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奇跡の猫と、私の1年

    今朝も、みーちゃんの「遊んで攻撃」で目が覚めた。 顔を踏まれ、耳元で鳴かれ、布団を執拗に引っ張られる。その、うるさくて愛おしい朝が、今日でちょうど1年になる。


    1年前の4月12日、私はみーちゃんを連れてこの部屋に来た。 「絶対に迎えにくるからね」 そう声をかけて、慣れ親しんだプナの庭に放してから、2ヶ月半。日本への帰省中も、狂ったようにペット可の物件を探し続けた。ようやく見つけたヒロのアパートの鍵を受け取った日、私はまっすぐあの家へ向かった。 みーちゃんを、私の人生に取り戻しに。


    最初の2週間は、地獄だった。 夜中じゅう、聞いたこともないような声で泣き叫ぶみーちゃん。「お願いだから泣かないで。ここを追い出されたら、もうどこにも行く場所がないの」と心の中で懇願しながら、結局、暗闇で一緒に泣いていたのは私のほうだった。 森の静寂から、車の音が絶えない街へ。広い庭から、狭い部屋へ。みーちゃんの不安と、私の行き場のない不安が、夜ごとワンルームに響き合っていた。

    それでも、生きていくしかなかった。二人で。


    あの日、4年前のことは今でも鮮明に蘇る。 庭に横たわるみーちゃんを見つけたとき、その下半身は動いていなかった。骨盤骨折。パニックで夫に送ったメッセージへの返事は、たった一言、冷徹な宣告だった。

    「We should say goodbye.(安楽死させるべきだ)」

    診察室で与えられた猶予は10分。その短すぎる時間は、命を諦めるには残酷すぎた。みーちゃんは診察台の上で、かすれた小さな声で鳴いた。 ——家に帰りたい。 そう聞こえた。だから私は、首を縦には振らなかった。彼が言った「goodbye」は終わりを意味していたけれど、私が選ぶ道は、ここから始まるのだと決めた。


    そこから半年の、壮絶な看病が始まった。 3回の手術。毎日のガーゼ交換。背中から絶えず流れる排液と膿、加えて抗生剤使用による止まらない下痢。拭いても拭いても床や布団はそれらで汚れていた。
    傷口を保護するために、新生児用のベビー服を着せた。パイナップル柄、アボカド柄。痛々しい姿を明るい色で包みながら、「今日はどっちにする?」と無理やり明るい声で話しかけた。そうすることで、私の心まで膿んでしまわないように必死だった。みーちゃんの瞳だけが、「今、生きてる」と力強く訴えていた。

    傷口がようやく塞がった日、私はその場で崩れるように泣いた。 病院のスタッフは今でも言う。「信じられない。あの子がここまで元気になるなんて。ママも本当によくがんばったね」と。 みーちゃんは、病院で「奇跡の猫」と呼ばれている。


    あれから1年。 奇跡の猫は今、私の膝の上で、何の警戒もなく丸くなって寝ている。 「We should say goodbye.」と言った人は、もうここにはいない。朝の執拗な遊んで攻撃も、崖から傷だらけで救い出したあの夜も——そのすべてが、今の私を形作っている。

    ふと思う。 みーちゃんは、私をあの檻から連れ出し、生きていく勇気をくれるために、私の前に現れたのではないだろうか。 彼女が何度も絶望を跳ね除けて生き抜いてくれたのは、「私にも奇跡を起こす力があるんだ」と教えるためだったのではないか。 そして、窓の外が曇っていようが晴れていようが、何の変化もない毎日を二人で繰り返せることが、本当は一番の幸せなんだと気づかせてくれたのではないかと。

    私たちは二人とも、ど根性で生き延びたのだ。


    ヒロの空は、今日も低く垂れ込めている。 窓の外は白く霞んでいるけれど、それがかえって、この四角くて狭い部屋を「安全なシェルター」のように感じさせてくれる。 プナの空の下で感じていた、あのみりみりと肌を焼くような焦燥感は、もうここにはない。

    1年前の、絶望の淵にいた私に教えてあげたい。 大丈夫。ちゃんと、辿り着けるから。

    そして、私の膝で寝息を立てるみーちゃんへ。 今日で5歳。生後2ヶ月でひょっこり現れたあなたが、もう5歳になった。去年の誕生日は、新しい生活に必死すぎて、お祝いも忘れていた。ごめんね。 今年は、ちゃんと覚えているよ。 次はもっといいこと、もっと楽しいことが、私たちを待っているからね。🐈

    🌿 今日のこころを、少しだけ。Day56、ハワイ島より。

     
     
    「今日のこころを、少しだけ」─暮らしの中の、小さなこころの断片を綴っています。 ハワイ島ヒロで、猫のみーちゃんとふたり暮らし。 自由を手にする前のこと、少しずつ自分を取り戻していく日々。 足取りをまとめた「白い靴を履いて:猫と歩いた再生の記録」全4巻、Kindleにて刊行中📚🌿

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