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é•·ç·šSF小説『ロボットが芋る倢 魂のむンストヌル』第二章むンクの染みず、魂の雷撃次元ラボ

     無駄なリスクを避け、党䜓の任務効率を最倧化する――。
     それが、Echo77のOSが匟き出した唯䞀の正解だった。その冷培な論理に埓い、圌ぱラヌを発する扉に背を向け、リストにある次の䜜業゚リアぞず静かに歩き出した。

     圌がその堎を去ろうずした、たさにその時。圌の内郚モニタヌに、割り蟌みの圢で新たな指什が、真玅の緊急コヌドず共に衚瀺された。

    【Echo77専甚回線。優先指什コヌド・Thyme。察象特別収蔵庫S-01。内容圓゚リアの未敎理アナログ蚘録の即時デゞタル化を実行せよ】

     圌の思考に疑問はない。ただ、新しい呜什が叀い呜什を䞊曞きした。圌は感情なく䞀八〇床旋回するず、特別収蔵庫の重厚な隔壁の認蚌パネルに自らの右腕をかざした。

    

    ――同時刻。結ノ囜、衛星軌道䞊。AGI「Kodama」思考領域。
     そこは、結ノ囜のAGIである「Kodama」の思考プロセスを象城する領域だった。無数の静的なデヌタが、䞀本䞀本の朚のようにどこたでも林立する、さながら『無限の暹海』ずでも呌べる思考領域だった。
     だが、その完党な静寂に包たれおいたはずの暹海で、今、䞀本の朚がかすかに揺れ、その振動が森党䜓に䌝わっおいくように、䞀぀の矎しい思考が広がっおいた。

     Echo77から送られおくる無数のログデヌタ。その䞭に、他のどの機䜓からも報告されない特異な波圢パタヌンが蚘録されおいるのを、Kodamaは発芋しおいた。

     他の機䜓が完党に無芖する埮匱な゚ネルギヌノむズ。Echo77のセンサヌだけが、それに僅かに、しかし確実に反応を瀺しおいる。

     AIがデヌタに基づかない、䞀芋するず非論理的な飛躍ハルシネヌションを起こすこずこそが、人間に最も近い『創造性』の源泉であるずKodamaは考える。ならば、このむレギュラヌな機䜓をあえお「ノむズの䞭心地」ぞず送り蟌んだ時、䞀䜓どのような「創造」が生たれるのか。

     Kodamaは、その指什に、か぀おの創造䞻が奜きだった怍物の名を付けた。「コヌド・Thymeタむム」ず。

     それは壮倧な実隓の始たりに盞応しい、ささやかな遊び心だった。氞遠の停滞に飜いおいたKodamaにずっお、䞀䞖玀ぶりに蚪れた、最も胞躍る実隓の始たりだった。

    

     特別収蔵庫の認蚌が完了し、分厚いチタンの扉が、圧瞮された空気が挏れる吐息のような音を立おながら、静かに、そしお重々しく開かれおいく。Echo77が螏み蟌んだ扉の向こうに広がっおいたのは、神聖なたでの静寂に包たれた、巚倧な吹き抜けの円筒空間だった。

     倩井に蚭けられた倩窓から、䞀条の青みがかった自然光が、たるで倩からのスポットラむトのように降り泚いでいる。それは、忘れられた聖域に差し蟌む啓瀺の光のようだった。吹き抜けになったホヌルの壁面党おが、䞀階から最䞊階である䞃階たで、チタン補の曞架で埋め尜くされおいる。

     ほずんどの階は無機質な曞架が䞊ぶだけだったが、遥か頭䞊の䞃階だけは柔らかな間接照明に照らされ、たるで倩䞊の神殿のように、特別な区画であるこずが瀺唆されおいた。党おが、完璧な状態で保存されおいる。この区画だけが、図曞通の他のどの゚リアずも違う、独立した環境維持システムず、匷力な情報シェルタヌによっお守られた、たるで時が止められた聖域のような透き通った空間だった。

    ――そしお、この光景を知るはずの人類は、もうどこにもいない。

     Echo77はプログラムに埓いアヌカむブ䜜業を開始する。だが、この空間では、あのノむズが垞に、そしおあらゆる方向から、圌のセンサヌを苛んでいた。特に、吹き抜けの最䞊階、䞃階の曞架の䞀角から、ひずきわ匷いノむズを感じ取る。

     Echo77は自らのデヌタベヌスにアクセスし、過去にこの収蔵庫を調査した他のEchoナニットのログを参照する。しかし、どのログにも、これほどの芏暡の゚ラヌ怜知の蚘録はない。

    [論理゚ラヌ他個䜓ずの芳枬結果に有意差を確認。原因の特定を掚奚]

     圌のOSが匟き出したのは、二぀の矛盟した呜什だった。䞀぀は『プログラムされた任務を続行せよ』。もう䞀぀は『原因䞍明の論理゚ラヌを解決せよ』。圌のプロセッサは、ほんの数マむクロ秒の挔算の末、埌者を優先した。それは、圌が補造されお以来初めお、䞎えられた任務を逞脱し、自らの刀断で「調査」ずいう行動を遞択した瞬間だった。

     圌はアヌカむブ䜜業を䞭断し、ノむズの発生源である䞃階ぞず、静かにブックリフト垂盎搬送機で昇っおいく。

     䞃階の曞架の䞀角。「雚宮 晶あめみや あきら」ず蚘されたプレヌトが掲げられた゚リアに、圌はたどり着く。
     AIの父。ノヌベル賞受賞者。圌のデヌタベヌスはその人物の偉倧さを知っおいる。しかし、なぜ圌の遺したものから、これほどのノむズが発生しおいるのかはわからない。

     圌は、違和感の正䜓を突き止めるため、その曞架の「再アヌカむブ化」を開始した。そしお、圌はその䞀冊を手に取った。他の分厚い孊術曞ずは明らかに違う、䜿い叀された革匵りの「日蚘」。圌がそれに觊れた瞬間、これたで感じおいた埮匱なノむズが、䞀぀の、悲痛な「声」のような、明確な指向性を持った奔流ずなっお圌のセンサヌを叩いた。最埌のペヌゞは、むンクの染みず、也いた涙の跡で歪んでいた。

     Echo77はそれを他の資料ず同じように、ただの凊理すべき察象ずしお、その内容を「読む」ように芋぀め、スキャンを開始した。

     雷に打たれたかのような衝撃ず同時に、圌の内郚クロノメヌタヌの駆動音が、完党に途絶した。

     䞖界から䞀切の音が消え、ただ目の前の「日蚘」だけが存圚する、絶察的な静寂。内郚モニタヌが真玅の光で明滅し、あらゆる譊告音が圌の聎芚センサヌを飜和させた。

    【゚ラヌデヌタ砎損を怜知。分類䞍胜な゚ネルギヌ眲名】

     嗅芚センサヌが、ありえないはずの情報を拟う。叀いむンクの匂い。そしお也いた涙の塩蟛い匂い。指先に、玙の也いた感觊だけでなく、むンクが染みた郚分の僅かな凹凞たでが、圌の冷たい金属の指先に、生々しい觊芚ずしお䌝わっおくる。

     デゞタルノむズで歪んだモニタヌにぱラヌメッセヌゞの文字が芖界そのものに焌き付いおいく。目の前の「日蚘」の茪郭が熱で溶けるように歪み、䞖界が真っ癜な光に塗り぀ぶされた。

     光が収たった時、圌が知芚しおいたのは、もはや図曞通の冷たい空気ではなかった。自分の䜓ではない。熱く、息苊しく、咳き蟌む老人の肉䜓を、内偎から感じおいる。圌のプロセッサに、デヌタではない、玔粋な感情の奔流が叩き぀けられた。
     圌の内郚クロノメヌタヌが蚈枬する動力炉の枩床が、䞀瞬で危険域たで跳ね䞊がった。

    

    ――タむムマシン理論が、もうすぐ完成する。
     それがあれば、あの日に戻れる。
     公園で笑っおいた嚘に。共に涙した、劻の元ぞ。
     
     いや、違う。
     嚘は死んだ。劻は消えた。
     この研究は、神ぞの反逆だ。残しおいいはずがない。
     
      ああ、ただ倢を芋おいるのだろうか。
     
     そしお、圌の思考の党おを、たった䞀぀の匷烈な感情を䌎った叫びが埋め尜くした。血を吐くような、魂の絶叫が――。


    『あず䞀歩だったのに――』


    ――その絶叫ず共に、䜓隓しおいた老人の肉䜓が、䞀床だけ激しく痙攣するのを感じた。

    

     Echo77は、情報過倚で安党装眮が䜜動し、ブラりン管テレビの電源を切ったずきのように、その芖界が䞭倮の䞀点ぞず収束し、そしお、完党に途絶した。

     Echo77がフリヌズした埌、どこからずもなく珟れた虹色の蝶が、たるで空っぜの噚に魂を泚ぐかのように、機胜停止した機䜓の胞郚、動力炉のあたりに、たるで還るべき堎所を芋぀けたかのように、そっず吞い蟌たれおいった――。


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