれる。
    僕のことが嫌いになったわけではなさそうだ。

    そんなもやもやを抱えたまま迎えたデートの帰り道。
    人気の少ない通りで、今日も終わりに近づいている寂しさもあって、
    僕らは自然といい雰囲気になった。
    どちらからともなく目を閉じ、ゆっくりと唇を近づける。

    そして、彼女の柔らかい唇に触れた瞬間——

    「痛っ!!」

    彼女は小さく叫んで、すぐに顔を伏せた。
    しばらくの沈黙のあと、彼女は言いづらそうにぽつりぽつりと話し始めた。

    「今までずっと言えなかったけど…
     君の手に触れるとピリピリして痛いの。
     その…今も。
     好きな人とは手を繋いだり、キスも…したいから…
     あの…ごめんなさい!!」

    そう言うと、彼女は駅の方へ走り去ってしまった。

    どういうことなんだ。
    訳もわからないまま、“振られた”という事実だけが
    頭の中をぐるぐると駆け巡る。

    とぼとぼと家に帰り、
    とりあえず落ち着こうと湯船にどっぷり浸かったそのとき——
    みるみるうちに、お湯が炭酸風呂になっていくではないか。

    どうやら刺激を求めるあまり、
    僕自身が刺激的な”全身炭酸人間”になってしまったらしい。

     
     
    宅録ナレーター/作家 ネガティブをそっとプラスに変える物語と詩を綴り、 落ち着いた声で朗読しています。 疲れた心がふっと軽くなる、そんな世界をお届けします。

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