海辺の宝さがし記録 in 坂の下海岸
海に行くと、浜をふらっと散歩しながら海の香りを身体いっぱいに感じて、宝探しをするのが性に合っている。漁師一家である父と、ダイビングが好きだった母に連れられて海に良く出かけた幼少期。けれど、アトピー体質だった私は全身に染みてヒリヒリと痛かった。プールは大好きでイルカのように泳ぐのが大好きだったのに。
けれど、海なし県で生まれ育った私には、たまに訪れる海がより特別なものに思えて、且つ両親から譲り受けたものなのか無性に海が好きだった。
だから、海に入らずに海を楽しむ方法を見つけた。のちに、その名をビーチコーミングというのだと知ったのは大人になってからであったが、三十歳を目前にした今でも海に行くとつい足元を見てしまうのだ。
坂の下海岸
(鎌倉市長谷から鎌倉市坂ノ下までの約1.5kmの海岸)
由比ヶ浜も気になっていたけれど、日曜日で人が多そうだったので坂の下海岸を選んだ。
江ノ電長谷駅から徒歩5・6分。駅からすぐに行けるのがいい。

人がごった返している海はあまり得意ではなくて、なんなら私一人しかいないくらいの静かな海が好き。坂の下海岸もそれなりに人はいたけど、多過ぎずまばらでちょうど良かった。
この日は春日和でとてもあたたかく、サーファーがたくさんいて驚いた。こんな日に波に乗れたらどんなに気持ちがいいだろうかと横目で見ながら、宝探しを始める。

香川の海で出会ったようなカラフルな貝殻もちらほらあり、貝溜まりのようになっている場所も多く楽しい。坂の下海岸、楽しすぎる..と思わず呟きながら拾っていく。
シーグラスや陶器も多くて感動。誰かにとっては見向きもされないそれらは、誰かにとっては素晴らしい宝物になるのだから、人が何に価値を見出すのかって面白いなと思った。この綺麗な貝殻や元は何か別の形をしていたシーグラスや陶器のかけら。シーグラスは「人魚の涙」とも言われる。その対象をどう見るかによって本来宿っている輝きが増していく。

この日、神奈川に出かけていたのは魔女の宅急便の作者である角野栄子さんの映画上映会とトークショーがあったからなのだが、角野栄子さんも鎌倉に住んでいてよくビーチコーミングをするらしい。
昔の人が使ったお茶碗とかお皿のかけら。「昔」があるじゃない?ここに。使った人の「昔」がある。
角野栄子さんは、陶器のかけらを拾うことが多いらしい。この言葉を読んでからのビーチコーミングだったので、今回は陶器のかけらも集めてみた。

海のお裾分けに感謝をしてビーチをあとにした。家に帰って、丁寧に洗って日に当てて乾かしていく。砂に埋もれていた宝物たちがピカピカに輝きを放つ瞬間がたまらなく好きだ。ここにはない、深い海の力とこの宝物たちが見てきた世界がぎゅっと詰まっている気がして、時間を忘れて見入ってしまう。

いつかこの子たちをなにかひとつの作品にできたらいいなと密かに野望を抱いている。けれどこの自然のかけらは、そのままにしておきたいような気持ちもあり、お気に入りのクッキー缶の中で今もじっとその日を待ち侘びている。
