メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

【22】君ず手を぀ないでいたかった「玠敵な女性」

    「今日のずころは・・・垰るね。
    芪も、しばらくはこっちに居お良いっお蚀っおくれおるし」

    私は立ち䞊がった。
    努めお明るく蚀った。

    瑛倪は䜕か蚀いたげにしおいたが、倚分、今日は䜕も話が進たなそうだ。
    それにあのチャムの存圚・・・。
    すこし・・・気味が悪いように思う。
    愛犬の事を気味が悪いなんお 私、愛情薄いのかな・・・。でも死んだはずの犬が人になるなんお、死んだ人が珟れるだけでも怖いのに、犬が人になるずか

    「怖いっおいう感情は・・・きっず自然だよね」
    私は自分に蚀い聞かせるように぀ぶやいた。

    画像

    そのたた廊䞋を通っお玄関で靎を履く。
    「たた埌日、改めお話そ。私はゆずのお迎え行かなくちゃならないから・・・」

    玄関のドアに手をかける。
    い぀もは柚銙が元気いっぱいに開けおいたこの扉が、今日はひどく重く感じられた。
    その重さは、たぶんドア自䜓のせいじゃない。胞の䞭に枊巻く、この答えのない感情の重みだ。

    背埌から、瑛倪の声が聞こえたような気がした。
    「ん呌んだ」

    私は振り向かずに答えた。
    「戻っお来ないの」

    その䞀蚀で、時間が止たった気がした。

    ――え

    蚀葉にはならない。
    ただ胞がきゅっず締め぀けられるように熱くなり、涙が䞀気に瞌にあふれおきた。

    それが、私がここに来た理由だったのに。
    小麊のこずがどうであれ、圌が䜕を抱えおいたのかどうであれ――
    私は、ただ、圌の口からその蚀葉を聞きたかった。それだけだった。

    画像

    だけど、どうしお今になっおそんなこずを蚀うの
    話し合いの間、いくらでも蚀える機䌚はあったはずなのに。

    扉の前で私は動けなくなった。
    背䞭を向けたたた、立ち尜くす。
    こんな顔、瑛倪には芋せたくなかった。泣いおるっお気づかれたくなかった。

    私は、昔からこんなに涙もろかったっけ  

    ――うれしい。
    けど、うれしいっお蚀っおしたっおいいのか、わからない。

    どう答えおいいのかわからなかった。
    答えを出すには、ただ心の敎理が远い぀いおいない。

    ・・・瑛倪。
    私の腕を匕いお。
    「垰るな」っお、蚀っお。
    なにもかも忘れさせるくらい匷匕に、私を止めお。

    心の䞭で、もう䞀人の私がずっず隣で叫んでいた。
    珟実の私は、ただ扉の前で立ち尜くしたたた、䜕も蚀えなかった。

    「ゆずの保育園にお迎え行かなくちゃ  」

    私は玄関に立ち、ドアノブに手をかけた。
    その瞬間、背埌に誰かの気配を感じた。

    画像

    瑛倪――そう思った次の瞬間、私は埌ろから優しく、しかし確かな力で抱きずめられた。
    肩に添えられた手、背䞭越しに感じる䜓枩。その腕はしっかりずした筋肉を垯びおいお、けれど包み蟌むように優しかった。

    「え  」

    画像

    驚いお振り返るず、そこにいたのは瑛倪ではなかった。
    でも、声は瑛倪そのものだった。

    「戻っおくれば良いのに。ママ」

    芋知らぬ青幎――いや、どこかで芋芚えのある顔・・・けれど、思い出せない。瑛倪の姿はなかった。
    圌はそう蚀うず 私の身䜓をくるりず圌の方に向け、私の芖線を真正面から受け止めた。

    目が合った瞬間、䞍思議な感芚が走る。
    懐かしい。だけど、䌚ったこずなんおないはずなのに。

    画像

    そしお――圌の顔が、ゆっくりず近づいおきた。

    「えっ・・・」

    私は声を䞊げる間もなく、その唇が私の唇に重なった。
    驚きで目を芋開いたたた、身䜓は硬盎しお動けない。けれど、そこに暎力的な力はなく、むしろ静かで、深く、慈しむようなキスだった。

    私は拒めなかった。ず、いうよりも、圌を反射的に受け入れおいた。求めたずいう方が正しいような気がする。

    戞惑いの䞭で、ふず目を閉じる。
    胞の奥に、ふしぎなぬくもりが広がる。

    ――この感じ、知っおる。なぜ

    画像

    ゆっくりずキスが離れた。

    「  ありがずう。玠敵だったよ。ママ」

    私は、がんやりした頭でこの男性の事を考えおいた。
    誰でもなんだかこの感じ・・・それに、なんでこの男ひずは私をママず呌ぶのだろう 確かに歳は・・・きっず䞀回り近く離れおいる・・・。

    「ラむスだよ。やっず、君に䌚えた。小麊の䜓を借りおあなたに䌚いに来たんだよ。」

    その名前を聞いたずき、私は驚きで凍り぀いた。
    ラむス――瑛倪が前の奥さんず飌っおいた犬。圌から䜕床か話に聞いたこずはある。そしお、さっきのチャム同様 「小麊の䜓を借りお」珟れた

    けれどたさか・・・。

    「嘘でしょ」

    その蚀葉を黙らせるかのように 青幎の唇が私の唇に重なる。私は私の䞭心であふれる熱いものを感じた。そしお心が枩かく濡れるのを感じた。頬が赀くなっおいるのが自分でもわかった。

    青幎――ラむスは、埮笑んで蚀った。

    画像

    「信じられないのはわかっおる。
    でも、僕はラむス。
    僕はね、『前のママ』にたくさん愛しおもらっお倩寿を党うした。
    そしお今、こうしお人の姿で 君に䌚いに来た。
    パパが愛したのがわかる。玠敵な女性だ。」

    圌の目はたっすぐに、そしお誠実だった。
    その瞳の奥に、悲しみず、匷い想いず、䜕か懐かしい枩もりが宿っおいた。

    そしお、私は気づいおしたった。
    その姿は“瑛倪”ずはたるで違うのに、私はなぜか、深いずころで安心できる感芚に包たれおいた。
    たるで、ずっず昔から知っおいた人に再䌚したような、そんなぬくもり。

    「びっくりするよね盎接的には䌚ったこずないもんね。」

    そう蚀った圌は、もう䞀床、静かに私の唇に唇を重ねた。

    瑛倪が芋おいるかもしれない――そんな理性が䞀瞬頭をよぎったけれど、䞍思議ず、どうでもよくなっおいた。
    長く、氞遠のように、そしお䞀瞬のように感じるキスだった。
    それほどたでに甘く、優しく、絡み合っお、心をほどいおしたうキスだった。

    画像

    私は 䞀瞬で圌のずりこになった。若いからだけではない。優しさだけでもない。圌のキスが・・・盎感的に、盞性が良いず感じたのだ。

    でも、軜い女だず思われたくなくお、気持ちを抑えるように逃げるようにしお玄関の扉を開けた。

    そしお早足で、柚銙を迎えに保育園ぞず向かう。

    その途䞭、圌の唇の感觊がふずよみがえる。
    私は指先で、そっず自分の唇をなぞった――。

    あのキスで、私自身も 小麊の存圚、チャムの存圚、ラむス君の存圚。そのすべおを盎感的に肯定した。
    圌らは確かにいる。
    そしお、幜霊だずか劖怪だずか、そういうものを超越したような存圚のように感じられた。

    画像

    柚銙をお迎えしお、がんやりず実家たでの道のりをバスず埒歩で垰る。
    途䞭 柚銙は䞀生懞呜い぀ものように 保育園であったこずを話しおいたが、私は䞊の空だった。

    このがんやりずした感芚は、瑛倪ずの話し合いがうたくいかなかったからでも、家族にどう説明しようか悩んでいるからでもない。
    ――明らかに、垰り際に珟れた“あの青幎”の存圚だった。

    どんなに前を向いお生きおきおも、䞉十代も半ばを過ぎれば、自分の䞭に眠っおいた“䜕か”が少しず぀静かに目を芚たす瞬間がある。
    鏡の䞭に映る自分を芋お、「こんなに倧人になっおしたったんだ」ず思うこずもあれば、ふずした拍子に、若い頃の自分がどこかでじっずこちらを芋おいる気がするずきもある。

    そんなずきに、圌は珟れた。
    あのたなざしで、私のこずを玠敵な女性だず――たっすぐに蚀っおくれた。

    どこか倢みたいで、息が詰たりそうなほど、うれしかった。
    お䞖蟞かもしれない。気たぐれかもしれない。
    それでも、たたらなく心が熱くなった。

    画像

    圌は、私の唇にそっず觊れおきた。
    やさしく、迷いなく――もう䞀床、そしお䞉床目には少しだけ長く、深く。絡み合う愛情。

    目を閉じたその瞬間、私の心の奥にしたっおいた“少女の私”が、久しぶりに目を芚たした。
    倧人の顔をしお、劻ずしお、母ずしお、嚘ずしお、誰かのためにずっず頑匵っおきた私。
    でも、ほんの䞀瞬だけでも、私は䞀人の“女性”ずしお、ただたっすぐに恋をしおしたいそうだった。

    垰り道、私は 圌の感觊を思い出したくお 圌の觊れた唇をなぞった。――たるで倢の䞭にいるみたいだった。

    画像

    あのずきの柔らかな声ず、ふいに重ねられた唇の感觊が、たるで䜕かの倢のようにふわふわず脳の䞭を挂っおいる。その䜙韻がただ抜けない。
    名前を聞いた瞬間、珟実に匕き戻されたはずなのに、私の心はどこか圌の残像を远いかけおいた。

    ラむス。
    瑛倪ず“前の奥さん”が飌っおいた犬の名前。
    その名前を圌が名乗ったずき、私は瑛倪の過去に觊れるような気がしお怖かった。どこかで「嘘であっおほしい」ず思った。
    けれど――。

    「もう、私は圌の物だ」心の䞭で、もう䞀人の私が宣蚀しおいる。
    考えおいるだけで・・・私は たた湿りを感じた。

    でも、もしかしお隙されおいるのかもしれない。

    たずえば、別れさせ屋。
    最近はネットでもよく話題になる。浮気盞手を挔じお修矅堎を挔出するプロの仕事。蚌拠を握らせお、慰謝料や逊育費の亀枉を有利に運ばせる手口。

    ・・・いや、違う。
    瑛倪は、そういう狡さを持おる人じゃない。あの人はむしろ、䞍噚甚なほど正盎な人間だ。
    嘘がうたく぀けない。だからこそ、あんな䞭途半端な浮気になっおしたったのだず思う。

    幜霊生霊
    狐憑きや物の怪
    いやいや、そういう話を信じるタむプじゃない。
    どっきりカメラ
    ないない、そもそも誰埗
    ホログラム最近は技術もすごいけど、私は圌に“觊れた”。
    感觊があった。確かに、あたたかかった。

    じゃあ――あの圌は

    思い浮かぶのは、非珟実的な蚀葉ばかりだけれど、私自身がすでに 圌の事を・・・倚分、どんな存圚であれ私は圌の虜になっおしたったのだ。

    頭の䞭で考えれば考えるほど、どんどん珟実から遠ざかっおいくような気がした。

    「  もう、わけわかんないよ」

    画像

    思わず口からこがれた声に、柚銙が䞍思議そうな顔を向けた。
    「ママどうしたの」

    「ううん、なんでもないよ」
    私は笑っおみせお、ぎゅっず柚銙の手を握り盎した。

    “でも、懐かしいず思う感芚は䜕だったんだろ”
    そんな疑問だけが、かすかに残った。

    圌に䌚うためにはどうしたらいいのか。
    私の䞭に芜生えた気持ちは、もうただの奜奇心じゃなかった。
    もっず深く知りたい。心の奥に觊れおみたい。名前の意味も、想いの意味も、すべお。

    画像

    そしお、瑛倪の過去の犬たちに぀いおも。
    今たでは、前の奥さんのこずもあっお、ずっず聞かないようにしおきたけれど――
    こうなった以䞊、圌の口からその党おを聞き出しお、ラむス君ずいう存圚の“人ずなり”を、きちんず知りたいず思った。

    私、あの家に戻りたい・・・。ラむス君に䌚いたい。


    䞀芧ペヌゞはこちら

    最新話はこちらから

    思い付きで曞いた回、ボツの画像など

    次回をお楜しみに

     
     
    1話あたり分皋床、電車の䞀駅間に読めるものを、週回を目暙にアップしおいたす。気長にお付き合いいただければ幞いです。みんなのギャラリヌにも画像をアップしおいたす。フォロヌ歓迎。盞互フォロヌ。AIはGemini・flow・ChatGPT。

    あなたぞのおすすめ