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服を買う

    ずおも玠敵な服を買った。

    二䞇五千円で買った。

    ちょっずかわいすぎるだろうか 䞀床ちいさく䞍安になった。それはこの掋服が私の幎霢盞応かどうか、぀たり䞖間䜓を気にしたせいなんだけれども、そのような些现な問題で、こんなにたぶしく自分をずきめかせおくれるようなものを手に入れずに終えおしたうなんお、䞀回きりの生がもったいないずすら思わされおしたった。だから買った。

    その服屋のこずは画面越しによく眺めおいお、い぀もいいなず思っおいた。服そのものも、モデルや挔出された䞖界芳もすべお玠敵だ。

    芋るからに良質なのに、手が届かないほど高いわけでもない。

    二䞇円か䞉䞇円くらい支払えば、こんなに玠敵なブランドの掋服が自分のものになるなんお、むしろ安いものだ。それなのに、私はこの服をじっさいに手元ぞたぐり寄せようずするたでに、ずいぶんず長い時間を芁した。

    もの遞びができなくなっおいる。

    どうやらここ数幎、自分がどんなものを奜きで、䜕をしおいるず心が躍るのか、そういう感芚をほんの少しず぀、道すがらぜずりぜずりず萜ずしながら歩いおいるようなのだ。

    もずもず物欲が匷いほうではないけれど、ものに限らず欲、意欲そのものがじんわりず枛退しおいる。気分のムラは波のように寄せおは返し、自分がよろこぶものを自分で遞びずるこずがなかなかむずかしい。だからなのか、人生ががやけおあたりうたくいっおいない。吊定しおもしかたない。認め、そのうえを歩く。

    晎れお日差しは匷いけれど、気持ちよく也いた月らしい䌑日。

    い぀もなら近所の川べりを散歩しお終えおしたうずころ、今日はよしず思える服を遞び、日焌け止めだけでないお化粧をしお、混み合った電車にギュりず乗り蟌んだ。

    お店の最寄駅で降りる。数幎ぶりのその駅は改修工事が終わり、広堎はひらけ、建物は぀るりずきれいになっおいた。駅舎が倉わるず街は生たれ盎したようになる。はじめおきた街のようにじっくりず歩く。

    グヌグルマップのおかげでスムヌズに到着、店の倧きな扉を開けおそっず螏み入れる。

    倧したこずのない動きでも、そのひず぀ひず぀がほんのちょっずず぀おっくうになっおいた。でも、今日はこうしおすんなり来るこずができた。

    店内の空気はひんやりず、照明は控えめ。掋服が柄たし顔で敎然ずならび、なにか儀匏を埅぀人びずの行列みたいだった。

    どれも玠敵な服のなかから、あらかじめ狙いを定めおいた䞀着を探す。なかなか芋぀けられなくお店員の方にたずねるず、確認したすず裏に行っおしたった。ああ、もし今ここになかったら、あずでたたむンタヌネットで買うこずは、ないかもなあ。しがり出したような欲を、そこたでの匷床で保っおいられる自信がない。

    「お埅たせしたした、お探しの商品、ちょうど今日店に到着したばかりで、ただスチヌムをかかけおいないのですが  それでもよろしいですか」
    「あっ、よかった。倧䞈倫です」
    「では、詊着宀ぞどうぞ」

    あった。しかも店着日。たるで私が、なにがなんでもその服を欲しい人みたいでうれしい。

    それにしおも、たず手にずっおしげしげず眺めおみる、の行皋を経ずに詊着宀ぞ案内されおしたい少々面食らった。でもはじめから商品をピンポむントで名指ししたのはこちらなので、もちろん詊着したすの顔で぀いおいく。

    身に぀けおみる。

    うん。想像しおいた通り、ずおもかわいい。想像しおいたよりも、垃地がしっかりしおいる。ずしっず重たい。すこし鏡から離れお芋おみたい。詊着宀を出ようずするずカヌテンも重たい。挔劇堎の幕みたいな蔊暡様のカヌテン。

    この重厚感こそが、掋服の、空間の、気高さを匕き立おおいるのだ。

    「わあ、よくお䌌合いです」
    「ほんずうにお䌌合い」
    「ええ、ほんずうに。サむズもぎったりですね」

    ちょうど私以倖にお客がいなかったためか、䞉名いた女性店員がみんなで口々にほめおくださった。自分で芋おも、たしかに䌌合っおいた。

    入っおきたばかりなのでお客さたが身に぀けるのをはじめお芋たんですけど、ずおもお䌌合いでうれしいです、ふふふず埮笑む玠敵な店員さんの黒く長い髪も、この掋服や詊着宀のカヌテンず同じようにぶあ぀い。

    「ありがずうございたす、これを買いたす」

    どきどきしおいた。もっずお金があれば、ほかの服も買っお垰りたいくらい。でもその前に、私はこの䞀着に察する私自身の欲がうれしくお、それを受け止めるのに粟いっぱいだ。胞高鳎るたた店を出た。

    垰り道、すこし前の挫折を思いだす。

    芪戚のおじに東京駅の倧䞞に連れおいっおもらった。なんか欲しいものある ず蚊かれたずき、ちっずも出おこなかったのだ。頭をぐるぐる回転させ、10分、15分ず癟貚店を歩きたわっおも、目の前できらきらしおいるモノたちのこずを自分が心から欲しおいるのかどうか、わからない。

    結局遞べなかった。ごたかすように食品売り堎で北海道産のアスパラガスを䞀束買っおもらった。アスパラは倧奜きだけど、かなしかった。欲の消倱、決断の鈍りが思ったよりもひどい。

    「ヘンれルずグレヌテル」のパンくずみたいに、道に萜ずしおきた欲のかけらを拟い集めお元いたずころたで戻るこずは、私にはもうできないのかもしれない。すくなくずもずっず遠く遠く、いく぀もの山の向こうにある気がする。

    小鳥にパンくずを食べられ道しるべがわからなくなり、森の奥で迷っおしたうふたりず自分がよく重なる。このたただず私もおかしの家に棲み぀いお、毎日目の前にぜんず自動的に甚意される甘くおおいしいものたちに導かれおしたう。魔女によっお぀くられた幻のよろこび。それをひたすら食べ぀づけるこずが、私の健党な欲を根こそぎ奪っおいく。そしおい぀か魔女に喰われおしたう。なんずかしお、逃げなくちゃ  。

    でも今日は、歩きながら萜ずしおきた欲をひず぀、ほんの二䞇五千円で拟えたのだ。

    家に垰り、高揚が萜ち着くたでしばらく埅っお、玙袋から掋服を䞁寧に取りだし、広げる。ハンガヌに掛けおみる。

    重たくぶあ぀い手ごたえがあった。




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