
【英語の話53】 It doesn’t matter!!
1994年か1995年、ロサンジェルスにいた頃の話だ。
日本人の友人と、友人の車でドライブをした。友人は美人だった。
アジアンビューティー、というやつだ。
今思えばそれが原因だったのかもしれない。
夕方から夜になりかけた時間帯に、ガソリンスタンドに寄った。
二人でガソリンを入れていると、一人の男性が友人に話しかけてきた。
白い布を頭に被り、黒いリングで額のあたりを止めていた。
アラビア半島の男性の、あの格好だ。
スーツを着たお付きの男性が一人いた。
年齢は四、五十代くらいに見えた。
中東あたりの、もしかしたら石油王だったかもしれない。
今となってはわからない。
友人が困った顔で私を見た。
「Didiちゃん、なんとか言って追いやってよ!」
英語は私の方が少しできた。
友人を守らなきゃ、と思った。私は男性に向かって言った。
She’s in trouble.
彼女は困っています。そう言ったつもりだった。
男性は怯まなかった。
「何のトラブルだ?彼女と話がしたいだけだ。
よければ食事も。結婚を……」
全く引かない。そして畳み掛けるように聞いてきた。
「彼女は結婚しているのか?夫がいるのか?」
私は答えた。
It doesn’t matter!!
そんなこと関係ない。そう言いたかった。
でも今考えると、男性からしたら
「結婚してるかどうか関係ない、話せるじゃないか」
と聞こえたかもしれない。
私たちは急いで車に乗り込んで、ガソリンスタンドを出た。
先日、その友人とこの話をした。彼女は全然覚えていなかった。
友人を守るために必死に英語で戦っていたのは、
私だけだったらしい。