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【26】君と手をつないでいたかった「二人で決めたこと」

    沈黙が続いた。私はこの空気に耐えきれず、何かをするふりをして立ち上がった。
    ライスの大きめのシャツがまだ私の肩にはかかっている。かろうじて私の体の大部分はシャツで覆われ瑛太の視線にさらされることはなかった。
    このシャツを脱いでしまうと、体中に昨晩の痕跡がある。見られてはならなかった。

    それにしても、
    ライスは・・・小麦は、服を着ていたのに今は服を着ないで丸まって眠っている。
    犬になる時に 服を脱ぎ捨てたような形跡もない。しかし、私はいま彼のシャツを羽織っているのが不思議だった。

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    今 洋服に着替えに言ったら不自然だろうか? 瑛太は不自然に思ってしまうのだろうか。

    普段なら何にも気にならないことが、私の思考の大半を占めていた。
    私は 意を決して自室に戻るふりをして着替えに行こうと思ったその時だった。
    「ライス達には、申し訳なかったとは思っているんだ」

    その声に、私は動きを止め、彼の方を振り返った。振り返らざるを得なかった。彼がようやく口を開いたのだ。

    「結局、僕はみんなを不幸にしてきた」

    そうつぶやく瑛太の声は、ひどく静かで、自分を責める響きを帯びていた。

    「それは誰に対して?私たち?前の奥さん?ライス君たちのような犬の事?」

    私は尋ねた。そして続けた。
    「いつも、遠い目をしているのって、そういう事? 」

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    ずっと抱えていた疑問。彼が何かを遠くに置き去りにしたまま、生きているように見えて仕方がなかった。
    そして、私が彼に寄り添えなかったことを悔やむ自責の問いかけ。

    瑛太は視線を落としたまま、ぽつりと言った。

    「前の妻との間には結局子供を授からなかった。僕たちは途中であきらめたんだ。だから僕たちの愛情は自然と犬たちに向けられた。
    子供の代わりと言ったらなんだけど、彼らを最後まで面倒みると誓ったんだ。
    それなのに、僕は自分の身勝手で 前の妻。犬達・・・を捨てたんだ。
    楓の事も幸せにできていない。
    僕は柚香が授かったことも、産んでくれるといったことも感謝しているんだよ。でもね、すべて自分勝手だった。いつも立ち止った時 僕は僕自身の事を許せなかった」

    「それさ・・・前の奥さんにも、私にも、舞香や柚香にだって 失礼だと思わない?
    私は、子どもを授かったから選ばれたの?
    私は『産める女』としてあなたに選ばれたの?
    あなたにとって、ただの『都合のいい女』?
    じゃぁ、柚香がいなければ こうならなかったって言いたいの?」

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    彼は小さく息を吐いた。そして、続けた。

    「僕が幸せだなって思う時、いつも彼らの犠牲にあるんだなって、僕はそういう意識だったんだ。
    楓と一緒になったのは、僕にとってはとても素晴らしい事だった。本当に。でも、その幸せを感じれば感じるほど、僕は罪の意識にさいなまれるんだ。」

    私は疑問に思った。未練があるの? 私とは出会わなければ、再会しなければよかった? 
    私は・・・私だけを見てほしい。そんな女じゃ、あなたは受け入れてくれないの?

    「でも、未練があるわけじゃない。やり直したいと思っているわけでもない。君の事を、本当に愛してる。一緒になれて、良かったと思ってるよ」

    「だったら、どうしてそんなふうに思い詰めるの? 私たちと幸せになる、彼らの代わりに・・・私たちを幸せにするって事じゃ あなたは自分を許せないの? 」

    彼の心は繊細だった。私自身、彼の初めて知った部分だった。それは、彼一人の責任ではない。瑛太がいて私がいる。私が彼を受けれた。受け入れたというよりも、そう願った。

    私が元凶? そう思っているの?
    私は私自身の中で溢れるものがあった。
    そうか、私が彼を苦しめていたんだ。

    「ごめんね。私がいなければ・・・」

    「違う。君が好きだった。君と一緒にいたかった。子どもがいようがいまいが、それは変わらない。僕が 過去と決別できずに、この数年間引きずっていたんだ。」

    彼の独白は続いた。

    「それとさ、僕は いつも君の事、楓が 頑張ってくれていることにキチンと目を向けていなかったと反省しているんだ。
    その事を言えないまま、ずっとこんな風に気まずい関係でいたこと、すごく後悔しているんだ。
    ごめん。
    そして、いつもありがとう。君がいてくれたから、僕はいつも頑張れているんだ。」

    彼の気持ちもまた、私と一緒だったのかもしれない。
    彼の事が好きなんだったら、彼の心とも向き合おう。
    だって、彼の事を嫌いになったわけじゃないんだから。

    そして、もう一つの・・・・問題。それは私にも関係がある事・・・小麦。

    「小麦の中に 僕は「許し」や「癒し」のようなものを求めていたのかもしれない。
    まして、僕は「愛犬」たちに思い残したものがあったから、犬の気持ちを代弁してくれているようで、彼女が優しく僕に接してくれていることに流されていた。
    でも、僕は 君と、楓と一緒にいたいんだ。ずっと。
    小麦といる時も、いつも君の事が頭の中にあった。罪の意識もあった。だから」

    そこまで言って 空白があった。私は彼を見つめる。
    そしてまた瑛太が、初めて私をまっすぐに見た。

    「時間がかかってもいい。やり直せないか?愛しているんだ。君の事を、楓の事を。もちろん子供達も。」

    その言葉には、かつての彼にはなかった、覚悟のようなものが宿っていた。

    私は黙ってうなずいた。すぐに答えは出せない。
    でも、もう一度始めてもいいと思えたのは──たぶん、私も変わりたかったからだ。

    「今日、泊まっていく? ・・・泊まっていくって時間じゃないね。もう夜が明けそうだ。」

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    少し困ったような微笑を浮かべ 彼は私に手を差し伸べた。
    私は 彼の腕の中に引き込まれるように一歩前に出て目を閉じた。

    彼のキスが私の唇に落ちた。

    驚くほどの甘いキス。ライスよりも 甘く、愛しかった。さっきまでライスに抱かれていた体は 今、瑛太の腕の中にある。

    ライスの事を素敵と思った身体は 彼に触れられただけで一瞬で開花した。
    レースの下着をつけているはずの花弁から まるでレースの下着など元からないかのように蜜があふれ 一筋の線になって脚を伝っていくのを感じた。

    私、こんなに・・。。

    さっき、「満足」と思った身体は、瑛太の身体を求めていた。
    ライスの身体以上に。

    私が羽織っていたシャツを優しく肩から下ろされる。シャツは床につくかつかないかのところで光のかけらになって消えた。
    私の視線からでは分からないけれど、おそらく瑛太の視線からは 先程の行為の跡が生々しく見えているはずだ。私は彼を直視できなかった。
    私は瑛太の事を悪く言う資格なんてない。淫らな欲求不満の女だ・・・。
    悲しくなって、そして、空しくなって震えた。

    瑛太はその私を見た時 戸惑うような表情を見せた。しかし、また私の身体を確かめるように見た。
    瑛太の視線が一瞬止まる。気付いた。
    そう、私を叱って・・・。でも、瑛太は何事もないように 同じ場所にキスをした。その上に彼の愛の証をつけた。それは彼なりの「上書き」だった。

    今までに感じたことの無いような快楽の波に飲み込まれた。私は心も身体も濡れていた。
    触れられるたびに歓喜の涙があふれる。
    「・・・ごめんなさい」
    自然に、私の口から 言葉が漏れた。
    「しっ」
    瑛太は私の口に唇を押し当てて黙らせる。

    それは、ライスが気を利かせたつもりの「キスだけ」という嘘。
    そして私が小麦の事で彼だけを責めていた事への懺悔だった。

    彼の指に触れられる すべての部分が高揚するのがわかる。
    彼もまた、そうだったのだと思う。
    若い時のように、彼と出会った頃のように、私は彼の部分を丁寧に奉仕した。熱く、逞しいそれに触れると、彼は小さな声をあげてのけ反った。


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    瑛太は、私の口の中を彼で満たすと、満足そうにソファに横になった。
    口の中は彼のにおいが充満した。それは少し懐かしさを感じる匂いだった。
    でも、不思議とそれは 嫌ではなく、むしろ愛しさを感じて口の中で転がしながら味わと、今まで感じたことの無いエロティックな興奮を覚えた。

    ごくりとした時に喉にへばりつくような感覚もあったけれど、
    私の脳は愛しさでそれをもっとせがんだ。
    もっと欲しかった。私を汚してほしいとさえ思った。

    私は 横たわる彼の 少年のようになったそれを、口でキレイにした。

    彼のにおいがする。その匂いに私は私の少女を重ねる。
    私の少女は 昨晩 いばらを全て取り払い、いまや一輪の花だけがそこにあった。
    彼の少年を、レースのショーツ越しに私の少女を押し当ててこすりつけると、彼の少年はまた青年としての彼に戻り、大きな力を帯びているのが分かった。

    彼が私のレースのショーツをずらし、横からするりと指を走らせる。
    摩擦のない素肌に彼は「おやっ?」という顔をしたかと思うと、それも一瞬ですぐさま私の上になり顔をうずめた。

    少女のような姿にしたのは本当は瑛太のためではなかったけれど、私の淫らな部分を浮き彫りにしたその花は 見られるほどに濃厚な蜜を垂らしていた。
    彼は躊躇なく花の蜜を口にした。もう私は 息を吹きかけられただけでも気が飛んでしまいそうだった。

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    正直、私はライスとの事を後悔していた。
    「出来心」そう言ってしまえば簡単だけれど、そうではなかった。私は彼を瑛太の代用品として求めていたのかもしれない。

    本当に欲しいのは「瑛太」だった事を確かめるための儀式だったのかもしれない。

    瑛太に、私はどんな風に映ったんだろうか?
    「私、私の事、瑛太・・・?」
    言葉にならなかった。
    言葉にしようとしても、彼に何といえばよいのか、稚拙な言葉しか口に出ない私自身がもどかしかった。

    「楓・・・。今は何も言わないで。 美しいよ。 もっと君のさえずりを聞かせて。」
    「瑛太、 私・・・綺麗?」
    なんでそんな言葉が出たのか、自分でも不思議だったけれど、何でも良いから彼の声を聴きたかったのかもしれない。
    「素敵だよ。綺麗で 僕のココも・・・」

    彼は はちきれんばかりになった彼自身を私のめしべに押し当てる。
    蜜の溢れた花に 彼のたくましいものが当たった。
    大きく、熱くて、硬いのがわかる。
    体感的に大きすぎるように感じた。きっと彼も悦んでくれているのだ。
    「入らない?」なんて思ったこと一度もなかったけれど、今日の彼は今までで一番・・・。
    今日、私は 3度目のバージンを彼に捧げる。
    一度目は、初めての体験。好きか好きでないかもわからなかった相手。最初の夫。
    二度目は、同窓会の後で彼に惹かれてしまった時。

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    今日は、彼の本当の姿に、私自身が解き放たれたとき。

    彼の大きな逞しいそれは、自分でも驚くほどにあっさりと、するりと奥まで導き入れられた。
    子宮の奥をつくような圧迫感。
    あ、瑛太の形。愛しい圧迫感。瑛太はすぐには動かなかった。
    彼もまた、私の感覚を味わっているのがわかる。
    それを私が 時間をかけて 彼を包み込むように締め付ける。

    彼のささやきに、彼の息遣いに、私は何度も気を遠くした。
    言葉だけで こんな風になるなんて初めての体験だった。

    瑛太は、優しかった。私の反応を見ながら 体を波打たせていた。
    きっと、いつもそうしてくれていたのだろうけれど私は全くそれに気づかず ただ快楽だけを貪っていた。

    私は彼の手を握りしめていた。

    「私の事、抱きしめて! 壊れるくらい 強く抱きしめてほしいの」
    「壊してあげるよ。僕も君と一緒だ。」
    「愛しているの! ずっと、あなたの事が好きなの!」
    答えなんかいらなかった。私の中では答えが出ている。それが全てだった。

    彼は私の目を見てキスをした。
    とろけて思考が麻痺していった。
    「帰っておいで。楓。君の家に」

    その言葉が、不思議とすんなり心に染みた。
    うん。そうだね。帰りたい。

    小麦とのこと。ライスのこと。
    私の中で、まだ整理がついていない感情たちがどよめき立ったが、私は躊躇なく頷いた。私の頬を一筋の涙が落ちていった。

    瑛太の言葉に――ほんの少し、未来の光が差した気がした。

    不思議なことに、その唇の柔らかさは、ライスのものとよく似ていた。
    「ばいばい、ライス君。ありがとう」
    心の中でそうつぶやいた私は、彼との一夜だけの関係を心の小箱にそっとしまい込んだ。

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    「私は、幸せだ」
    そう思えた夜が、明けた。

    カーテン越しに差し込む朝の光が、私たちの白い肌をやさしく照らしていた。
    気がつけば、私たちはシーツ一枚をまとって、裸のままベッドで眠っていた。

    結婚したばかりの頃でさえ、こんなふうに肌を重ねたまま朝を迎えることはなかった。

    まるで、これまでの時間の溝を埋めるように――私たちは互いを求め合った。
    彼の手は、驚くほど優しくて、愛おしくて。
    私は幸福感に包まれながら、何度も涙を流した。
    その涙は、苦しみではなく、確かな喜びの証だった。
    あのときの私は、言葉では言い表せないほど幸せだった。

    隣では、瑛太が私の左側を向いて眠っている。
    私は、彼の背中にそっと指を走らせて「すき」となぞった。
    くすぐったそうに「うーん」と寝返りを打った彼が、眠たげな目を開き、私の額にそっとキスを落とす。

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    「かえでがいるって しあわせだー」
    寝起きの声でそう言った彼に、私は微笑んだ。

    「私も大好きだよ、瑛太」

    私はシーツの中で彼の手を探し、そっと握った。
    心地よい手の大きさ、なじみのある感触――間違いなく、瑛太の手だった。
    そのぬくもりが、胸に染み渡る。

    「この手、離さないでね」
    「ずっと、手をつないでいよう」

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    瑛太は、私のまぶたに、それから頬、最後に唇にキスをした。


    「ええ、すみません。今日はちょっと体調が悪くて……」
    私は会社に電話をかけて休みの連絡を入れた。
    すると、電話口の同僚が明るい声で
    「お大事に」
    と言うのが聞こえたところで終話ボタンを押した。

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    体調なんて、本当はまったく悪くなかった。
    ただ、今日は一日中、瑛太と一緒にいたかった。

    「ズル休みしちゃった」
    瑛太の顔が近づく。
    キスをする。
    今朝から、何度キスを交わしただろう。
    「ねぇ、もっかい・・・しよっ」

    小麦が見ていたかもしれない。
    ライスも、その目を通して私たちを見ていたのかもしれない。
    でも――もう、かまわなかった。

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    「楓、今日、君のご両親にお詫びに行こうと思うんだ」
    「そうね。私からも、今回のことで心配をかけたし。一度しっかりと報告しておこうと思う。」

    近所で評判の良いケーキ屋さんでお菓子を買い、私たちは実家へと向かった。

    私は、昨日と同じワンピースを着ていた。本当は着替えも持っていたけれど、瑛太が「君のすべてを僕が上書きしたい」と言ったのだ。
    そう、ライスのためではなく 彼のために着るワンピース。

    鏡越しに彼は「綺麗だよ」と言ってくれた。

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    心が躍る。こんなに嬉しくて舞い上がるような気持ちは久々だった。

    まるで、朝帰りのカップルみたいな気分だった。
    そして――私たちは再婚を報告しに行った時と同じように、手をつないで実家のインターホンを押した。



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    チャイムの音が鳴ったあと、少し間をおいて玄関のドアが開いた。
    母が顔を出す。私たちの姿を見た瞬間、一瞬だけ驚いたように目を見開き、それからふっと表情を和らげた。
    「……あら。楓。それに瑛太くんも」

    「今回のことで・・・」
    瑛太が静かに頭を下げると、母は笑って「まあまあ、上がってちょうだい」と玄関を開けてくれた。

    リビングに通され、テーブルの上にケーキの箱を置く。
    「近くで評判のお店なんです。よかったら皆さんで」
    彼がそう言うと、母は「あー、あそこのケーキね!ここ美味しいのよね!」と喜んでくれた。

    やがて、父も顔を出した。リビングの空気が少しだけ固くなる。

    「今回のことで、ご心配おかけして申し訳ありませんでした」
    彼が頭を下げると、私もすかさずそれに倣った。

    「・・・そうだな」
    父は一言だけそう言って、黙って私たちの顔を順に見た。
    その視線の中には、怒りや責めではない、何かを確かめるような静かな色があった。

    「二人で決めたことなんだろう?」
    「はい」
    「それなら、あとはちゃんと責任を持って――幸せになることだな」

    言葉の一つひとつが、胸に染みた。
    私は目を潤ませながら、思わず瑛太の手を握った。


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    その瞬間、小麦のことが一瞬、脳裏に過った。
    けれど、私はもう振り返らないと決めた。
    ライスは、私のために存在していた優しさの仮象だった。
    でも今、私の隣にいるのは現実の瑛太だ。
    彼の手は、確かにあたたかい。

    私の胸の中で、やさしい声が囁いた気がした。
    ――ライスくん、ありがとう。
    心の中でもう一度だけ、私はそうつぶやいた。

    ~ 第二章 完 ~


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