
私のイラスト、百の質問【創作】
「使っていただいて、ありがとうございます!」
お礼のメッセージを打つ。
私のイラストが、記事のサムネイルに使われていた。苦労して作った、私のお気に入りのイラストだった。
私は、AIイラストを生成するのが趣味だ。あっという間にイラストが完成するのが楽しくて、つい時間を忘れてしまう。
どのAIを使っているかは公開していないが、AIイラスト生成を趣味にしていることはプロフィール欄に書いている。
気に入ったものはみんなが使えるギャラリーにアップロードして、他のユーザーも使用することができる。さっきのメッセージは、私のイラストを使ってくれた人へ向けたものだ。
最近では、メンバーシップを作って、依頼者に有料でその人だけのAIイラスト制作を請け負うサービスをはじめた。
キャッチコピーは、「他の人とは被らない、あなただけのオリジナル」。
まだまだ依頼は少ないけれど、この間も一点、私の作品を依頼者へ納品したばかりだ。
通知をチェックしていると、ふと、気になる記事を見つけた。
「なになに?
……『AIイラストを生成している人へ、100の質問』か。」
眺めてみると、面白そうだったので回答してみることにした。回答を公開すれば、依頼も増えるかもしれない。
* * *
1.AIイラストを始めたきっかけは?
「自分では描けないような絵が、少しずつ形になっていくのが楽しいと思いました。」
2.どんな絵を生成するのが好きですか?
「月のある夜景や、愛らしいキャラクターを。」
3.一日に何枚くらい生成しますか?
「多い日は、十枚から二十枚完成させることもあります。」
4.一番気に入っている作品は?
「フォロワーさんたちに一番評価の高かった、有名作品のオマージュイラストかな。」
5.生成していて楽しい瞬間は?
「失敗しても、自分の作品がたくさん積み上がっていくところ。」
6.得意なジャンルはありますか?
「夜の月以外にも、花のある風景。人物なら、物思いに耽る女性。」
7.生成する前に、頭の中で絵を想像しますか?
「生成を繰り返すことで、イメージを近づけていく方が多いです。」
8.気に入ったイラストを作品として保存していますか?
「全部、私の大事な作品として保存しています。」
9.そのイラストにタイトルをつけていますか?
「タイトルは基本つけて公開しています。キャプションはAIにつけさせることも多いけれど。」
10.生成した画像を自分のイラストと呼ぶことがありますか?
「私のイラストを、『他人のイラスト』と呼ぶわけなくないですか。笑」
11.生成したAIイラストを、自分の作品として公開していますか?
「もちろん、自分の大事な作品たちは保存するだけでなく公開もしています。」
12.生成したAIイラストを、SNSにアップロードしていますか?
「SNSにも、いくつかアップロードしたことがあります。」
13.AIで生成したことを明記していますか?
* * *
手が止まる。
AI使用、の明記か。
まあ、プロフィール欄にAIイラストで遊んでいることは書いているし、イラストが公開されていればみんな「そういうこと」ってわかるわよね。
「AIを使用したと、間接的にわかるようにしています」と。
* * *
14.AIで生成したことを明記する場合、どこに記載していますか?
「明記とは違うかもしれませんが、間接的にわかるようになっていると思います。」
15.AIで生成したことを、イラスト公開時に表示していますか?
「公開時にあらためて記載しなくても、私を追ってくれている方にはわかるようになっています。」
16.AIで生成したことをタイトルや説明文に記載していますか?
「毎回毎回、書く必要があることだとは思えません。」
17.生成に使用したAIサービスの名前を公開していますか?
「AIが作ったなら、AIが作ったってだけですよね。サービスの種類を書く必要があるのでしょうか。」
18.どの生成AIサービスを使っているか、プロフィールなどにも記載していますか?
「だから、どのAIを使用したかは書いていません。」
19.使用しているAIサービスを公開する必要があると思いますか?
「ないと思います。」
20.生成したAIイラストを、他の人が使える場所にアップロードしていますか?
「プラットフォーム内の、みんなが使えるギャラリーに公開しています。」
21.他の人に利用を許可していますか?
「使える場所にアップしているのだから、『使っていい』と許可していることになるでしょうね。」
22.他の人が記事の見出しやサムネイルに使えるようにしていますか?
* * *
なんなの? この質問。……同じような内容を繰り返して。
なんだか、質問の方向性がちょっと思っていたのと違ったな。
まあいいか。この手の質問企画にはどうしてもありがちな問題だ。
「他の人が様々な用途で使っていいように公開しています」と。
* * *
23.「ご自由にお使いください」「よかったら使ってください」などの表示をしていますか?
「もちろん、しています。」
24.実際に、他の人があなたのイラストを使用したことはありますか?
「あります。評判はまあまあいいかな?」
25.他の人に使ってもらえることを嬉しいと思いますか?
「当然嬉しいし、ありがたいことだと感じています。」
26.自分のイラストが誰かの記事のサムネイルになることを嬉しいと思いますか?
「はい。使ってもらえていること自体が、純粋に嬉しいですので。」
27.使用されたとき、「使ってくださってありがとうございます」と伝えていますか?
「まさに先ほどその言葉を伝えたばかりです。タイムリーな質問で驚きました。」
28.有料で依頼を受け、AIイラストを制作したことはありますか?
「最近そのサービスを開始しています。ご依頼をお待ちしています。」
29.「あなただけのオリジナル画像」「他の人とは被らない画像」などと説明して、AIイラストを提供したことはありますか?
* * *
再び、手が止まる。
……なんか、自分のことを言われている気がする。
「他の人とは被らない、あなただけのオリジナル」。まさにそう言って、依頼を受けて販売している。
質問の意図がどこにあるのか、つかみどころもない。
私が独自に作ったものを、そう呼んで販売しても、何もおかしいことではないではないか。
「まさに、『あなただけのオリジナル』というコピーで販売させていただいております」と。
キーを打つ指の動きが、少し鈍くなった気がした。
* * *
30.「オリジナル」という言葉を、どのような意味で使用していますか?
「独自性のことでしょ。自分だけの。ここにしかない、みたいな?」
31.同じようなプロンプトから、他の利用者にも似たイラストが生成される可能性について説明していますか?
「説明する必要があるとは思いません。また、似たようなものが出たとしても、オリジナル性がなくなるわけではないと思います。」
32.AIサービスの規約で商用利用が認められていることと、そのイラストについて第三者の権利に問題がないことは、同じだと思いますか?
「急に難しい話になりましたね。専門家ではないので、詳しくはわかりません。」
33.依頼者にイラストを渡すことと、その画像について著作権を譲渡することは、同じだと思いますか?
「たぶん、違うと思います。」
34.あなたは、何を販売しているのですか?
「…………自分だけの、オリジナルイラストです。」
35.自分のイラストが、知らない人の記事の「顔」になることについて考えたことがありますか?
「サムネに使ったりするものだから、そりゃ顔や看板になりうるでしょうね。」
36.AIイラストを、記事のサムネイルとして使用することについてどう考えていますか?
「いいことなんじゃないですか? 手軽で簡単だし、記事の要点も伝わりやすくて人目も引く。悪い部分が見当たりません。」
37.AIイラストを、商品の紹介ページや販売ページのサムネイルとして使用したことがありますか?
「ええ。今やどんな商品やサービスだって、AIが広告やイメージづくりを担ってるじゃない。それを私もやってるってだけよ。」
38.AIイラストを、商品を紹介するための看板・広告・バナーなどに使用することについて、問題がないか確認したことがありますか?
「逆に聞きたい。『問題』って具体的になに? 問題があるなら、誰も使っていないはずでしょ。」
39.その商品の印象をつくるサムネイルにイラストを使用することは、個人的に鑑賞することと同じだと思いますか?
「つまり、用途によって、使っていいかどうか考えろってこと? そんな面倒なこと、やってる人はいないじゃない。」
40.あなたが他人に利用を許可したイラストが、その人の商品やサービスの宣伝に使われる可能性について考えたことがありますか?
「利用許可しているんだから、使われることも当然あるわよ。」
41.あなたが他人に「使っていい」と伝えたAIイラストが、その人の記事や商品の顔として使われた場合、その画像について問題が生じる可能性を考えたことがありますか?
* * *
思わず口元が歪む。
なによ、さっきから「問題」「問題」って……。問題がなにか、教えなさいよ。
楽しい質問が少なくて、ちょっと嫌になってきたな。
でも、もう半分近いし、このあとどんな質問になっているのかも気になるし……。
「考えたことはありません」と。
* * *
42.そのイラストを使って商品を販売した人に、第三者から画像について問い合わせがあった場合、あなたは対応できますか?
「出来る範囲では、対応します。」
43.そのイラストについて問題が発生した場合、利用者は誰に確認すればよいでしょうか?
「もちろん、作者である私でしょ?」
44.あなたが「使っていい」と伝えたことを、利用者がイラストの安全性を確認する根拠にする可能性について考えたことはありますか?
「責任を負えるかってこと? 考えたこともないのでわかりません。」
45.あなたが「使っていい」と言っているそのイラストについて、あなた自身に利用許諾をする権利があることを、どのように確認していますか?
「なにを確認するのよ。私が作ったんだから、私に権利があるんじゃないの? 確認なんてできない。」
46.それでも、そのイラストを「使ってください」と第三者に提供することに問題はないと思いますか?
「だから! 問題なんてない! 『私が作ったもの』を、『私の判断』で提供しているの。」
47.「自分で生成した」ことと、「第三者に利用を許可できる権利を持っている」ことは、同じだと思いますか?
「厳密には違うのかもしれないけど、それがどうしたの。著作権の話?」
48.使用した生成AIサービスの利用規約を確認していますか?
* * *
規約。
AI生成でイラストを作り始めるころ。何年前だったか、読んだような気はする。
あ、使っていいんだ。
そのくらいの認識のものでしか、ない。
でも、ソフトウェアダウンロードだってWebサービスだって、端から端まで読んで規約を完全に理解している人なんていない。みんな適当にスクロールして「承諾」を押して使っているじゃない。
だって、それを押さないと使えないんだから、「承諾」したことにして次の画面に進むしかない。規約なんて、そのくらいのものよ。
「規約は読みました」。
私はそれだけ回答した。
* * *
49.その規約のうち、生成物の利用について定められた部分を確認していますか?
「読んだはずです。」
50.使用した生成AIサービス側が、生成物についてどのような権利や利用条件を定めているか説明できますか?
「読んだけれど、人に説明できるかは自信がありません。」
51.SNSやプラットフォームへアップロードされたAIイラストが、他のAI学習に利用されるかどうかを知っていますか?
「SNSの方の規約も、はじめるときに読んでいるはずです。……ただ、昔なので、詳しくは……覚えていません。」
52.AIサービスやプランの種類によって、生成物の扱いや商用利用の条件が異なることを知っていますか?
「それは、そうだろうなと思います。有料プランなら、販売することができるとか。」
53.あなたが使用した生成AIサービスの種類を公開していない場合、そのイラストを利用する人は、サービス側の利用規約を確認できますか?
「……できません。」
54.利用者が安心して使えるようにするために、生成に使用したAIサービスの種類を公開する必要があると思いますか?
「そういう意味では……公開した方がいいかもしれません。」
55.前の、「19.使用しているAIサービスを公開する必要があると思いますか?」の質問のとき「必要ない」と答えませんでしたか?
「それは。ただの揚げ足取りだと……思います。」
56.AIサービスの規約が変更された場合、過去に公開したイラストについて利用条件を確認し直すことはありますか?
「規約なんて。何度も読むものでしょうか。……たまに、登録アドレスに規約変更の通知が来ていることは知っています。」
57.「AIで作ったイラストなのは同じなのだから、どのAIで作っても同じように扱える」と考えていますか?
「たぶん、規約によって違うんだろうと思います。」
58.生成時に、参照画像を使用しましたか?
「他の画像やイラストを参考にすることはあります。」
59.他者の作品を参考にしたプロンプトを使用したことはありますか?
「作品のテイストやキャラクターの風貌の詳細を表現するために、他のイラスト等の情報を取り込むことは大事だと思います。」
60.「参考にした」と「その画像を元にした」の境界について考えたことはありますか?
* * *
質問文だけが目の前に浮かぶ時間が、また少しあった。
それから、ふっと笑いが出た。どうして出たかは、わからなかった。
「参考にした」という言葉を、さっき私はどういう意味で使っただろう。
AIイラストクリエイターが、既存の画像や作品を元にすることは当然にあるはずだ。
それが「参考にした」と言える内容かどうか、なんて。考える必要性すら、感じていなかった。
著名な作品名を、プロンプトに入れることもある。不思議の国のアリス。人魚姫。ピーターパンにシンデレラ。
そうすれば、他に細かく指定しなくてもその世界観を出してくる。それが手軽でいいんじゃない。
「その境界は、曖昧なものなのだと思います」。
私はそう、打ち込んだ。
* * *
61.生成したイラストが、既存の作品に似ていると指摘された場合、どのように確認しますか?
「何を確認するんですか。似ているというか……同じ作品を指して表現させている場合もあると思いますが、だめなんですか。」
62.生成AIに画像を入力して、似た構図や雰囲気のイラストを生成したことはありますか?
「イメージを近づけるために別の画像やイラストを参照するのは、別に普通のことだと思います。」
63.その場合、入力した画像について、「AIサービスに提供してよい権利」が自分にあるか確認していますか?
「AIサービスにデータを提供するたびに、入力していいか悪いか、いちいち確認して判断しろってこと? 悪いけど、私そんなに暇じゃないの。」
64.有名漫画家や有名アニメの名前を入力して、キャラクターや世界観を生成させたことはありますか?
「……入力しないと、そのキャラや世界観が出力できないじゃない。」
65.特定の作家やイラストレーターの名前を入力して、その人に似た絵を生成させたことはありますか?
「普通に流行っているわよ。『この監督の映画作品』とか、『この作家っぽいイラスト』とかをプロンプトに入れることは。」
66.その場合に出力されたイラストを使用することで、第三者の権利を侵害する可能性について考えたことはありますか?
* * *
……イライラする。
こいつの質問に答えていると、まるで自分を馬鹿にされているような気さえする。
権利侵害? 許諾確認?
そんなの、いちいち生成するたびに考える奴がどこにいるのよ。プロンプト入力後の「生成する」ってボタンは、そんなに重くて仰々しいものじゃないの。
AI生成画像が、既存作品とあまりに酷似していたような場合に、問題になりうることくらいは知っている。
でも、そんなに細かく言う人間ばかりだったら、こんなに大勢の人が使っていないわ。
「当然考えたことはあります。でも、私は他者の権利を侵害したことはありません」。
* * *
67.自分が生成したイラストについて、第三者から「何を参考にして生成したのですか」と尋ねられた場合、説明できますか?
「取り込んだ画像も、プロンプトも私が考えたもの。説明はできるけれど、わざわざ言う必要はないものだわ。」
68.生成に使用した画像やプロンプトを、後から確認できる状態にしていますか?
「……できあがった作品たちは保存しているけれど。プロンプトや、参照元画像なんていちいち後から確認なんてしないもの。必要なの?」
69.「自分では意図していなかった」と「問題がない」は同じ意味だと思いますか?
「同じじゃないでしょ。何が言いたいの?」
70.自分では何も悪いことをしていないと思っている場合でも、他人の権利に関わる可能性について、確認する必要があると思いますか?
「他人の権利にかかわるかどうかを、毎回毎回いちいち確認しろってこと? 余裕があってできるんなら、した方がいいんじゃない?」
71.自分が生成したイラストについて、制作過程を他人に説明できることは重要だと思いますか?
「権利にかかわるかどうかに関係あるから、説明できるようにしとけって? くだらない。」
72.AIが生成したイラストには、必ず著作権が発生すると考えていますか?
* * *
著作権、著作権は……。
「著作権 AIイラスト」で検索をかける。
「AIイラストに著作権は、基本的には、発生しない」。
ブラウザで、そう答えたのもAIだった。
あ……そうだっけ?
「ただし。例外的に、人間が創作的に深く関与した場合には、著作権が認められる」とある。
創作的寄与がないと、著作権はないものとされるという。
……作者の私に、権利があるかどうかは確実ではないってこと?
でも、何度もプロンプトを変えて出したり、細かく詳細を指定したり、色々やってる。苦労して、考えて作ってる。
書いてあることをまとめると、要は私に「創作的寄与」ってのが認められれば、例外的に、著作権は認められるんでしょ?
でも。これって、誰が認めるの?
私の作品に、私の権利があるかどうかを、私は決められないの?
じゃあ、「私の作品」ってなに?
気づけば勝手に、手が動いていた。
「必ず著作権が発生するわけではないと、知っています」。
何故私は、こんな質問に答え続けているんだろう。そう思った。
* * *
73.自分の生成したイラストに著作権があるかどうかを、確実に判断できますか?
「確実には、判断できません。」
74.「自分が生成した」という事実と、「自分が著作権を持っている」ということは同じだと思いますか?
「違うと思います。」
75.あなたが「自分のイラスト」と呼んでいるものについて、本当に自分が権利者であることを確認したことがありますか?
「確認したことはありません。」
76.AIイラストに著作権が成立するために、どの程度の「人間の創作的関与」が必要なのか、確認したことがありますか?
「どうやって、確認すればいいでしょうか。」
77.AIによる生成物について、人間による創作的関与がどのように評価されるか知っていますか?
「知りません。」
78.あなたが入力したプロンプトだけで、必ず著作権が発生すると考えていますか?
「……考えていません。」
79.もし著作権が存在しない、あるいはあなたが権利者ではない可能性がある場合、それを他人に「使ってください」と提供することについて、考えたことはありますか?
「今度、ゆっくり考えたいです。」
80.あなた自身が権利を持っていることを確認できていないイラストを、商品の看板として使用することについて、どう考えますか?
「よくないこと、かもしれません。」
81.あなた自身が権利を持っていることを確認できていないイラストを、「自分の作品」と呼ぶことについてどう思いますか?
「私が苦労して書いた……生成した子たちは、『自分の作品』だと思っています。そう思いたいです。」
82.あなたが「使ってください」と書いたイラストを、利用者が「使ってよいイラスト」だと判断する可能性について考えたことがありますか?
「私が『いい』と言っているのだから、そう判断すると思います。」
83.その判断が間違っていた場合、利用者に何が起きるかを考えたことはありますか?
* * *
何が起きるか。何が起きるの?
何も入力せずにクリックすると、赤い文字でマークが表示された。この「100の質問」は、Webフォームで作成されていた。
回答なしではページ遷移ができなかった。
「 」。
私は、全角スペースをひとつだけ入力した。
* * *
84.利用者があなたのイラストを使った後、第三者から権利について指摘された場合、あなたはどこまで対応できますか?
「 」
85.「私は知らなかった」とだけ伝えることは、そのイラストを利用した人への説明として十分だと思いますか?
「 」
86.あなたが「使ってください」と言わなければ、その人はそのイラストを使わなかったかもしれません。そのことについて考えたことはありますか?
「 」
87.その場合、自分には責任はないと考えますか?
「問題は起きたことがないので。私には関係ない話だと思います。」
88.「使ってください」という言葉には、イラストについて問題がないという意味まで含まれていると思いますか?
「いいえ。」
89.そのイラストがどのように作られたのか、説明できますか?
「思い出そうとすることはできます。説明できるかどうかは……。」
90.そのイラストを使ってよい理由を、利用者に説明できますか?
「私が、AIが。いいと言っています。だって、だめな理由が。」
91.そのイラストを使ってはいけない理由があるかどうか、確認できますか?
「 」
92.あなたは、自分が他人に何を渡しているのか、説明できますか?
「オリジナルイラスト。私だ、や、私の。」
93.あなたは、本当にその人が安心して使えるだけの情報を提供していますか?
「 」
94.「自分が作った」という安心感だけを根拠に、他人へ利用を勧めていませんか?
「違う。」
95.自分では意図していなかったとしても、誰かの権利を含んでいる可能性のあるものを、他人に差し出していませんか?
「違う、違う。」
96.あなたが「どうぞ」と差し出したものを、その人が「自分の責任」で使うことになると考えたことはありますか?
「 」
97.あなたは、自分が所有していると確実には言えないものを、「自分のもの」のように、他人に差し出していませんか?
「違う違う違う違う。」
98.確認できないことを、確認したことにしていませんか?
「 」
99.それでも、あなたは「使ってください」と言えますか?
「 」
100.最後の質問です。あなたは、これからもAIによるイラスト生成を続けていきたいですか?
* * *
ピコン。
最後の質問に答えるタイミングで、スマホの通知が鳴った。
はっとして、閉じかけていた意識が一瞬で現実に引き戻される。目の前にノートパソコンの画面があり、そこには最後の質問文だけが表示されていた。
私は、何をしていたんだろう。
先ほどのスマホの通知を確認すると、DMが届いていた。
少しだけ、私の脳内に世界が戻ってくる。メッセージをくれたのは、私のイラストを直近で買ってくれた利用者だった。
さっきまでの質問は、気分の悪いものが多かった。もうすっかり涼しいのに、額に汗が滲んでいた。
楽しくやっている活動に、まるで水をさされたみたいな。昂っていた気持ちが徐々におさまり、時間の流れがゆっくりになる。
タップして、メッセージを開いた。私の目が、少し大きくなった。
「購入したイラストについて、確認させていただきたいことがあります。」