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『最埌の倜に、思い出せなかった。』の、その先を曞きたした。


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    あらすじ

    父が亡くなったず、垂圹所から連絡が来た。

    けれど。

    私は、すぐに垰れなかった。

    仕事垰りの車の䞭。
    知らない番号からの着信。

    二床目の電話で出るず、
    それは垂圹所からだった。

    離婚しおから疎遠になっおいた父。

    最埌に䌚ったのが、
    い぀だったのかも曖昧だった。

    垰れない距離ではない。

    それなのに、
    なぜか垰れなかった。

    父の死を知らされた倜。

    私は、
    忘れおいたはずの蚘憶を思い出しおいく。

    出なかった電話。

    蚀えなかった蚀葉。

    先送りにしたたた終わっおしたった
    「そのうち」。

    そしお、
    父の郚屋で芋぀けたものが、
    止たっおいた時間を動かし始める。

    これは、

    先立぀者の埌悔ではなく、

    残された者の埌悔の物語。

    『最埌の倜に、思い出せなかった。』

    その続きを描いた、
    7章構成の長線物語です。

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    平日の倕方だった。
    特別な日ではなかった。
    雚は降っおいない。

    けれど空は重く、倜になる準備を少しず぀始めおいた。
    仕事を終えた青幎は、コンビニの駐車堎に車を停めた。

    疲れおいた。
    身䜓ずいうより、頭の奥が重かった。
    䞀日䞭、人ず話し、気を遣い、倱敗しないように考え続ける。

    倧人になっおからの疲れ方は、昔思っおいたものず少し違った。
    眠れば回埩する疲れではない。

    ただ、積もる。
    静かに。
    気づかないうちに。

    車の゚ンゞンを切る。
    急に静かになった車内で、青幎はしばらく動かなかった。

    垰れば、䞀人。
    掗濯物が少し溜たっおいた。
    冷蔵庫には、卵ずビヌルしかない。
    倕飯をどうするかも考えおいなかった。

    スマホを芋る。
    仕事の通知。
    既読を぀けおいないメッセヌゞ。
    どうでもいいニュヌス。
    い぀もの画面だった。

    その時、着信が鳎った。
    知らない番号。

    青幎は眉を寄せた。
    営業かず思った。
    最近、倚い。
    保険。
    投資。
    電力切り替え。
    出る理由はない。

    そのたた芋おいた。
    垂倖局番が目に入った。
    少しだけ、指が止たる。
    芋芚えがある番号だった。
    実家のある地域。

    でも、思い出せない。
    誰だったか。
    䞀床目の着信は、そのたた切れた。

    ほっずした。

    その感芚に、自分で少し驚いた。
    なぜ、ほっずしたのだろう。

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    考える前に、たた鳎った。
    同じ番号。
    二床目。
    青幎は、短く息を吐いた。

    出なければいけない気がした。

    「  はい」
    自分の声が、思っおいたより䜎かった。
    電話の向こうで、女性の声がした。

    「突然のお電話、倱瀌いたしたす。○○垂圹所、犏祉課の者です」

    垂圹所。
    その蚀葉だけで、車内の空気が少し倉わった。

    「□□様のお電話でお間違いないでしょうか」
    「はい」
    「お父様の、□□△△様に぀いおご連絡しおおりたす」

    父の名前だった。
    しばらく、自分から口にしおいなかった名前。

    でも、聞けばすぐ分かる。
    忘れおいたわけではなかった。
    ただ。
    少し遠ざけおいただけだった。

    女性の声は䞁寧だった。
    蚀葉を遞びながら、
    間違えないように話しおいるのが分かった。

    「本日、お父様が入院先の病院でお亡くなりになりたした」

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    青幎は、䞀床瞬きをした。
    意味が、すぐに入っおこなかった。

    入院先。
    病院。
    亡くなった。
    順番がおかしい気がした。
    父が入院
    そんな話は聞いおいない。

    「  入院」
    思わず聞き返した。
    「先月、通勀途䞭に倒れられたしお、救急搬送されおおりたす」

    通勀途䞭。
    倒れた。
    救急搬送。
    父の姿が浮かばなかった。
    いや。
    浮かんだのは、昔の父だった。

    朝。
    スヌツ。
    少しだけ曲がったネクタむ。
    安い猶コヌヒヌ。
    新聞。
    い぀もの玄関。

    「行っおくる」
    そう蚀っお出おいく埌ろ姿。

    父は、倒れる人ではなかった。
    疲れおいおも働く人だった。
    熱があっおも䌚瀟ぞ行く人だった。
    健康蚺断で䜕か蚀われおも、

    「そのうち病院行く」
    で終わる人だった。
    昔、母が蚀っおいた。

    「たた芁怜査だっお」

    父はテレビを芋たたた、
    「忙しいからな」
    ず蚀った。
    母は呆れお、

    「本圓に倒れるよ」

    ず蚀った。
    父は笑った。
    少しだけ。

    「倒れたら䌑めるな」

    冗談みたいに蚀っおいた。
    あの時、
    誰も本圓に倒れるずは思っおいなかった。

    「意識が戻る時もあったようですが  」

    女性の声が続く。
    青幎は䜕も蚀えなかった。
    意識が戻った。
    ぀たり、
    時間があった。

    先月から。
    ひず月近く。
    なのに、自分は䜕も知らなかった。

    いや。
    知ろうずしなかった。
    父ずは、しばらく連絡を取っおいなかった。

    垰っおいない。
    電話もしおいない。

    最埌に䌚ったのがい぀だったか、
    すぐには思い出せないくらいだった。

    母ず父が離婚しおから、さらに距離は空いた。
    垰れば父がいる。
    それが、少し苊しかった。

    䜕を話せばいいのか分からなかった。
    だから垰らなかった。
    垰れない距離ではなかった。
    車なら二時間少し。
    䌑みだっおあった。

    でも。
    垰らなかった。
    その“でも”の理由を、
    青幎はうたく説明できない。

    嫌いだったわけではない。
    憎んでいたわけでもない。
    ただ、
    少し苊しかった。
    父の前にいる自分が。

    そしお気づけば、
    䜕幎も経っおいた。

    「以前の健康蚺断でも、再怜査の指瀺が出おいたず病院から䌺っおいたす」

    芁怜査。
    その蚀葉が、劙に胞に残った。
    父らしいず思った。
    我慢しお。
    働いお。
    誰にも蚀わず。
    無理をしお。
    それでも䌚瀟ぞ行っお。
    そしお、
    通勀途䞭で倒れた。

    父らしい。
    そう思っおしたった自分が、少し嫌だった。
    電話の向こうで、女性が続けた。

    「今埌のお手続きに぀いお、ご説明を  」

    青幎は、
    コンビニの窓ガラスをがんやり芋おいた。
    䞭では、孊生が笑っおいる。
    レゞの店員が袋を枡しおいる。
    トラック運転手が猶コヌヒヌを買っお出おくる。

    䞖界は、少しも止たらない。
    父が死んでも。
    自分の父が死んでも。
    倕方は普通に続いおいた。

    それが、
    少しだけ怖かった。


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    電話は、ただ続いおいた。
    病院名。
    手続き。
    必芁曞類。
    遺䜓の匕き取り。
    明日以降のこず。

    女性の声は䞁寧だった。
    䞁寧すぎるくらいだった。
    たぶん、こういう電話を䜕床もしおきた人なのだろう。

    驚く人。
    泣く人。
    怒る人。
    蚀葉を倱う人。
    いろんな人を盞手にしおきたのだず思う。
    青幎は、そのどれでもなかった。

    ただ、
    少し遅れおいる感じがした。
    頭だけが、電話に぀いおいけおいない。

    「お父様の緊急連絡先ずしお、□□様のお名前が登録されおおりたしたので  」

    その蚀葉に、少しだけ指が止たった。
    緊急連絡先。
    父のスマホの䞭。
    そこに、自分の名前が残っおいた。
    倉えおいなかったのか。
    いや。
    倉えるほど人がいなかったのか。
    そのどちらなのかは、分からない。

    ただ、
    少しだけ胞の奥が重くなった。
    父ずは、ずっず話しおいなかった。
    䌚っおもいなかった。

    なのに、
    䜕かあった時に呌ばれるのは自分だった。

    父の䞭では、
    自分はただ家族だったのだろうか。

    「職堎の方のお話では、最近かなりお疲れの様子だったようです」

    疲れおいた。
    それは想像できた。
    離婚しおからの父を、青幎は少しだけ知っおいる。
    知っおいた、ずいうほどではない。
    たたに母から聞くだけだった。

     「最近、お父さん元気ないみたい」
     「ご飯、ちゃんず食べおるのかな」
     「電話しおみたら」

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    母はもう父の家にいないのに、時々そんなこずを蚀った。
    青幎は、そのたびに曖昧に返事をした。

     「うん」
    ずか。
     「そのうち」
    ずか。
    父に䌌おきたな、ず今になっお思う。

    “そのうち”。

    䟿利な蚀葉だった。
    今じゃなくおいい。
    少し先でいい。
    気持ちの準備ができたら。
    仕事が萜ち着いたら。
    次の䌑みで。
    そのうち。

    でも、
    そのうちは、
    終わるこずがある。


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    「□□様、倧䞈倫でしょうか」

    電話の向こうで、女性が少し声をやわらげた。
    青幎は、小さく息を吐いた。

    「  はい」

    そう答えた。
    倧䞈倫ではなかった。
    でも、
    䜕が倧䞈倫じゃないのか、ただ分からなかった。

    悲しいのか。
    苊しいのか。
    埌悔なのか。
    ただ名前が぀かなかった。

    電話を切ったあず、
    車内が急に静かになった。
    スマホの画面が暗くなる。
    そこに、自分の顔ががんやり映った。

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    父が死んだ人の顔。
    なのに、䜕も倉わっおいなかった。
    そのこずが、少し怖かった。

    コンビニの窓越しに、誰かがコヌヒヌを持っお歩いおいる。
    仕事垰りなのだろう。
    疲れた顔。
    でも、
    その人にも家がある。
    垰る堎所がある。

    青幎は急に、自分の垰る堎所が分からなくなった。
    実家は、もう垰る堎所ではない。
    でも、
    完党に他人の堎所でもなかった。

    スマホをもう䞀床開く。
    着信履歎。
    䞀番䞊は、垂圹所。
    仕事関係の通知。
    取匕先。
    䞊叞。
    スクロヌル。
    指が止たった。

    父。
    䞉日前。
    午埌九時十二分。
    䞍圚着信。
    䞀件だけ。


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    青幎は、しばらく画面を芋た。
    思い出した。
    その日。
    疲れおいた。
    颚呂にも入らず、ベッドに倒れ蟌んでいた。
    着信に気づいた。
    父の名前。
    少し迷った。
    でも、
    出なかった。

    理由はない。
    いや。
    理由はあった。
    話すこずがなかった。
    父ず二人きりで話す空気が苊しかった。
    たた、

     「ちゃんずしおるか」
    ずか。
     「仕事はどうだ」
    ずか。
    䜕気ないこずを聞かれる気がした。

    責められるわけではない。
    でも、
    うたく息ができなくなる。
    だから、
    あずでかけ盎そうず思った。
    明日でもいいず思った。
    そのうちでいいず思った。
    そしお忘れた。

    青幎は、スマホを閉じた。
    もう䞀床開いた。
    父の着信。
    䞉日前。
    それはもう、

    䞀生折り返せない番号になっおいた。

    父は、その時、
    病院のベッドにいたのだろうか。
    匱っおいたのだろうか。
    䜕を蚀おうずしたのだろう。
    䜓調のこずか。
    退院の話か。
    ただ声が聞きたかっただけか。

    分からない。
    もう、
    誰にも分からない。

    青幎は車を降りた。
    䜕か買わなければいけない気がした。
    でも、
    䜕を食べたいのか分からない。

    コンビニの䞭を、しばらく歩いた。
    匁圓。
    パン。
    カップ麺。
    䜕も入っおこない。
    飲み物の棚の前で、足が止たった。

    猶コヌヒヌ。
    父が奜きだった銘柄。
    昔から倉わらない。
    安いや぀。
    少し甘くお、
    少しだけ苊い。

    朝、
    ネクタむを締めながら飲んでいた。
    䌑日、
    テレビを芋ながら飲んでいた。
    離婚しおからも、
    たぶん飲んでいたのだろう。

    青幎は䞀本取った。
    理由は分からなかった。
    ただ、
    手が䌞びおいた。

    レゞを枈たせ、
    車に戻る。
    猶コヌヒヌを助手垭に眮く。
    開けなかった。
    ただ、開けられなかった。

    ゚ンゞンをかける。
    窓の倖は、もう暗くなっおいた。

    父が死んだ。

    なのに、
    自分の䞭では、
    ただ䜕かが始たっおいなかった。
    信号埅ちで、ふず思う。
    静かな声だった。
    誰にも聞こえないくらい小さな声。


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    この物語を曞いおいお。

    クラむマックスに近づくに぀れお、
    䜕床か手が止たりたした。

    自分で曞いおいお、
    思わず泣いおしたった堎面もありたす。

    それは、
    特別な出来事ではなく。

    「蚀えなかったこず」や、
    「垰れなかった理由」のような。

    誰の䞭にも、
    少しだけ残っおいる感情だった気がしたす。

    noteでは曞ききれなかった、
    å…š7章の物語がありたす。

    もし、
    この続きが気になった方がいたら。

    静かな倜の続きを、
    芗いおいただけるず嬉しいです。

    â–Œ Kindleはこちら
    https://www.amazon.co.jp/dp/B0H32NZS8L

    もし読んでいただけたら、
    レビュヌや感想も、ずおも励みになりたす。





     
     
    愛知県圚䜏。 長距離トラックドラむバヌずしお働く傍ら、物語を曞いおいたす。 倜の高速道路、䌑憩所、゚ンゞン音の䞭で ふず浮かんだ感情を、物語にしおいたす。 読み終えたあず、少し心に残る䜜品を届けたい。 Kindleにお小説を出版䞭。 よろしければ、ゆっくり読んでいっおください。

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