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最終話 義経伝説時を超えた殺意

     事件から2週間が過ぎていた。
     8月も、もう後半だっていうのに、まだまだ暑い日が続いている。湿気を含んだ空気が肌に纏わりついて、服が肌に張り付いて不快なのに、さらにヒグラシの鳴き声が不快指数を上げている。
     事故の後、目覚めると病院のベットの上だった。
     俺たちはケガはしたけど、事故の大きさの割に奇跡的にみんな軽傷だった。
     博物館は全焼し、地下室も吹き飛んでしまった。
     俺たちが聞いた、秘密結社に関する証拠は、何一つ残らなかった。
    「小鳥遊君、もう平気?」
     美幸さんが心配そうに聞いてくる。
    「うん、平気だよ。若いからね、治るのも早いよ!」
     俺たちは今、平泉にある小さな寺院に来ていた。
    「やっぱ若いっていいっスね」
     能天気に話しながら佐藤刑事が歩いてくる。
     その横には、暑さを感じさせない、涼しい顔をした九条先生も姿を現した。
     なぜ、こんな小さな寺院に来ているかというと、この寺院には義経が逃げ延びる時に一時期身を寄せたという伝説があるからだ。 
     そして、寺院の敷地にある、小さな祠に八咫烏の紋章があるらしい。
     俺たちは、その紋章を探しに来ている。
     しばらく歩いていくと、茂みの中にヒッソリとたっている石碑を見つけた。
    「これみたいですね・・・」 
     石碑を調べると、俺たちが持っている勾玉と同じ八咫烏の模様をみつけた。
     そのすぐ下に丸い窪みがある。
     俺と先生は持っていた勾玉を出すと、それを合わせ、その窪みに差し込んでみた。
     窪みには、勾玉がピッタリとハマり、石碑の一部が動き出し、その下に小さな隠し部屋が現れた。
    「なんか、緊張してきた・・」「ドキドキする」「凄いっスね」
     俺たち3人が口々に好き放題言う中、先生が静かに眺めている。
     小部屋の中を覗くと、その中央には、まったく古さを感じさせない、今も輝きを放っている守り刀が置いてあり、その隣には、木箱が置いてあった。
     先生は、慎重に守り刀と木箱を取り出した。
    「綺麗・・・」
     目の前の美しい守り刀を前に、俺たちは、ため息しか出てこなかった。
     先生は、慎重に木箱を開ける。
     中には、地図みたいな絵が描かれた巻物がでてきた。
    「これは、ヒヒイロカが採れるところの地図かも・・・」
     それが、本当なのだとしたら、まさにお宝なのだが・・・・
     俺は、前から思っていた事を口にする
    「先生、この金属がもし世に出てしまったら、平和利用だけではなく、軍事利用される可能性も高いと思うんです」
     俺の言葉に、みんな静かに耳を傾けてくれている。
    「だったら、このまま見つからない方か良いと思う・・伝説のままの方が、義経と弁慶の思いだけを残して、このまま閉じませんか?」
     そんな俺の身勝手な思いを、全員がくんでくれた。
    「私は、今、この守り刀を見れただけで充分」
    「俺もっス。伝説を見れただけで得した気分っス」
    「そうだね、そうしようか」
     そうして、宝物は、また石碑の下に戻った。
    「じゃ、私は車を回してくるよ」
     そう言って、先生が一足先に歩いていった。
     その後ろ姿を見ていたら
    「ね、小鳥遊君。二人はお似合いだと思うの・・・」
     美幸さんが、唐突に声を掛けてきた。 
    ・・・ お似合いって・・・日本語的におかしくないか?
     俺がポカンとしてると、ハッとしたように、目をそらしながら
    「あ、違うの、良い相棒!そう言いたかったのっ」
     焦ったように訂正する美幸さんに
    「相棒と言ったら、佐藤刑事だろ?実際に、いいコンビだったよ!」
    「違うの・・・昔から佐藤さんは、なんか後輩っぽいの・・・」
    「あっそうだよね、俺も、初めて会った時から、そう思ってた!!」
     その俺の言葉に、二人で噴き出した。
    「なんスか、楽しそうっスね」
     後ろから、のんきな声が聞こえてくる。
     俺たちの笑い声につられたように、一筋の突風が吹き、一凛の花が空に舞う。夏の終わりに、伝説はそっと眠りについた。

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