メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo byatsukamakun01

はじめての母の日

    カーネーションも、手紙も、ありがとうの言葉もない。
    当たり前だ。娘はまだ生後7ヶ月。“母の日”の存在はおろか、感謝の気持ちさえまだ知らない。
    でも、私にとっては忘れられない日になった。
    こんなにも、“母である自分”を自覚して、母として溢れる感情を抱き締める日になるとは。
    これこそが、はじめての母の日に娘からもらった最高のプレゼントなのだと思う。

    娘が、ひとりで坂を登った。
    文字にするとたったそれだけのことだ。
    でも、その“たったそれだけ”に全身全霊で向き合う彼女の必死な姿に、私は心を打たれてしまった。

    娘はまだハイハイができない。前に進みたい時はいつも、お腹をモップのようにして“ずり這い”で進む。家の中はそれでどこにでも行けるので、特に困ってはいない様子だった。
    そんな彼女が初めて、上り坂に出逢った。
    友達親子と遊びに行った屋内遊び場「しまぐるランド」で、とても大きなプリンの滑り台を目の前にしたのだ。

    画像
    しまぐるランドのおおきなプリンのすべりだい

    視線の先のプリンの上には、見慣れた母の姿。隣には、ひたすら自分で登っては滑って遊ぶ友達。
    そんな状況に刺激を受けたのだろうか。娘は手を前に出して、上に向かって進もうとした。でも、いつものようにいかない。上り坂はずり這いで登ろうとしても、滑り落ちてしまうからだ。
    ハイハイができない娘には、まだここを登るのは難しいだろう。そう思っていた。
    でも、娘は果敢に前に進もうとした。
    気付いたら、誰からも教わることなく、右、左、右、左、と、小さな足を斜面の摩擦でなんとか引っ掛けながら、少しずつ前に出していった。
    一歩一歩、着実に登っていく。
    気づいたら半分を越えて、坂の色がカラメル色に変わり、てっぺんまで辿り着いた。

    信じられなかった。本人はさも当然と言わんばかりの涼しい顔をしていたけれど、まさか、と思った。
    出来ないだろう、と大人が勝手に思ったことを簡単に覆して、その場で文字通り“進化”する姿を目の当たりにして、感動を通り越して圧倒されてしまったのだ。
    なんでも最初から出来ないと決めつけてはいけないと、当たり前のことを教えてもらった気がした。

    だが、それだけではなかった。
    何事も、大事なのは二回目以降。
    一度滑り降りてからもう一度挑戦した坂登り、最初は順調だった。カラメル色のところまであっさりと手が届く。
    でも少し疲れが出てきたのか、途中でバランスを崩して後ろにズズズッと滑ってしまった。
    びっくりしたのか、少しぐずり出す。
    ほとんど振り出しに戻りつつも、それでももう一度一歩踏み出す。でもまた落ちる。
    これを、何度も何度も繰り返して、なかなか最初のようには登れなくなってしまった。

    やっぱりなかなか大変だよね、と思ったのだが、娘は諦めなかった。
    何度滑り落ちても、同じ道をもう一度進んでいく。それも、泣きながら。

    7ヶ月の娘にはまだ、“悔しい”という感情は育っていないのではないかと思っていた。
    でも、目の前でプリンと対峙する彼女は、さっきは行けたのに!あとちょっとなのに!と悔しさを全身で訴えているように見えた。

    泣き声はどんどん強くなっていったけれど、私は出来るだけ手を貸さなかった。
    プリンのてっぺんで、辿り着くのを待った。
    途中で少し友達にお尻を押してもらったりしたけれど、最終的にはほぼひとりで、もう一度坂を登り切った。

    時間にして、わずか5分強だと思う。たったそれだけの時間。
    でも、彼女にとってはとてつもない挑戦の時間だったはずだ。
    挑戦を終えた彼女はやっぱり涼しい顔をしていたけれど笑、きっとどこかで達成感も感じていたのではないだろうか。

    はじめてのハイハイ(もどき)で上り坂を登ったこと自体すごいことだと思ったけれど、それ以上に感動したのが、どんなに泣いても決して諦めなかったことだ。
    まだこの世に生まれてたった7ヶ月なのに、そんな、大人でも難しいことが出来るのか。
    凄まじいエネルギーを感じて、私は胸がいっぱいになった。

    娘が、ひとりで坂を登った。
    たったそれだけのことから、私は色々なことを学んだ。
    何事も、大人が勝手に限界を決めてはいけないこと。
    そしてたとえ泣いていたとしても、頑張りたいと願う彼女の気持ちを尊重して、信じて見守ること。
    これから先、彼女の人生を応援するうえでも大切にしたい指針になった。

    言葉にできない、じんわりと満たされた気持ちで、はじめてのしまぐるランドを後にした。
    子どもの成長に心を動かされるってこういう気持ちなのだろうか。
    親になる前は分からなかった、言葉で理解はできても、本当の意味では知り得なかった気持ち。
    これからもきっと、そんな感動にたくさん出逢えるのかもしれないと思うと、わくわくする。

    あなたの母になれて、本当によかった。
    最高の母の日をありがとう。


    ※公開タイミングを逃して父の日も間近に迫りましたが、この感動が薄れないうちに。。
    ちなみに娘はこの2週間後くらいにずり這いを卒業してハイハイに完全移行しました😌

    この記事が参加している募集

     
     
    マイペースに、大切に。 関東 / 20代ラスト / 同い年夫と0歳娘との三人暮らし / 2025〜育休中 2026.01 milk ▷▶︎ 咲

    あなたへのおすすめ