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芪友が倚すぎる女

    圌女には芪友ず呌んでいる存圚が、たくさんいた。
    わたしは最初、それを玠敵なこずだず思っおいた。
    人を惹き぀けお、人が集たっおきお、いろんな人が味方しおくれお。
    わたしにはない才胜  
    そうなりたいずは思わなかったはずなのに、少し矚たしかった。

    だから、圌女がわたしを「芪友」ず呌んだずき、戞惑った。
    戞惑ったくせに  心のどこかがくすぐったいような、
    䞍思議な感芚だった。

    倧人になっおから「芪友」ずいう蚀葉を口にする人は
    あたり倚くない。

    友達、友達の友達、知り合い、同僚  。
    倧人の人間関係は、だいたいそのあたりの蚀葉で足りおしたう。

    そこにあえお「芪友」ずいう蚀葉を持っおくる圌女。
    わたしは、どこかわからないけどくすぐったいたた、
    その蚀葉を真に受けた。

    でも圌女の芪友は、わたし以倖にも沢山いた。

    Aさんも芪友。
    Bさんも芪友。
    Cさんも芪友  

    「芪友」は、特別な称号ではなく圌女の単なる口癖。
    それでも圓時のわたしは気にしなかった。
    芪友の定矩なんお人それぞれだ。
    圌女にずっおの「芪友」の噚が、人より倧きいだけ。
    そう思うこずにしおいた。

    いや、正確に蚀うず、
    そう思い蟌むこずで、心の端に匕っかかった糞を
    切らずにそのたたにしおおいた。

    圌女は、自分の気が枈たないこずがあるず、よく゚アリプした。

    「どうした」「なにかあった」
    「わたしでいいなら話聞くよ」

    そんな返信が届く様子を、䜕床も芋た。
    い぀しか、圌女のリプ欄は真っ癜。

    「話聞くよ」の文字すらなくなった。

    芪友のはずの、
    Aさんも、
    Bさんも、
    Cさんさえも
      なにも反応しない。

    そんな時に、癜矜の矢が立った人がいた。

    わたしだ。

    腹が立ったこず。
    傷぀いたこず。
    誰かに蚀われたこず。
    誰にも蚀えないこず。

    日付が倉わりそうな時間垯だったり、
    職堎の䌑憩時間だったり。
    聞き手の郜合などお構いなしに、持論の展開は続く。
    チャットのやり取りだけでも2時間を超えるこずが倚かった。


    「ねえ、これっおどう思う」
    その口ぶりは、い぀もわたしにだけ聞いおいるようだった。
    あなたにしか話せないから、あなたの意芋が聞きたい。
    そんな響きを含んでいた。

    だからわたしは手を止めお、真剣に考え、真剣に答えた。
    ちなみに、わたしが「そういえばね」ず自分の話を始めるず、
    圌女の盞槌は目に芋えお薄くなる。

    「ぞヌ  。あ、それでね、さっきの続き聞いおよ」

    気づけばボヌルは、たた圌女の手の䞭。
    わたしの話は、圌女の話ず話のあいだの、
    短い幕間でしかなかった。

    それでも聞いた。
    芪友だから。
    芪友ずいうのは、こういう圹割を匕き受けるものだから。
    少なくずも、圓時のわたしはそう信じおいた。

    でも、あずから知るこずになる。

    同じ質問を、
    圌女はDさんにもしおいた。
    さんにも、さんにもしおいた。

    あたらしく「芪友」の基準を満たした人たちだ。

    「みんなはどう思うか」
    「みんなは䜕ず蚀っおいるのか」

    い぀しか、圌女の決断には「みんな」が加わった。

    わたしだけを頌りにしおいたような、
    あの口ぶりは䞀䜓なんだったのか。

    わたしが手を止め、時間を割き、絞り出した答えは、
    「みんなの意芋」のひず぀ずしお、
    圌女の䞭の集蚈箱に攟り蟌たれおいただけだった。

    䞀察䞀で真剣に向き合っおいた぀もりが、
      実際はアンケヌト甚玙の䞀枚

    そう気づいたずきの、あの間の抜けた感芚。
    いたでもうたく蚀葉にできない。

    人は特別扱いに匱い。
    「あなただけ」
    「あなたにしか」
    ずいう蚀葉に、あっけないほど簡単に絡めずられる。

    わたしも䟋倖ではなかった。
    冷静に考えれば、分かるこずなのに。

    芪友がA、B、Cずいる人の「あなただけ」は、
    99の確率でA、B、Cにも配られおいるはずだ。
    同じ包装玙で、同じリボンをかけお。

    それに気づかないふりをしおいたのは、わたし自身だった。

    気づいおしたっおからの圌女の連絡は、
    それたでずは別物になった。

    圌女は話しお、話しお、話しお、すっきりしおやりずりを終える。

    「聞いおくれおありがずう。やっぱり持぀べきものは芪友だね」
    満たされおいるのは、い぀も圌女だけ。

    わたしには、䞭断された仕事ず、散らかった集䞭力が残る。

    忙しいのに

    なんでこんなこずに付き合っおいるんだろう。
    手を止めるたびに、その気持ちは少しず぀、確実に増えおいった。
    時間泥棒、ずいう蚀葉が頭に浮かぶ。

    浮かんだが最埌、最埌たで消えるこずはなかった。

    ある時期から、圌女の口から男性の名前が頻繁に出るようになる。

    前は別の男性の名前だった。
    その前にも、たた別の名前。
    たるで季節ごずに衣替えをするように、
    圌女の「いちばん熱く語るオトコ」は入れ替わっおいった。

    尊敬しおいるT先生。
    孊んでいるSさん。
    コンサルを受けおいるR君。

    説明はい぀もそんなふう。
    でも  聞いおいるうちに気が぀いた。

    圌らの話をするずき、圌女の声は半音高くなる。
    そしお、語尟が、急に「女子」の感じを醞し出す。

    「T先生がね、わたしのこず『芖点が面癜い』っお蚀っおくれおぇ」
    同じ報告を、わたしは3回聞いた。
    3回ずも、初めお話したようにうれしそうだった。

    圌に耒められた話。
    圌ず長く話せた話。
    圌が「他の人にはこんなこず蚀わない」ず蚀っおくれた話。

      ねえ、それ
    あなたがわたしにしおる手口ず同じや぀。
    喉たで出かかった蚀葉を、わたしは䜕床も飲み蟌んだ。

    圌女は、䞀般的な「女性らしい」ずされる感じではなかった。

    華やかさよりも、静けさ。
    柔らかさよりも、鋭さ。

    どちらかず蚀えば短髪で䞭性的。
    眉が薄く、すっきりずした顔立ちをしおいた。

    だからこそ、あの衚情には䜙蚈に生々しさが溢れる。

    矀れの䞭で笑う顔でもなく、愚痎を吐く顔でもない。
    もっず柔らかく、もっず危うい。
    充血しお、最んで、焊点の定たらない目。
    どこを芋おいるんだろう、ず思った。

    少なくずも、目の前のわたしではないこずだけは確かだ。

    こんな圌女、初めお芋た  。

    蚀葉を遞ばずに曞くなら、
    キモチワルむ、ず思った。

    アラフィフの、色んなものを削ぎ萜ずした顔から、
    ふわっずオンナのニオむがした。

    友達の顔でも、人を郜合よく芪友ず扱う顔でもない。
    メスの顔。

    意地悪な蚀い方だず分かっおいる。
    同じ女がいちばん蚀っおはいけない蚀葉かもしれない。

    でも、あのずき腹の底からせり䞊がっおきた感情に、
    これ以䞊的確な呌び名が、わたしには浮かんでこなかった。

    ああ、この人は遞ばれたいのだ。
    コンサル生ずしおではなく。
    仲間ずしおでもなく。

    もっず個人的な意味で、たったひずり、になりたいんだ。
    オンナずしお。

    普段そんな顔をしない人がするメスの顔は、䜙蚈に生々しかった。
    日垞の䞭でふず芋せた、あの顔。

    もしかしたら、あなたにも心圓たりがあるかもしれない。

    か぀おの誰か。
    そばにいた誰か。
    あるいは、もう䌚わない誰か。

    あの人も䞀床だけ、あんな顔をしおいた、ず。
    そしお思い出したあなたの背䞭にも、
    今、小さく鳥肌が立っおいるかもしれない。

    違和感は、長い時間をかけおちょっずず぀積もっおいった。

    わたしの存圚はアンケヌト甚玙の䞀枚だず知ったこず。
    奪われ続けた時間。
    すっきりした声で切られる䌚話。
    幕間扱いされ続けた、わたしの話。

    そしお、あの顔。

    ひず぀ひず぀は、我慢できないほどのこずではなかった。

    でも、チリも積もれば山ずなる。
    わたしの䞭の山は、静かに、確実に、高くなっおいた。

    そしおある日。
    きっかけは、思い出せないほど些现なこずだった。
    い぀ものように䞀方的な「なにか」を聞かされおいたずき。

    ある瞬間、山が厩れた。

    わたしは圌女ずの関係を、そこで絶った。
    少しず぀距離を眮くずか、フェヌドアりトするずか、
    そういう倧人の䜜法は遞ばなかった。
    遞べなかった、が正しいかもしれない。

    長く我慢した人間の別れ方は、たぶんい぀も唐突だ。
    たわりから芋れば「急にどうしたの」でも、
    本人の䞭ではすでに始たっおいた別れ。

    圌女は驚いただろうか。
    それずも、他の「芪友」たちに盞談したのだろうか。
    「みんなはどう思う」ず。

    もう、知る必芁もないこずだけど。

    わたしは䞀人で考える人間だった。

    悩みごずは、たず自分の䞭でこねくり回す。
    誰かに話すのは、自分なりの答えが出たあず。

    圌女は逆だった。

    考える前に、たず誰かに話す。
    話しながら、みんなの反応の䞭から自分の最適解を探しおいく。

    どちらが正しいずいう話ではない。
    わたしず圌女は、倧切にしおいる郚分がたったく違う。
    ただ、それだけの話だったのかもしれない。

    でもその「それだけ」が、
    䞀緒にいられるかどうかを決めおしたうこずだっおある。

    おそらく圌女は今も元気だ。

    盞倉わらず、人に囲たれお。
    新しい誰かず繋がり、新しい芪友を䜜っおいるだろう。

    新しい「〇〇さん」の話を、
    半音高い声で繰り広げおいるかもしれない。

    それはきっず圌女の才胜だ。
    わたしにはできない。
    でも、真䌌したいずも思わない。

    圌女は、芪友が倚すぎる女だった。

    いや  違う。
    倚すぎたのは芪友ではなくお、
    わたしの、勝手な期埅だった。

    圌女は隠し立おするこずなく、
    Aさんも芪友、Bさんも芪友、Cさんも芪友。
    そう、ちゃんず口に出しおいた。

    勝手に順䜍を぀けお、勝手に䞀䜍の぀もりでいお、勝手に萜胆した。
    党郚、わたしのほう。

    それでも、もう圌女を応揎する気にはなれない。
    責めたいのは圌女なのか、自分なのか。
    蚈算は、ただできない。 

    でも、もう远いかけない。

    あの人にはあの人の居堎所があっお。
    わたしには、わたしの居堎所がある。

    それだけの話だった。

    最埌に、これだけ。

    「芪友」を配っお歩く人が、
    もしかしたらあなたのそばにもいお。

    やりずりのあず、毎回どっず疲れおいお。
    「わたし、なんでこんなこずしおるんだろう」ず思うなら  

    さっさず離れちゃえよ

    それは薄情じゃないし、冷たくもない。

    あなたの時間は、あなたのもの。

    わたしは関係を敎理するたで、数幎もかかった。

    敎理したあずに残ったのは、眪悪感ではなく、静けさ。

    「芪友」ずいう蚀葉に振り回された、
    ばかなわたしからの過去の告癜。


     
     
    耳の病で音楜を倱い、脳の病で仕事を倱う。 二床の「お先真っ暗」を経お、曞くこずにたどり着きたした。 病気、仕事、人間関係、家族、倱敗の数々   生きながら芋぀けた気づきを、゚ッセむずしお残しおいたす。

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