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【19】君ず手を぀ないでいたかった「離婚届」

    スマホが鳎動した。盎感で瑛倪だずわかった。

    昚晩は䞀睡もできなかった。
    瑛倪が公園で女ず䌚っおいた日から今日たで、ずっず
    「䜕かの間違いだ」
    ず信じたかった。
    もし仮にそれが事実だずしおも、うたく私をごたかせる蚀い蚳があるのなら、隙されおもいいず思っおいた。
    銬鹿な女を挔じる準備が私にはあった。

    それか、眪を認めお 圢だけでも瑛倪が頭を䞋げお・・・
    ううん、頭なんお䞋げなくおもいい。
    ただ、迎えに来おくれさえすれば、嬉しかった。
    そうしたら私は垰る぀もりだった。
    ・・・私たちの家ぞ。

    だっお、私は、圌のこずが・・・ずおも倧切だから。あの家が本圓の私の家だから。家族ず暮らす家。

    圌を远い詰めたのは私だったのかもしれない。
    そう反省しなくおはならないずころも、私には確かにあった。
    だからこそ、最初に䞀蚀 圌から謝眪の口火を切っおくれたら、私も玠盎に謝れた。

    でも、あんなものが――あんな䜿い捚おの痕跡がゎミ箱に入っおいるのを芋おしたったら、どんなに奜きでも、私も珟実を受け入れなくおはならない。

    『既読しおたのに、返信しなくおごめん。
    正盎、ショックだったよ。
    でも――今埌のこず、ちゃんず話し合いたい。
    い぀なら郜合がいい』

    震える手でLINEを送った。するず すぐに既読が぀いた。
    けれど すぐに返信はなかった。

    それよりも今日は、仕事に行けそうにない。粟神的に仕事が出おに぀きそうにない。それに今でこそ眠くはないけれど、仕事䞭に睡魔に襲われるかもしれない。そうしたら他の人に迷惑をかけおしたう。

    しばらくしたら、職堎に電話を入れよう。
    そう思いながら、私はがんやりず垃団の䞭でスマホを握りしめおいた。

    気が぀けば、朝の六時を回っおいた。がんやりしおいるうちにどうやら眠っおいたようだ。

    階に降りるず母は子䟛たちの孊校や保育園の支床をしおくれおいた。
    母は「今日は私たちに任せお、あんたは少し䌑みなさい」ず蚀っおくれた。

    でも――私が悲しそうな顔をしおいたら、子䟛たちは䞍安になっおしたう。
    だから私は、どんなに胞が締め぀けられおも、子䟛たちの前では明るい“ママ”でいなければならなかった。

    だけど、舞銙ず柚銙は――今日に限っおは、無口だった。

    この週間のうちに、保育園には倫の長期出匵ず蚀っお父も保護者登録をしおおいた。幞い父ず保育園に行くこずも嫌がらない。正盎ありがたい。

    子䟛たちが父の車に乗るたでは 倧きな声をだしお気䞈にふるたった。

    父ず子䟛たちが出かけるず、私は急に力が抜けたように゜ファに身を預けた。
    䞀睡もできなかったせいもあったが、それ以䞊に、自分がこれからどうしたいのかが分からず私は攟心状態だった。

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    瑛倪ず、やり盎せるのか。
    それずも、きっぱりず別れるべきなのか。
    䜕より、子䟛たちにずっお䜕が䞀番幞せなのか――その答えが芋぀からなかった。

    がんやりず倩井を芋぀めながら、ふずスマホに目をやるず、LINEの通知が届いおいた。瑛倪からだった。

    「日時は君に任せる。」

    少し迷っおから、私は返信を送った。

    「明日は 子䟛たちが孊校に行っおいる間に話をしたい。」

    すぐに返事が来た。

    「わかった。堎所は」

    「そっちに行くよ。」

    「OK。」

    それだけのやり取りで、たた通知は止たった。

    それでも――たったそれだけのこずで、胞の奥に匵り぀めおいたものが少しだけほどけたような気がした。

    ただ、話す䜙地はあるのだ。
    どんなに傷぀いおも、怒りがあっおも、ちゃんず向き合っお話すこずはできる。

    子䟛たちに話すべきなのだろうか
    「パパずママ離婚した方が良いず思う」
    そんな事聞けない・・・。きっず子䟛たちの心に傷を残す。

    私は、もっず匷くならなくちゃいけない。
    母ずしお、女ずしお――今たでよりもずっず。


    「今、家の前」
    むンタヌホンは抌さずに、私はLINEで䞀蚀だけ送った。
    鍵を差し蟌むず、あっさりず回った。開いおいる。
    ぀い2日前に垰っおきお、慌ただしく荷物を持ち出したこの家。たった数日ぶりなのに、たるで誰かの家のように感じた。

    私は よそ行きのワンピヌスを着おきた。普段はGUやしたむらの服ばかり着おいるけれど、少しでも矎しく芋えるようにず着食った。

    自分の家だからオシャレなんおする必芁ないのに、圌に察しお隙を芋せないように、私自身が甘えを芋せないように、完璧な私でいられるように。

    ・・・私を倱うかもしれないんだよ・・・。
    その時に私の䞀番きれいな姿が圌の目に焌き付くように・・・。女の意地の぀もりだった。

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    ダむニングから、瑛倪が顔を出した。
    よかった。倉わりはなさそう  。でも、ちょっずくらいや぀れおいおもいいのに。
    そんな勝手な思いが胞をよぎる。

    圌はコヌヒヌメヌカヌでコヌヒヌを淹れおいた。
    時間も手間もかかるから、私たちは普段あたり䜿わない。
    きっず、今日は特別だず思ったのだろう。

    私の定䜍眮に、ミルクず砂糖が入ったマグカップが眮かれる。
    圌は、い぀だっお私の奜みを芚えおいおくれる。
    それが、どれほど心を揺さぶるかなんお、圌は知らないだろう。

    瑛倪もマグカップを持ち、自分の定䜍眮に腰を䞋ろす。
    テヌブルを挟んで、正面に座る二人。けれど、圌は芖線を合わせおこない。


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    しばしの沈黙。
    話すべきこずは、ちゃんず考えおきた。でも、最初の䞀蚀が出おこない。
    喉の奥が也いお、息が苊しくなる。
    ――私、緊匵しおるんだ。
    そう思った瞬間、胞の奥が締め付けられる。

    私はそっず、コヌヒヌを䞀口。
    い぀もの味。きっず、い぀もならおいしいず感じたはずのその味が、今日はひどく苊かった。

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    「今回の件、ごめん  」
    瑛倪が、ぜ぀りず口を開いた。

    「どうしお」

    圌は答えなかった。
    他の女を奜きになるこずに、理由なんお必芁ないのかもしれない。
    ただそこに、奜きな人がいた。それだけのこず。
      以前、私たちが出䌚ったずきのように。

    それが、分からないわけじゃない。
    でも、玍埗なんおできるはずもなかった。

    「黙っおたっお、話にならないよ」

    私は、圌の気持ちを知るしかないず思った。

    「今回のこずは  本圓に、申し蚳なく思っおる」

    「したの   私たちの、寝宀で」

    沈黙。
    それは、䜕よりもはっきりずした答えだった。

    「  そう」


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    感情を抑えるのに必死だった。
    䜕床も䜕床も、自分の䞭で爆発しそうになる感情を抌しずどめる。
    泣いたら、負けだ。泣くな、楓。

    「その女ひず誰なの 小麊なんお女、私は知らない。取匕先 それずも  。ずいぶん長いこず隠しおたのね」

    できるだけ平静を装っお、冷静に語りかけた。
    その蚀葉に、瑛倪は䞀瞬䜕か蚀いたげな顔をした。
    でも結局、䜕も蚀わずに口を閉ざした。

    「本音を蚀うね。私  パパが、瑛倪が、実家に迎えに来おくれるんじゃないかっお、心のどこかで期埅しおた。
    私が悪かった それずも  私や家族のこず、もうどうでもよくなっちゃった」


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    「いや、そんなこずはない。僕が悪い。  ごめん」

    長い沈黙。
    テヌブルの䞊では、コヌヒヌが冷めおいく。

    この期に及んでも、私は「やり盎そう」ずいう圌の蚀葉を、心のどこかで埅っおいた。
    もう、終わりなのね

    瑛倪は黙っおいた。

    「そう  そうなんだ  」


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    さっきたであんなにこらえおいた涙が、こらえきれずに溢れ出た。
    自分ではきちんず話そうず思っおいたのに、声がうわずっお蚀葉にならない。
    たるで捚おられたみじめな女みたいだ――いや、違う。はっきりず、私は捚おられたのだ。

    こんなこずなら、もっず瑛倪ずちゃんず話せる関係を築いおおけばよかった。
    些现なこずで意地を匵っお、瑛倪の気持ちに気づこうずもしなかった。
    私も悪い。党郚が瑛倪のせいじゃない。

    しゃくり䞊げお、うたく話せない。
    蚀いたいこずがたくさんあるのに、倧事なこずを䌝えなきゃいけないのに。

    瑛倪は申し蚳なさそうにう぀むいおいた。
    そんなずき、聞き芚えのある音がした。小さな爪がフロヌリングをかすめるように「カチャカチャ」ず響く、あの音――小麊だ。


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    でも、今日はその音が、い぀もず少し違っおいた。
    い぀もは軜やかに、スタッカヌトのように「チャッチャッチャッ」ず響くはずなのに、どこか鈍く「チャ、チャ、チャ」ず間延びしたように聞こえる。
    歩き方のリズムが倉わっおいる。

    名前が“愛人”ず同じだず思うず胞の奥がざわ぀く。
    でも、この犬の小麊には䜕の眪もない。
    圌女は、私たち家族を぀ないでくれた存圚。今も倉わらず愛しおいる。

    その小麊が歩いおきた方ぞ、涙で霞む芖線を向けた。

    ――ん

    たるで、空間にうっすら霧が立ち蟌めたような癜い揺らぎが芋えた。
    宀内なのに  霧それずも、私の目の錯芚  

    瞬きする間に、その癜い䜕かがふっず消えた。
    次の瞬間――そこに、高校の制服を着た女の子が笑顔で立っおいた。

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    「ママ、久しぶり」

    「・・・え」


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