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窓と猫【創作】

    ある日、ふと思いついて、自宅の住所をGoogleマップで検索してみた。
    何気なく見たストリートビュー。季節は春、空はやわらかく晴れていた。

    画面の中に映る、見慣れた二階建ての家。
    「わ、外壁まだ塗り直してなかった頃だ。」
    そんなことを思いながら、ゆっくりと視点を動かす。

    ふと、目に留まる。
    二階の小さな窓。カーテンの隙間に、影。

    ──あれっ。

    もっとよく見ようと、画面をズームする。
    そこには、ほんのりとした毛の輪郭。ちょこんとした耳のシルエット。
    窓の内側で、陽の光を浴びながら、じっと外を見ている。

    「ミイ……」

    名前を呼ぶと、静かな部屋に声だけが響いた。

    ミイは、去年の秋に遠いところに旅立った。
    急に食欲がなくなって、静かに、苦しまないように、眠るように。

    家族みんなで泣いて、それでもミイのお気に入りだったクッションはしばらく片付けられなかった。

    昼間は静かで、控えめだけど、夜になると急に甘えてくる子だった。
    いつも、居心地のいい場所を見つけるのが上手だった。

    そしてミイは、あの窓辺が好きだった。
    午後になると、陽が差し込むそこに座って、うとうとしながら外を眺めていた。
    通る車も、人も、鳥も、全部のんびりと見つめていた。

    「ほんとに、そこが好きだったんだね。」

    画面の中で、窓辺によりそうその小さな姿は、どこかぼんやりしていて、まるで夢みたいだった。
    でも、確かにそこにいる。

    不思議と、涙は出なかった。
    なんだか嬉しかった。

    もう会えないと思っていたのに、偶然こんな風に再会できるなんて。
    それも、大好きだった窓辺で。

    私はスマホの画面をスクリーンショットした。
    少しだけ角度を変えて、よりきれいに、より「ミイ」が映っている瞬間を。

    きっとあの子は今も、自分なりのいい場所を見つけて、そこにちょこんと座っているんだろう。

    ──たとえば、こうして、そっと私の中に。

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