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かやくご飯のお茶漬け【創作】

    財布野紐ゆるみ

    夕食後の台所で、彩花は冷めたかやくご飯を見つめていた。

    人参と椎茸、油揚げの混ざった土鍋の底。
    母が「もう片付けちゃうわよ」と声をかけたとき、ふと思いついて言った。

    「これ、お茶漬けにして食べる。」

    普段は食べない食べ方を、この時はなぜか試したいと思った。
    母は意外そうに笑い、急須を手にとる。

    湯気が立ち上がり、椎茸の香りと緑茶の苦みが重なって、あたたかな匂いが広がる。

    一口すすった瞬間、胸の奥がゆるむ。けれど、そのとき母がぽつりと口にした。

    「お父さんもね、これ好きなのよ。夜遅くまで仕事して帰ってきて、残ってたかやくご飯でお茶漬けすると、うまいってね。」

    箸を止めた彩花は、思わず顔をしかめた。

    父とはほとんど会話もしない。
    学校のことを聞かれても素っ気なく返すだけ。

    でも、同じ味を「うまい」と思って食べている姿を想像すると、どこか胸の奥がくすぐられるような、妙な感じがした。

    「……ふーん。」

    わざと何でもない風を装いながら、もう一口すすった。

    出汁の染みた米粒が、ほろほろと口の中でほどける。
    父の好きな味を、今、自分も味わっている。

    それだけのことなのに。
    ほんの少しだけ、父に対する自分の気持ちがどこか違って感じられた。

    ちゃぶ台の上で立ちのぼる湯気を、彩花はじっと見つめていた。


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