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短編小説「春がくる」#note文芸部大賞2025


     きみは春が嫌いでしたね。花粉症でもないのにどうして嫌いなのかその頃の僕にはわかりませんでした。
     春はあたらしいことばかり強要してくるし、よく晴れた日は屋上から背中をつつかれている気分だと言っていましたね。
     桜が美しく咲くし、あたたかくなるし、いいこともありますよと言うと、桜はすぐ散るし、散ればすぐに暑くなるときみは言います。
     きみはいつも悲観的です。もっといいところを見つめてあげればいいのにと思うのだけれど。しかしそれでも僕と一緒にいてくれるということは、僕のいいところは見てくれているのかな、なんて自惚れたことを思ってしまうのは許してください。
     ああ、また今年もちらほらと桜の蕾が顔をだしはじめましたね。きみはあからさまに嫌な顔をいたします。でも僕は知っているのです。きみが僕なんかよりも桜が好きなことを。だから散ってゆくのが悲しいことも。桜が散っても、僕は去りませんし、変わりもしません。若葉が芽吹いたら、その隙間からまた光が差します。
     さぁ、もうすぐきますよ、きみの嫌いな春が。

    #note文芸部大賞2025

     
     
     

    すぅ

     
     
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