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Photo bygemini6rabbit

【毎週ショートショートnote】春眠フラペチーノ

    空音

    「春眠フラペチーノを一つ」

     浩樹はそわそわしながら注文した。頷いた店員が笑顔で作り始める。氷とクリーム、桃色の花びら、雨風と鳥の鳴き声がミキサーにかけられた。

    「よい夢を」

     浩樹は弾む足取りで席に着いた。

    「これが念願の! これからは会社に行かなくてもいいし、通帳の残高に怯えることもない!」

     一口飲むと、甘い夢が広がった。雨上がりの空気を震わせる鳥の声と舞う花びら。それらをよそに、心地よい寝床のなかで惰眠を貪る。

     次の瞬間。
    「うわぁ!!」

     浩樹は背中から奈落の底に落ち、幸福な夢は儚い鳥の声と共に露と消えた。

    「おはようございます」
     目を開けると店員の笑顔があった。
    「なぜ⋯⋯」
     浩樹は茫然として呟く。
    「春眠フラペチーノを飲めば、心地よい春の眠りのなかで、いつまでも終わらない幸福な夢を見られるはず。そのために高い金を払い、会社まで辞めたのに」
    「しかし、古き言葉にもございます」

     店員はにこやかに言った。

    「春の夜の夢、と」

    (410字)


    春の夜の 夢ばかりなる手枕に
    かひなく立たむ 名こそ惜しけれ 
                     周防内侍

    『千載和歌集』

    おごれる人も久しからず
    ただ春の夜の夢のごとし

    『平家物語』

    こちらのお題で書かせていただきました。
    (締切に間に合ってないかも)

    画像は、みんなのフォトギャラリーよりお借りしました。

    #毎週ショートショートnote
    #春眠フラペチーノ



     

     
     
     

    空音

     
     
    まったりゆったり、文章創作練習中。noteにはショートショートや掌編小説(お題企画もの)を、TALESには短編小説を投稿しています。和風なものと観劇、映画が好きです。

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