あの時の本は|#シロクマ文芸部 #私小説
借りた本というものは、いつも少し扱いに困る。
帯付きの文庫本で、シミひとつ折れのひとつもない、先程まで書店に並んでいたんじゃないかと思わせる美本が私の前にあった。
友人に面白いから是非読むべきだと勧められて、そのまま受け取って帰って来てしまったものだった。
私自身は帯は外すし、本についてくるしおりでさえ不要だと思えば捨ててしまう性質だ。
本を強く開いて読むものだから、表紙は自然と少したわみどのページにも癖がついている。
とはいえ、彼女が大の本好きであることは百も承知だから、ここまで丁重に扱われてきたものを無碍にしようとも思わない。
そうっと表紙を持ち上げて、間違っても開き癖がつかないように少しずつ読み進める。
ノドの辺りを読む時には、覗き込むように読んだ。
そんなことをしているものだから、あまり集中もできず、少し読んでは億劫になり、結局読み切らずに返した。
たしか、忙しくてとかなんとか、理由をつけた覚えがある。
今思えば、勧められた本を読んで感想を言い合うなんて一番楽しいのだから、新しく買っていつも通りに読めばよかったものをと思う。
あの時、彼女に借りた本は何という名前だっただろうか。
小牧幸助様の「#シロクマ文芸部」に参加させていただきました。
初参加になります。
noteに登録してからずっと参加しようと思っていたので、ようやく参加できて嬉しいです。
私小説の形で書かせていただきました。
大学生のころの、思い出と後悔のお話です。
