メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo bykanta_1218

続きを書いたよ きのころチャレンジ



    今朝、郵便受けに入っていた一通の手紙。
    差出人の名前はない。
    胸騒ぎに、震える手で封を開ける。
    中に入っていたのは、
    途中まで書かれた私の遺書。
    覚えはない。
    だが、間違いなく私の筆跡だ。
    日付は明日になっていた。

    続きは読めない


    明日、私は死ぬのか。

    ドクドクと心臓が音を立て、じんわりと全身から汗が出てくる。

    落ち着け、落ち着け私。

    まず、この時点で分かっていることを把握する必要がある。

    これは私の遺書である。
    なぜなら、筆跡が私のものに相違ないからだ。

    もう一度、読んでみる。
    私が書きそうな文章だ。


    「遺書」

    明日、私は死にます。

    私の前に死神が現れました。彼は私の命を奪う前に、命を助ける以外の願いを一つ叶えてやると言いました。

    今日死ぬことを過去の私に伝えたいと願ったら、昨日のお前にならと、40秒だけ

    …待ってやる、って言われたのかな。死神はラピュタを観たのか。名作だもんな。ムスカじゃなくてドーラタイムの死神。

    はぁ、まいったな。

    とりあえず明日は仕事休むって連絡するか。理由?死ぬから?それはさすがに物騒だ。熱があるから、くらいにしておこう。

    いや待て、この手紙が本当かどうか分からない。

    なら、本当でも嘘でも大丈夫なように行動すればいい。どちらにしても明日の仕事は休もう、そうしよう。

    遺書を机に置き、コーヒーの準備をする。

    コーヒーメーカーにフィルターをセットし、豆を入れる。いつもより心もち多めに。

    明日まで、何をしようか。

    そう、悪いことばかりではないのだ。老後の心配はなくなった。明日までの命、かもしれない、のだ。

    最後に食べたいもの。
    最後に会いたい人。
    最後にやりたいこと。

    明日の、何時なんだろうな。
    朝イチかもしれないし、夜遅くかもしれない。

    コーヒーメーカーに水を注ぎ、スタートボタンを押す。
    ウィィィン、と歯が回る音とともにコーヒーの香りが鼻腔を刺激する。

    とりあえず、着替えて出かけるか。

    今から誰かと会う約束をするのも気が引ける。昨日まで元気だったのに、なんて思い出させるのも申し訳ない。

    映画館で最後に観たい映画があるかな。プレミアムシートを予約するのもいい。

    なぁんだ、いつもの休日と変わらない。ちょっと贅沢な休日。

    コポコポと音を立てながらコーヒーが抽出されていく。

    私の最後かもしれない休日が、始まる。


    #きのころチャレンジ

     
     
     
    三度の飯と昼寝が好きなエッセイスト、たまにポエム。今日も元気に反復横跳び。

    あなたへのおすすめ