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未到の道⑥|遅れて咲く花の倫理

    第五節|間に合わなかった時間の意味

    花は、咲く。

    だが――
    すべてが同じ時に咲くわけではない。

    早く咲く花もあれば、
    遅れて咲く花もある。

    そして人は、
    遅れて咲いた花を見て言う。

    「やはり正しかった」と。

    確かに、
    その花は美しい。

    長い時間を耐え、
    ようやく咲いたその姿には、
    人の心を動かす力がある。

    だが――
    その言葉の前に、
    忘れてはならないことがある。

    その花が咲くまでに、
    間に合わなかった時間があるということだ。

    最初から、
    手遅れだったわけではない。

    小さな違和感があった。
    立ち止まれる瞬間があった。
    問い直せる場面も、確かに存在していた。

    それでも人は、
    「まだ大丈夫」と思ってしまう。

    空気を読み、
    沈黙を選び、
    先送りを重ねていく。

    そして気づいた時には、
    ようやく花が咲くほどの時間が、
    流れてしまっている。

    だから倫理とは、
    結果を美しく語ることではない。

    そこに至るまでに、
    何が見過ごされていたのか。

    誰が沈黙していたのか。

    どこで立ち止まれたのか。

    その“間に合わなかった時間”へ、
    静かに目を向けることである。

    そしてもう一つ、
    忘れてはならないことがある。

    遅れて咲いた花は、
    遅れを肯定するために咲くのではない。

    次に咲く花を、
    間に合わせるために咲くのである。

    だからこそ――
    私たちは、
    ただ感動するだけで終わってはいけない。

    「なぜ、ここまで遅れたのか」

    その問いを、
    次へ繋げなければならない。

    誰かが壊れてしまう前に。
    誰かが諦めてしまう前に。
    誰かが声を失ってしまう前に。

    小さな違和感の前で、
    一度だけでも立ち止まる。

    その一瞬が、
    未来の遅れを止めることがある。

    遅れて咲く花は、
    確かに美しい。

    だがその美しさは、
    過去を飾るためのものではない。

    まだ間に合う未来を、
    静かに照らすためにある。

    それが――
    遅れて咲く花の倫理である。

    ーつづくー
    未到の道⑦|成長への選択の道程
    第1節|人は選択によって生きている

     
     

    Kei

     
     
    書道家として活動し、時に俳句を詠む。 聞こえにくい世の中の声に、静かに耳を傾ける。 辛い思いも、誰かに話せたなら―― その心に、そっと寄り添う言葉を。

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